表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女商人アリアは、置き去りにした外道勇者に復讐を誓う!  作者: 冬華
第2章 女商人は、独裁者を破滅に導く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/495

第67話 母は、忍び寄る魔の手から逃れる

 アリアが死んで初めて迎える年の瀬。エレノアの日常は、それでも少しずつ元に戻りつつあった。


 もちろん、悲しみが癒えたわけではない。家に帰れば、アリアの痕跡に目を向けてしまい、泣いてしまう日もある。


 だが、だからといって、何もせずただ泣いて日々を送るような贅沢は、ただの平民に過ぎない彼女には許されない。日々の糧を得るためには悲しくても働かなければいけないのだ。


 ゆえに、こうして、毎日決まった時間に働きに出て、決まった時間に家に帰る、そんな生活を淡々と過ごしていた。そして、今日もいつもと変わらない1日が終わるはずだった。


「ん?」


 家のある第3市街区の裏路地に入ろうとしたとき、不意に誰かにつけられているような気がした。振り向かずそのまま進み、突き当りの窓ガラスを見ると、やはり見知らぬ男が自分の歩幅に合わせるようについてきている。


(……まずい)


 瞬時に自分の置かれている状況を判断して、焦燥感が高まる。ここから先に進めば進むほど表通りから遠くなり、人気もなくなっていく。無論、そこまで行かなくても途中に家はあるのだが、だからといって家に入ればそれこそ逃げ場を失い、おしまいになるだろう。


(どうする?一か八か走るか?)


 そのようなことも頭に浮かんだが、目の前にあからさまに怪しい男が立っているのが目につき、どうやら無駄であることを悟った。全盛期ならいざ知らず、老いた今となっては、逃げきれるとは到底思えなかった。


(……どうやら、フランツは本当に危ないらしいわね)


 少しずつ近づいてくる死を前に、エレノアは思った。


 かつて愛したあの男が健在であるのなら、外国に逃れたわたしたちに危害を加えるようなことは決して許さない。エレノアはそう確信している。


 それなのに、暗殺者が遠く離れたこのルクレティアまで来ているのだ。国王の身に何かが起ころうとしているのだろう。


(……そうなると、アリアは王室の誰かに頼まれて、あの勇者に殺されたのね)


 あのとき、妙に芝居臭いと思っていたが、その直感が正しかったことを今更ながらエレノアは悟った。この手で殺してやりたいと思ったが、どうやらそれは叶わないらしい。


 目の前の男がおもむろに、こちらに向かって歩き出したからだ。


(……来る!!)


 エレノアは身構えた。……が、どういうわけか、男は彼女の横を通り過ぎて真逆の方向へと歩いていく。


(えっ……)


「なんだ、おまえは!!……ぐわっ!!」


「ま……まて!!ぎゃああああ!!!!」


 拍子抜けして思わず足を止めたエレノアの背後で、二つの悲鳴が上がった。振り返ってみると、尾行していた二人の男が血を流しながら倒れていた。


「……おや?悲鳴を上げないのか?」


 飛び散った血が顔についたのか、それをハンカチで拭いながら、男はエレノアに言葉をかける。


「あいにく。そういうのは昔に慣れていたもんでね。それに、今更かわい子振る歳でもないし……」


 そう言って笑みを浮かべるも、エレノアは警戒を解くことはなかった。敵意はないようだが、だからといって油断をしていいわけではない。


「それで、あんたは何者だい?」


 当たり前の質問をエレノアは投げかけた。すると、男は両手を上げて敵意がないことを示したうえで名を名乗った。


「俺の名は、ユーグ・アンベール。ハルシオン国王フランツ2世の要請で君を保護しに来た」


 ユーグ・アンベール——。それは、世界でただ一人しかいない大賢者の名である。


 そんな大物が自分を守ってくれると言っていることに、かつての恋人の本気を知り、久しぶりに心を温かくするエレノアであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ