第13話 新宿迷宮特区
―― 迷宮管理局夢ノ宮支部
通称『夢宮ギルド』、簡単に説明すると探索者に関する色々を受け持つ市役所のようなものだ。
あまり迷宮が多くない地域ではそれこそ市役所の中に設置されているが、ここ夢ノ宮市は夢幻塔大迷宮を始めとして大小様々な迷宮がひしめいており、そのせいか市庁舎よりも大きな建物で運営されている。
そんな夢宮ギルドで俺は受付のお姉さんに捕まって応接室へと連行されていた。
「バイトですか?」
「まあ、バイトと言えばバイトだけど、遊佐君に対する指名依頼になるわ」
「指名依頼ってFランクにはなかったと思いますけど?」
「流石は探高生、良く勉強してるわねってことで、これが新しい探索者ライセンスよ。Eランク昇格おめでとう」
「おぉ、ありがとうございます。いや、指名依頼はDからでしょ……ってP特?」
貰ったライセンスにはEランクの記載とともに『P特』の表記があった。
「お、よく気付いたね。Pはアイテムボックス持ちのポーター技能ライセンスで本来はEランクになる時に講習とか色々あって取得するんだけど、今回は特例で先に付けてあるわ。で、特はスキルが特殊な場合の特例処置よ。ちなみに特が付くとランク的には一つ上として特例的に扱うことがあるのってことで指名依頼をどうぞ」
「な、る、ほ、ど?? 良くわからないけど受けなきゃいけないってのはわかりました。で、どんな依頼ですか」
つまりは色々特例処置を利用しての強制依頼なわけだ。長いものには巻かれろな俺としては受諾する以外の道はない。
「あはは、そんなに緊張しなくてもいいわよ。迷宮管理局本部からの招集だから安心して」
長い話になりそうなのか、お茶が出てきた。
「……いや、どこに安心要素が? しかも今、招集って言いませんでした?」
「あー、ほら、この前だけど遊佐君が部位破壊による素材収集に関する報告を上げてくれたじゃない、あれね、どうやら再現できるアイテムボックス持ちがいなかったみたいなの。現物はあるし麻桜さんの報告もあるから出来ることは疑われてないんだけど……」
部位破壊による素材収集とは、この前のボス戦で切り飛ばされた魔銀人形の腕とかを持ち帰ったことだ。
結局消えることなく残っており、頭と胴体があればゴーレムの剥製が作れたかもしれない状態だった。
お陰様で情報提供とゴーレム研究用とで思いっきり懐が温まって余りある結果となっている。
「え、再現出来なかったんですか?」
「そうなのよ。ギルドで確保できたアイテムボックス持ちでは駄目だったみたい。海外には出来そうなアイテムボックス持ちもいそうなんだけど、影響が大きいから秘密裏に調査したいみたい。ちなみに箝口令はまだ継続中だから気をつけてね」
『なるほど、それでマスターの周りに監視が付いていたのですね』
ちょっと前からギルド関連っぽい人物がウロウロしていたが監視ではなく護衛の方だったようだ。ダンマス関連かと思って戦々恐々としていたのでちょっとホッとした。
「……それで、俺は迷宮管理局本部に行って再現すれば良いんですかね」
「そういうことになるわ。というわけで週末に三日間程、新宿迷宮特区のギルド本部に行って欲しいの。ちなみに学校には連絡して公休扱いになるし、特区までの行き帰りはウチから車も出すから安心よ」
「わかりました、って肝心のバイト代は?」
「これね……」
「マジ?!」
「マジです。Cランク相当の基本給と残業手当に出張費、後は、特別手当に技術費とてんこ盛りね。ついでに言えば現地での実績によっては追加があるって書いてあるわ」
「……やります。即やります。なんなら今日からでも」
三日で軽く三桁万円以上が保証される報酬だったことを記載しておきたい。
◆ ◇ ◆
「なあ、メルリン、ここのところの不審者がギルドの護衛だと分かってホッとはしたけど三日も家を開けて大丈夫かな?」
空き巣に侵入されてコアを壊されては元も子もない。
『マスターは意外と心配性ですよね。役職持ちでなければ此処の二階にあがったぐらいで魔力酔いで潰れます。それと三階には守護者達を放ってあります。ついでに転移罠も設置済みです。これだけ備えておけば屋根裏にたどり着くことはないと考えますよ』
「まあ、そうだよな。屋根から入ろうにもダンジョンは破壊できないからセキュリティは万全か」
ダンジョンはゲーム的に言えば破壊不能オブジェクトだ。迷宮再構築中は破壊できるとか、床や壁を壊すと異空間に飲まれるとかの噂はあるが一般的に壊して進む事はできない。
『あ、そうですね。入口を閉じていけば下水道経由のマンホール以外では侵入できないです』
「おっと、思った以上に厳重なセキュリティだったわ。そう言えば公園の方からも誰一人侵入した形跡はないんだよな?」
『ええ、探索者に見つかった形跡はありませんので当分はこのままの体制で問題ないと考えます』
留守中のセキュリティが問題ないとなるとギルド本部でダンマスとバレないかだけの問題だ。
この際、『倉庫』の特異性があるとしても『商人』由来であるから仕方がない。
むしろ【迷宮管理者】の隠れ蓑となるなら活用したほうが良いと言える。
『マスター、お忘れかも知れませんがマスターのメインの役職は【転生者】です。何かイレギュラーなことがあっても私は驚きませんよ』
うん、メルリンさん、そうやってフラグを立てるのはやめようか……。
色々諦めて本部へ行く準備を進めることにした。




