映画館でのデート
映画を見終わり感動で咽び泣いている彼女に行くよと声をかけて僕は席から立ち上がった。そんな僕に釣られるようにして彼女も動き出した。まだえぐえぐと泣きながらふわふわとした足取りで僕についてくる。
「面白かったな」
「本当にね。やっぱりあの監督最高だよ」
ここまで感動出来るのも一つの才能だななどと考えながら僕は彼女といま見た映画の感想を言い合う。
そんな僕らの様子に周りの人たちは奇異の目を向けるが、今更のことなので気にならない。しかし彼女はそうではないらしく視線に気がついたのか、ごめんね私のせいで、と謝ってきた。
だが僕は首を振ると、また君と映画を見れる方が嬉しいからと答えた。
そしてところで、と話題を変える。
「まだ成仏できそうにない?」
「えっと……ごめんね?」
また気になる映画ができちゃって、と彼女はそう言った。
事故で彼女が亡くなってから半年が過ぎた頃の話である。
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