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無能の烙印者〜異世界でなんやかんだ生きています〜  作者: 肯定羽田


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第一話 なんで俺がこんなめに

 普通、みんなは異世界に行ったら“俺TUEEE”だの“ハーレム無双”だの夢みたいな展開を想像するだろう。

 だが――草丈(くさた)惣彩(そうさい)、十八歳。この物語の主人公であるはずの俺は、いま殺されかけている。


 時は一時間前に遡る。


 俺はいつも通り学校の廊下を歩いていた……いや、正しくは“歩かされていた”この前宿題を忘れてきた罰という名目で。

 「なんで俺がこんなめに」

 重たい荷物を抱え、すれ違う生徒たちの冷たい視線がまるで攻撃のように突き刺さる。


(クソ、帰ったら絶対にシコってスッキリしてやる)


 そんなくだらない決意を胸に、倉庫の扉を開けた。


「よし、ここだな」


 荷物を置いて外に出ようとした――その瞬間だった。


 視界が歪む。

 次の瞬間、外の景色は学校の廊下ではなく、巨大な宮殿のような空間へと変わっていた。


 茫然と立ち尽くす俺の前へ、奥から現れた老人が水晶玉を持って歩み寄ってくる。

 パニックになるどころか、俺は子どもみたいに興奮して叫んだ。


(神隠しだ、神隠しだ!)


 周囲の人々がざわざわと何かを囁きあっている。その雰囲気に、俺はようやく理解した――これ、異世界転移だ。


 老人が差し出した水晶玉に手をかざすと、脳内に“言語”が流れ込み、同時に空中へステータスウィンドウが浮かび上がった。


 それを見た老人は、目が飛び出そうなほど驚愕する。


 もしかして……スキルがとんでもなく強い? ステータスが全部カンスト?

 そんな都合のいい妄想をしていると、老人の口から出た言葉はあまりにも無慈悲だった。


「ないです」


「え?」


 追い打ちをかけるように老人が続ける。


「貴方様には何も無いです」


 その瞬間、俺の心も膝も折れた。


 そこへ、鎧をまとった女がすたすたと歩いてきて、冷たい声で言い放つ。


「それならこちらバラの騎士団がが預かる」


 その冷酷無慈悲な表情は僕の肌を強く突き刺した。


「困りますぞアベル団長」


老人が困り果てた表情で抗議をする。


「何も問題ありません御老体」


次の一瞬、俺の身体は壁に叩きつけられていた。


「がはっ……!」


 口の中に鉄の味が広がる。

 女は倒れた俺の肩へ無造作に足を乗せ、見下ろすように言った。周りの騎士たちが慌てだす様子を見てこれが異常事態だと確信した。


「なんでこんなことを」


その言葉に女騎士は耳を貸さず


「やあグズ。今日から私が直々に育て、貴様を最低限使えるようにするから覚悟しておけ」


 意識が遠のく中、俺は反射的に返事をした。


「イエッサー……」


 そして俺の視界は、そこで俺の視界は闇に沈んだ。

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