【第一章】─邂逅─ (4)
「……え?」
今度は少女があんぐりと口を開ける番だった。言っている事がよく分からない。今ここで目的が達成されるのだと、そう思っていた。ようやく解放されるのだと。しかし、現実はそうも上手くは行かないらしい。そもそも、誘拐などしたところでこの少年に何の得があると言うのだろう。
訳が分からないと思いながらも、少年からすれば訳の分からない事を言っているのは自分の方だろうと思い直す。
「そうしたら殺してくれるの?」
「気が向いたらね」
少年は淡い笑みさえ浮かべていた。その足元に動かぬ死体が転がっているなどとは思えない綺麗な笑み。少年が何を考えているのかさっぱり分からず少女は困惑しきって、その口はすっかり閉じる事を忘れ去られていた。
「とりあえずさ、君の名前教えてくれない?」
この人を頼って良いのか、まだ分からない。しかしこの先、他に頼りたいと思える者が現れるとも思えなかった。この綺麗な少年にこそ、終わりを与えられたいと思ったのだ。
少女は少年の足元のものにちらりと視線をやりながらも、おずおずと答える。
「私は、ミアよ」
「そう、よろしくミア。僕はテオ」
そう言いながら、テオは手を差し出した。
「返り血洗いたいし、早速向かおうか。君の入る檻にね」
その言葉に、ずっとはぐらかしていた癖にやっぱりあなたが殺したんじゃない、と思いながらも口には出さず、テオに差し出された手を取った。
檻でもなんでも良い。この少年が殺してくれるのなら。
閉じ込められるのも、虐げられるのも慣れている。そんな瑣末なことなど、どうでもいい。それ以上のものを、この少年ならば与えてくれる気がしていた。
いつの間にか辺りは仄明るくなり始め、深い夜の終わりを告げていた。
短いですが、第一章完結です!
ここから二人の物語が始まって行きますので、
どうか見守っていただければ幸いです。
次回から第二章スタートです。
ようやくお日様の光に当たれる予感です(^^)