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一般人  作者: かねぴ
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第2章:優しい使徒(2-3)

2-3 師匠


21日、品川駅に向かうと、時計台の下でマホがこちらに気づいて手を振っている。


「時間ぴったりですね!いきましょうか♪」

「卓さんはどちらにいらっしゃるんですか?」


「今は自宅で仕事中で、そちらに伺う予定になってます。…あ、そうだ。せっかくなので卓さんに手土産を買っていきましょう。卓さんにお土産何がいいか聞くと、いつもミネラルウォーター買ってきてって言うんです。あんなにすごい方なのに、手土産がお水でいいなんて、安上りすぎてなんだか忍びない気持ちになっちゃいますよね(笑)」


「そうなんですか?なんだかますます魅力的ですね。」


そんなことを話しながら歩みを進めていると、マホから「時間が30分しかないから、何を話すのか、聞くのか決めておいた方が良いです。もし卓さんに気に入られたら悠介さんもお弟子さんになれるかも...。」と助言を貰った。


「なんと!...なるほど。そうですよね!」


(う~ん。話すことか...何も考えていなかったな...。とりあえず自己紹介して、どのように経営者になったのかとか、心構えとか聞いてみようかな...。それにしても、俺みたいな凡人のこと弟子なんかにしてくれるのかなぁ。)


無事に道中でお水を購入し、マホの案内の元、10分ほど歩みを進めると、頑強かつ優美な根元に支えられた、そびえ立つタワーマンションが眼前に現れた。


人生で初めてタワーマンションに足を踏み入れることとなる悠介は、鼓動の高鳴りを抑えられずにいた。エントランスに付き腰を下ろすと、マホは卓に電話をかけるためにどこかへ消え、5分ほど待つと戻ってきた。


「もうOKみたいです!鍵開いてるのでそのまま入ってきてとのことでした♪」


(...!!...いよいよか...。)


念のために身なりを整え、悠介がエレベータに乗り込むと、マホは手慣れたように29Fのボタンを押した。


(29階かぁ...当たり前だけど、レジデンスで29階なんて高層に訪れる日が来るなんて思いもしなかったなぁ。)


エレベーターの中で、悠介の心に小さな違和感が芽生えたが、それはすぐに消えた。

(大丈夫だ、これはあの時とは違う。)


29階に到着すると、落ち着いたデザインの広々とした廊下が現れ、しばらく進むと「2905室」の前でマホが歩みを止めた。


「こんばんは~!!」


マホがドアを開け挨拶する。


「どうぞー。」


目の前には足元の薄明りによってオシャレに演出された幅広の廊下があり、その奥から卓と思しき男性の返事が返ってきた。

悠介の高揚感はピークに達していた。


廊下の奥の部屋へと歩みを進めると、そこには机上のノートPCに向かって黙々と作業をしている卓が座っていた。

歳の頃は30代前半、といったところだろうか。


黒髪短髪、小柄で塩顔系の好男子といった風体をしており、本当に無地の白Tを着ている。


「ちょっと待ってくださいね。もう終わりますから。」


悠介が頷き、待機している中ふと視線を移すと、マホが窓際に立って悠介を手招いている。


「悠介さん、こっちこっち。」


窓際に立つと、眼下には筆舌に尽くしがたい壮大な夜景が広がっていた。


「う、わ...すげぇ。」


悠介は思わず心の声が漏れ出ていた。


「こんなところ住めるようになりたいですよね。私、あと1年以内にタワマンに引っ越すって決めてるんです。」


そんな会話をしていると、後ろからノートPCを閉じる音が聞こえた。卓の作業がひと段落ついたようだ。


「お待たせしました。悠介さん。バニーから話は伺ってます。」


(ば、ばにー...?...”某テーマパーク”のバニー?...)


するとマホが補足するように合いの手を入れた。


「あ、言ってなかったですね(笑)私たちは同じ志をもつ仲間同士では、心の壁を取り去るためにお互いをあだ名で呼び合ってるんです。私は小さいころバニーに憧れていたので、それで!」

「そうだったんですね。」


「普段は悠介さんのこと何て呼んでるんですか?」

「そういえば決めてなかったですね...。ローマ!ローマはどうですか?」


「ローマ?(笑)ローマってあのスポーツブランドのローマ?」

「あ、はいローマで働いてまして...。」

「そういうことでしたか。まあとりあえず一旦お掛けください。」


「あ、そういえば卓さんに、ローマと私からのお土産です。」

そういってマホは卓にミネラルウォーターを手渡した。

「おお、ありがとう。この水が好きなんだよねえ。」


卓はそう言いながら早速ひと口、水を口に含んだ。


悠介はこの優美な住居の中で、白T短パンで水を飲むという対比がとても魅力に感じ、卓の一挙手一投足を眺めていた。


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