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4 軍議の場に幼女なの~!② 

 イザベラとミレーヌの議論は続いた。

 時が経つにつれ、まるで、イザベラが悲観論者、ミレーヌが楽観論者のような体裁になった。

 いつもの逆だ。


 イザベラは主張する。



「はい、ザルツ帝国は度々、我国との約束を忘れます。ですから、背後から来られないように、しっかりと話会いをするべきですわ。動員令には反対ですわ」


 一方、ミレーヌも反論する。


「まあ、イザベラ様、条約を結んでいるから攻めて来ませんわ。もし、攻めて来たら、条約破りで大陸中から非難されます!」


 実はメアリーはイザベラと会話し、

 イザベラは問題を把握する能力はあるが解決能力はないとの評判だったが、間違いだったと気がついた。




 ☆メアリー回想


 わたしゃ、転生前、趣味講座でミリタリー・サバイバル講座の看板奥様として受講した。


 変わった先生だった。


『星苅さん。この作戦図を見てどちらが優勢か分かりますか?』

『なんなの~!困るわ~』


 部隊符号と言うものが描かれている地図を見せられた。長方形に何やらとげがついていたりする。これが部隊かしら。

 赤と青で描かれ、長方形同士が戦争しているように見える。


 さっぱり分からないが・・・


『青が優勢だと思います』

『よく分かったね。青が自衛隊の戦闘団、赤が旧ソ連型の一個大隊、昔は師団だったが、今はこの単位で戦うのが主流だ。状況に応じ細かく動くことが出来る。それに・・・』



 日露戦争時のロシア帝国の指揮官クロパトキンは、軍人ではない友人に作戦図を見せて助言を求めたという。

 作戦は素人でも分かるものでなくてはならない。


 それを日本地図に置き換えたら、おのずと防衛戦略が分かる。


『日本は海外からの輸入に頼っている。つまり、話会いで平和を求めるのではなく、話会いをしなければならない国なのだ。その背景には防衛力が必要だ。もし、攻めて来たら空、海上で撃破し、上陸したら迎撃出来る実力が必要だ。

 ドイツも同じだ。二つの国に挟まれている・・』



 ・・・・・・・





 ワエキラエ王国はドイツと同じだ。ビスマルクはサーカス外交という名の綱渡りをしてフランス、ロシアとの二方面作戦を回避した。


 そして、二方面作戦になった第一次、二次世界大戦は負けてしまった。




 イザベラお義姉様には仮想敵国を、約束を守らない困った友人として捉えるように誘導したら意外と上手く行った。

 国際、国内政治を友人関係に置き換えるのだ。


 それに、

 古来より条約を信じるのは危険だ。

 何故なら、守れなかったら、罰する機関は実質ないのだ。

 国際政治は口で言いつくろっているが力こそ正義なのだ。


 例えば、ブタペスト覚書。

 旧ソ連から独立を果たしたウクライナ内には核兵器があった。


 それを放棄したら、米英露が安全を保障するとなった。

 しかし、安全を保障するロシアに攻められた。


 恐らく2014年のクリミア半島併合でも米英が動かなかったから大丈夫だとあのクマに乗っているコラ画像をよく撮られるおっさんは判断したのだろう。


 どんなジョークだよ。


 別に核兵器賛成ではないが・・・・結果として核兵器を持っていないから攻められたとの国際世論が起きた。



 ミレーヌたちは秀才にありがちなこうなっているからこうなっているになる傾向が強い。

 法律の教授が自嘲していたな。

 法律家ほど馬鹿な人種はいない。


 平和を愛する諸君主の公平と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意してはいけないのだ。




「議論はそこまでじゃ。イザベラ、どうしてそう思う」


 まあ、良い。陛下の諮問だ。




「はい、私のお友達の中にネックレスを貸しても返してくれない方がおります。メアリーちゃん・・いえ、メアリーから『それを国際政治に置き換えるなの~』と言われましたわ」


「イザベラは原石じゃな」


「そんな。陛下!10倍の戦力を集めるべきです」

「ミレーヌよ。もう良い。ジェース総騎士団長、二人の令嬢、どちらの意見を採用する?」


「陛下、イザベラ様のご意見が宜しいかと、確かに10倍の戦力があればすぐに紛争を鎮火出来るでしょう。しかし、背後の憂いまで心配されたイザベラ様の方が頼もしく思えます」



「そうじゃな。メアリーよ。動員令をどう思う?」



 これも戦史から学んだ。

 動員令、国家は生き物でもある。一度、動員令を出したら、国家は狂戦士状態になる。


「メアリーは~動員令反対なの~。動員令は一度出したら終らせ方が難しいの。ガイア王国も動員令を出したら全面戦争になるの~。

 そもそも動員令の趣旨は対魔族戦争なの~」


 そうだ。第一次世界大戦がいつ始まったかの議論に、各国が動員令を出した時とあった。








 その時、速報が来た。


 この国の急使は陛下に直接、いかなる時も会話を遮って直接話す事を許される。



「速報でございます。ザルツ帝国との国境に兵が集まっています」



 ミレーヌは驚愕する。


「何ですって、友好条約を結んでいますわ!」


 しかし、もはや、ミレーヌとその側近以外は、驚かなかった。



「ほお。丁度良い。イザベラは話会いが大事だと言うたが、ザルツ帝国のドネツク大使と話会いをして本音を引き出せ」


「は、はい!」


「ドネツク卿は偏屈じゃぞ」

「はい」



 ・・・・・・



 その日のうちに会談が行われた。


さすがに、イザベラ様では手に余る。陛下はもしかして、メアリーに期待したか?

ここで、お義姉様に提案した。


「沈黙も会話なの~、向こうから話しかけるのを待つの~」

「でも、メアリーちゃん。失礼では?」


「大丈夫なの~、向こうはお義姉様とお話したいの~。だけど、お義姉様からネックレスをあげるといわせたいの友人の気持なの~」

「分かったわ。ネックレスはお父様から買って頂いた大事な物ですわ。差し上げてはいけませんわね」





 呼び出された大使は、令嬢と幼女の組み合わせに不機嫌を隠さない。



「フン、貴国は我国を馬鹿にされておられるのか?何も話さないぞ」


「はい、それで宜しいですわ」

「はいなの~」


 と言ったが、ドネツク卿は立ち去らなかった。交渉を切るわけにはいかない。


 一方、イザベラ、メアリーは何も話さない。


 ペロペロペロ~~


 メアリーに至っては棒付きペロペロキャンディーを舐め始めた。


「この!何か話さないか!」

「話す事はないと言うから、こちらも話しませんわ・・・」

「フン!」


 結局三時間後に会談は終わった。



「フン!全くふざけている。この事は皇帝陛下に報告させて頂きますぞ!」


「なの~!」

「・・・・・」


 メアリーはニッコリ微笑んだ。




 ☆☆☆ザルツ帝国皇宮



 報告を受けた皇帝は疑った。


「何も話さなかったと?」

「御意、報告書ではそうなっております」

「他に変わった事は?」

「はい、カゲから幼女が笑っていたと・・」


 ・・・幼女、あの女狐が期待している幼女か。

 取り込まれたか・・・譲歩を引き出せなかった言い訳か。



 今回の国境付近への兵力増強は様子見であった。

 ワエキラエ王国が総崩れになれば攻め込む

 そうでなければ、係争地の譲歩を引き出す。


「ドネツクの大使の任を解け。兵は引きあげさせろ・・・」

「御意!」




 かくして、万全の体制でガイア王国の迎撃に専念出来る事になった。




 







最後までお読み頂き有難うございました。

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