第4章:盲信(4-2)
4-2 起動
3月下旬になると、ようやく資金も溜まり始め、後20万円というところまで詰めていた。
悠介はイベント企画と並行して、アルバイトの掛け持ちまでをも行い始めていたため、連日の無理がたたったのか体調を崩していた。
「大丈夫すか?宮島さん、なんか顔色悪いよ。」
「それより龍ちゃんさ、将来の目標決まった?このままの人生で不満ないの?」
ここで、ずっと悠介を心配していた龍成が切り込んだ。
「宮島さん。あんたやっぱり最近おかしいよ。口を開けば”ビジネスオーナー”とか。”タワマン”とか、”人脈”とか言って。どうしちゃったんすか。誰が宮島さんをこんな風にしたんだよ。俺許せねぇよそいつのこと!」
「どうしたんだよ龍ちゃんいつになく怒っちゃって。俺は今までの俺と一緒だよ。ただ将来に向けて勉強し始めただけだから。心配してくれてありがとな。」
「ハァ...もういいっす。俺、今日は先に帰りますね。宮島さん、いい加減冷静になってくださいよ。マジで後悔するようなこと、しないでくださいね。」
「ありがとな龍ちゃん。あ!そう言えばこれ、忘れてた。お土産のボールペン。」
「なんすかこれ、キモいデザインだな。」
「キモいってなんだよ!(笑)トカゲはなあ、なんかドラゴンの末裔っぽいし、龍ちゃんの名前にも”龍”って入ってる。いつか本物の龍になれよ。」
「なんだよそれ、任侠系のゲームかよ。まぁ貰っといてあげますよ。じゃ、お先でーす。」
(宮島さん、マジでおかしいよな...。なんか目がパキッてたし、何かに巻き込まれてるんじゃないのか?)
連休が明け、龍成の不安は的中する。
次に龍成が出勤したときには、もうローマに悠介の姿はなかったのである。
一言の別れも告げずに──。