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女商人アリアは、置き去りにした外道勇者に復讐を誓う!  作者: 冬華
第3章 女商人は、悪総督を懲らしめる

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第82話 女商人は、デートに誘われる

「ところで、アリアさん。今日はこのあとお時間ありますか?」


「へっ!?」


 いわゆる、デートのお誘い。


 手紙を出し終えて、郵便局から出たところで、クリスから突然誘われて、アリアは思わず声を上げる。


「で……でも、わたしには婚約者が……」


「……?それがどうかしたのですか?」


「どうかしたのですかって……」


(それじゃあ、完全に浮気のお誘いじゃないっ!!)


 いくら相手がイケメンであっても、それはさすがにまずい。ゆえに、アリアは断ろうとした。すると、クリスが突然笑いだす。


「ど……どうしたんですか?」


「いや……やっぱり、中々、気づかれないものだな……と思いましてね。勘が鋭そうなあなたなら、あるいはと思ったのですが」


 そう言って、クリスはアリアの手を取り、自身の股間に押し当てる。その行為に戸惑うアリア。裸の男は以前の開拓村で見慣れているから免疫はあるが、直接アレを触ったのは、勇者とレオナルドくらいしかないのだ。


「ちょ……だめよ!!白昼堂々とこんなこ…と……って、あれ?ない?」


 アリアは、触るだけじゃなく、何度かパンパンと叩きもする。しかし、見当たらない。男なら必ずあるアレが……。


「もしかして……クリスさんって……女?」


 アリアは、信じられないような表情で、恐る恐る尋ねると……


「ふふ……ご明答♪」


 ……とクリスが返してきた。


「えぇーー!!!!」


 アリアは驚きのあまり、大きな声で叫んだ。


「どうして!?なんで女の人なのに男の格好を?おっぱいは?おっぱいはどこに隠したのよ!!」


「あの……一応、極秘のお話なので、声を潜めていただけると……」


「あっ……ごめんなさい」


 そう言いながら、周囲を見渡す。一斉に護衛についていた者たちが顔を逸らした。どうやら、バッチリと聞かれてしまったようだ。


「大丈夫ですよ。あの人たちは、会頭の手の者ですから、精々、自分の主に報告するだけなので問題ありません。彼にならば、別に知られても構いませんし……」


 相変わらずの爽やかな笑顔で、クリスはそう言った。


「さて、わたしの正体を明かしたんですから、そろそろ本題を。実は、あなたに少し協力してもらいたいことがありまして……」


「協力?」


「はい。要するに、とある場所に入りたいのですが、その場所にパートナー役として同行してもらいたいのです」


 さらっと、簡単そうに告げるクリス。何かヤバいことをすると薄々気づく。


「べ…べつに、わたしじゃなくてもいいのでは?」


 ゆえに、断ろうとアリアはそう言ったが……


「いえ。あなたじゃないとダメなんです!!」


 両手を覆うように握られて、真剣な眼差しで見つめられて、アリアは思わず「はい」と答えてしまった。


(……って、ダメじゃない、わたし。この人は女なのよ!!ドキドキして頷いちゃダメじゃない!!)


 アリアは心の中でそう叫んだが、もう遅い。すでに承諾してしまったものをキャンセルすることは、自身の信条に反するため、余程のことではない限りできないのだ。


「それでは、ご理解いただけたようなので、行きましょうか」


 クリスはそのままアリアの手を引き、町へと向かう。指を絡ませて、恋人繋ぎの状態で。


「ちょ…ちょっと……なぜ、恋人繋ぎなの?それに、どこにいくのよ?」


「まず、美容院に行ってから、それからドレスを買って……あっ、そうそう、宝飾店にも寄らないと……」


 戸惑うアリアをよそに、クリスは楽しそうにこれからの予定を独り言のように呟く。予定を聞く限り、どうやらまずは『着せ替え人形』となるようだ。


(絶対、あとで誤解されるわね……)


 なにせ、宿の近くなのに、多くの人の目に今でも止まっているのだ。


 今更、後には引けないが、帰った後でどうレオナルドを宥めるか、頭を悩ませるアリアであった。

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