3 軍議の場に幼女なの~!①
☆☆☆貴族学園散歩道屋台キャンディーストア
最近、貴族学園の散歩道に屋台が出来た。キャンディーを主に売っている。
ベッキーと一緒に赴く。この店、融通が利くから大好きだ。
「おっちゃん。例の物あるかなの~?」
「いいの入ったぜ・・・」
チャリン!とお金を渡せば。おっちゃんは
茶色い包装紙に包まれた物をこっそり渡してくれた。
「フフフフフ、嬉しいの」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
最近、頭を使う糖分が足りねえ。
物は棒付きペロペロキャンディーだ。しかも、王宮のパテェシエの一品だ。
ここでペロペロしたいが。
「メアリー様、夕食が近いのです」
「分かったの~」
ベッキー、心なしか綺麗になっている気がする。
「おっちゃん。山羊のミルクを二つ下さいなの~」
「はいよ」
「ベッキーも飲むの」
「はい、頂くのです」
このキャンディーストアは最近出来た。
ワザワザ私のため?学園執行部が気を使って?そんな訳がない。
多分。
「ベッキー、カゲ・・・・」
「はい?」
カゲと言う単語を使うと店主はやや厳しい目をする。おっちゃん。歩くとき、足を若干引きずる。
負傷兵でカゲとして雇われたな。国もいろいろ考えているのだ。
「カゲ絵してほしいの~」
「はいなのです。お休みの前にやるのです」
「ワーイなの~」
この子、12歳か。お姉ちゃんだな。
弟妹を喜ばすために編み出したとな。
感心な子だよっと。
やっぱり、キャンディーストアのおっさんはカゲだった。
この国はカゲが多い。しかし、旧東ドイツのように相互に監視し合うのではなく。
定点観測のようにあちこちに配置されているな。
尾行はしないのだ。バレないように尾行するにはかなり多くの人が必要になるって聞いたな。
尾行はバレやすいのだ。ほら、さっきからつけているミレーヌの手下が現れた。
「メアリー先生!」
あれは騎士科の学生か。最近、騎士科の学生にモテモテ幼女だ。
「先生、騎士科のザック・ヘルナンと申します。高名なメアリー様にご教授をお願いします」
「何なの~」
「戦いで必ず勝つ方法です」
私は趣味講座で学んだ。
☆☆☆回想
陳先生の教室から帰るとき。同じビルの一室に、『ミリタリー』『サバイバル』とか派手な看板の教室があった。
「やめます!こんなの少しもミリタリーではない!」
「おい、君!」
「キャア」
飛び出した生徒とぶつかりそうになった。
「奥様、大丈夫ですか?・・・もしかして、生徒希望者?是非、月謝半額にしますから!」
「え~、でも、ミリタリーなんて・・・」
「奥様!この通り!看板奥様になって下さい!」
「まあ、看板?困るわ~」
教室はガラスで外が見えるようになっている。
「なら、お試しで」
「有難うございます」
学生時代、勉強は好きだった。
ミリタリーのミも知らなかったが・・・国際条約、戦争の歴史から、もし、市民が戦争に巻き込まれたらの視点から語られていた。
「はあ、定年退官してから先生になりたくて始めたが、何かズレがある・・分かりにくいかな」
「う~ん。孫子とか面白いけど、ミリタリーだったら、最近の子はかっこよい兵器の話をしなきゃ、お隣のお子さん。何か、鉄砲のオモチャを買ったとか言っていたわ」
「ハハ、それで良い。平和な証拠かもな」
退官とか言っていたな。
・・・・・・・・・・
だから、こう答える。誰でも分かる話だ。
「敵の十倍の勢力で取り囲み包囲殲滅すれば簡単なの~!」
「え、それだけ・・いえ、有難うございます」
「騎士学生様、いつも訓練お疲れ様なの~、ミルク一緒に飲むの~おごるの~」
「はい・・・」
「ベッキーも隣に来るの~、両手に華なの~」
「は、はいなのです。騎士学生様、お疲れ様なのです」
「ザック様は毎日どのような訓練をされているの~」
「はい、お話出来ることなら・・・」
☆☆☆グレーヌ伯爵家
メアリーに接触したザックはミレーヌのスパイであった。
ミレーヌに報告する。
「・・・メアリーから聞いた軍事知識はたったそれだけ?」
「はい、『敵の十倍の勢力で取り囲み包囲殲滅すれば簡単なの~!』です。複数人で聞いたから確かです」
「・・・メアリーはもしかして軍事情報に疎いのかしら」
「そうとも言い切れません。利に合っています」
「それで、メアリーとはどんな会話をしたの?」
「はい、騎士科学生の訓練の内容とか、学園の猫の出没場所とか・・」
「そう・・・・先生方、最大限に軍を動かす方法を調べて下さいませ」
「「「「畏まりました」」」」
・・・・・・・
それから、私、ミレーヌは王宮に呼ばれたわ。
私は書類を持ち。10人の家庭教師と共に王宮作戦室に赴く。
作戦室には、地図がおかれている大きな机があるわ。陛下が上座、殿下が隣、机の周りに大勢の騎士団長クラスがおられるわ。
この国は東にガイア王国、西にザルツ帝国に挟まれている。南は海岸線だわ。
ザルツとは友好条約を結んでいるわ。
北はエルフの国がある。と言っても1000人程度の集落だわ。更に北に魔族が住んでいる。
実質、ガイア王国の事を考えれば良いのだわ。
あら、イザベラとメアリーも来た。たった二人だけだわ。
女王陛下が婚約者選定の儀の開始を宣言されたわ。今は集中しなければ。
「ふむ。ご苦労じゃ。王妃たるもの。軍事も知らなければならないのじゃ。
今回の侵攻は、ソシリアを処刑した事への報復じゃ。リードリ王子が兵を挙げたのじゃ。ガイア王国の大使は沈黙をしておる。
そちたちの意見を聞きたい。ゼムリよ、今回の課題を話すのじゃ」
「御意、今回のガイア王国の侵攻は3万規模、対する辺境伯は常備軍1万、今、近隣地域の諸候に命令を下し。2万規模の援軍を向けております。
王都からも援軍を出しますが、議題は規模です。どの程度の援軍を出すかです
今回は身分の序列なし。議論も可でございます」
「はい、このミレーヌ、小才ですが、意見を表明させて頂きます」
「ではミレーヌ殿から」
「およそ、今の規模は紛争でございますが、最大限の兵力を差し向け早急に鎮火するべきでございます。動員令を発し。平民を徴兵し、東の国境に30万人規模の軍を送り。
10倍の兵力でガイア王国軍を取り囲み包囲殲滅するのが最も犠牲が少ないと愚考します」
どうだ。メアリーの知識を先に言ったわ。メアリーの様子を伺う。
「なの?なの?」
慌てているわね。クス、いい気味だわ。これは勝ったわ。
「あの、グリケル公爵家イザベラでございます・・・援軍を差し向けながらも話し合いをするべきでございます。援軍の規模は分かりかねます。専門家の総騎士団長に委ねますわ・・・」
まあ、相変わらず甘い考えだわ。勝ったわ。
「まあ、イザベラ様、もう既に戦っている相手に話し合いなど・・・殴ってから話会いという名の降伏勧告をするべきでございます」
騎士団長達は勇ましさを好む。
イザベラはオロオロし出しましたわ。
「あのミレーヌ様、私、兄上と喧嘩をする事がございます。その時は、兄上と時間をおいてから話会いをしますわ。
私が言っているのは、まず西に面しているザルツ帝国と話会いをするべきでございます」
「あら、まあ、ザルツ帝国とは友好条約を結んでいる事はご存じないのかしら」
「知っておりますわ。でも、私の友人でもうっかり約束を忘れてしまう方がおります」
「まあ、イザベラ様のご友人と国家の大事を重ねるなんて・・・さすがグリケル公爵家ですわ。国家規模と言いたいのかしら」
この日、ミレーヌは三度『勝った』と思った瞬間、メアリーも『勝った』と思った。
ニヤリと不敵に微笑むメアリーをミレーヌは見逃した。
最後までお読み頂き有難うございました。