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3 婚約者選定の儀のメアリー

 ☆☆☆ワエキラエ王国王宮



 王宮では婚約者の選定の儀が行われた。

 王国の婚約者のいない令嬢の素行、成績調査、テストをして残ったのは、


 メアリーの義姉ミレーヌと公爵令嬢イザベラである。


 玉座には女王ミリンダが座る。右隣に席が二つある。王太子グフタフが女王側に座り、その隣は空席だ。ソシリアが今まで座っていた席である。


 その席をミレーヌは見つめる。

 イザベラはどこか落ち着かないようだ。


 また、王宮には学生たちが集まられている。未来の王国の官吏を育てる一環である。

 その中には平民学校の成績優秀者も含まれていた。



 実はメアリーは、興奮した家庭教師の報告により。女王陛下の目にとまったが、女王の認識は少し勉強が出来る子程度である。


 女王の人材を渇望する欲望は際限がない。たとえコジキでも才があれば取り立てるであろうと噂される。

 家庭教師ギルドに才のある子供の報告を義務づけた。メアリーは情報網に捕まったのだが、膨大な行政文書の中ではメアリーは目立たない。




 宰相ゼムリは宣言する。



「これより、婚約者選定の儀を行う。

 議題は、『民の識字率を向上させる政策』である。

 我国は、民の識字率向上のために学問所を設けているが王都ですら20パーセントを超えない

 まずは序列順、グリケル公爵令嬢イザベラ嬢より発表を行う」


「はい!イザベラでございます」



 黒髪を肩まで下ろしている令嬢が中央に立つ。

 目は紫。若干、顔が細く目がつり上がっている。

 厳しい印象を与える。



「まず。問題は、長い間、民は文字が無くても暮らせるようになっております。王都、自分の住んでいる町内を出た事もない平民もおり。手紙を出す習慣もございません。

 貴族、商人が学ぶ傾向が強いですわ。文字を10人に一人知っていれば、知人に頼めば解決しますわ。文字を学ぶ必要性を感じないのです」



 ・・・ほお、問題の根幹は分かっておるのか。

 だが。



「これを解決するには、文字が読めることの重要性を訴えます。劇、吟遊詩人で啓蒙をいたしますわ。私は劇の脚本と詩を作らせましたわ。人の本質は善でございます。

 民に訴えれば分かって頂けますわ」



 ・・・しかし、解決法は0点じゃのう。



 パチ・・・パチ・・・・パチ


 まばらな拍手が起きた。あまりに脳天気な政策、迂遠だと皆は思った。



「次、グレーヌ伯爵家令嬢ミレーヌ嬢」



「はい、人の本質は悪です。民は愚かで怠け者です。刑罰で縛ってやっと動くのです。

 私は学問所に行くことを強制します。そのために税金を設けますわ・・・」



 ・・・ほお、これは、実行力があるが、民を抑圧すると更に反動が大きくなるのう。




「ですから、イザベラ様の策はただの理想論ですわ。私は法令案を作成しました。女王陛下にそのまま裁可をお願いできるレベルと自負をしております」



 フム、法令は自分で作ったか、作らせたか分からないが行政能力はあるか。

 頭は良いか。


 名前を出されたイザベラはすかさず反論をした。



「ミレーヌ様、お待ち下さい。人の本質は善でございます。私の周りには善人ばかりですわ」


「まあ、イザベラ様の公爵家は・・・狭いから使用人も家族と同じように接するとか聞きましたわ。甘やかしすぎですわ」


「そんなこと・・」



 ・・・議論が始まったか。妾は宰相に目配せをする。



「二人とも議論をやめなさい!」



 ・・・場をおさめるか。他に意見を求めるのじゃ。



「ふう。婚約者選定の儀はこれだけではないぞえ。ここで紛糾してどうするかのう。

 そうじゃ、周りの学生に意見を聞こう。何か、良い解決策はあるかのう」



 皆、押し黙る。似たり寄ったりの方策しか思い浮かばないからだ。



「はい!はいなの~!」

「ヒィ、お嬢様!」


 1番奥にいたメアリーが声を挙げた。



「グレーヌ伯爵家のフランツの庶子のメアリーなの」


 シーン


 メアリーはわざと庶子と言った。まるで伯爵が女にだらしない印象を与える。実際そうだ。


「メアリーめ・・・」

 伯爵は言葉を飲み込んだ。



「通してなの~」


 メアリーとベッキーは前へ出る。


 メアリーは

 ヒラヒラのドレスに大きな宝石が目立つネックレスに装飾品。

 一言で言えば、趣味が悪い。

 金髪、薄い青の瞳、幼女であるが将来美人になると分かる顔立ちだ。



 ・・・まるで、物欲の固まりだのう。とミリンダは判断した。


「ゼムリよ。そのご令嬢を前へ」


「メアリー!引っ込んでいなさい」

「これ、ミレーヌよ。妾が意見のある者はいるかと聞いたのじゃ」



 ・・・メアリー、そう言えば、家庭教師の情報網に引っかかった令嬢じゃったかのう。

 幼女で高等数学を出来る。いずれ諮問しようと思ったが良い機会じゃ。


「陛下!」

「母上」


 宰相と王太子が思わず声を発した。基本、この女は玉座をおりないで話す。

 これは気まぐれだったかもしれない。


 女王は玉座をおり。メアリーの手を取った。


 メアリーの目線まで体を縮めて話した。


「これは可愛いご令嬢だのう。思った事を言うが良い」




「庶子メアリーなの。識字率をあげるのは簡単なの~!お金を配れば良いの~」


 ドッと笑い声があがった。


「「「「アハハハハハハハハ!」」」

「いくらかかると思っているのだよ!」

「まあ、グレーヌ伯爵家の我が儘義妹よ」




「黙れ!笑う奴は腹案をださんかのう」


 女王の一喝で皆は黙り会場はシーンと静まった。


 メアリーは曇りなき眼でゲスな説明をした。



「識字率をあげる目的は楽をするためなの~!庶民まで行政掲示板を見るようになれば政治が楽になるの~!問題は文字を学ぶ真面目な人はもう学んだの。怠惰な民を扇動するの」


「しかし、メアリー嬢、王都だけでも金を配り学問所に行かせたら、国家財政は破綻じゃ。すでに学問所に行った者に対しては不公平になるのう。

 子供らしいまっすぐな意見じゃったのう。気をつけて帰るのじゃ」



「金貨100枚で大丈夫なの~、とっかかりは金貨100枚で火がつくの~!民は愚かで愚鈍だけども良心はあるの~。愚かな方を利用するの~」



 ミリンダの目が鋭くなった。


「そなた、何故、やりたい」


「欲しーの!欲しー物があるの~」


「目に見えて分かるぐらいの成果が現れたら、妾にできる事は叶えてしんぜようぞ」


「はいなの~」


「じゃあ、任せるかのう。今日より王宮に住むのじゃ。ゼムリ、妾のドレスの予算から金貨100枚をだすのじゃ。幼女が仕事を出来ように手配するのじゃ」


「御意にございます」

「ベッキーも必要なの~」

「良いぞ、そのメイドも王宮に滞在するが良い」


「ヒィ、かしこくもありがたく思えるのです!」




「皆の者、今日はこれにて解散じゃ」




 ・・・・・・・・



 妾は仕事を一端任せたら口出しをしない。それが暴虐を続ける秘訣じゃ。

 暴虐には信頼出来る部下が必要じゃ。


 経緯は確認する。助言を求めたら助けてやる。


 あの幼女が金を持ち逃げしたら処刑で良かろう。

 失敗したら、まあ、良い。何もやらない者よりは100倍良い。



 あれから10日経過した。

 そろそろ報告が来る頃じゃ。



「女王陛下!大変でございます」


「ほお、あの幼女失敗したのかえ。あめ玉でも渡して慰めるが良かろう」


「そ、それが、民が学問所に殺到し、初級者用の本が売れに売れております」


「ほお、そうか、叱ることはせずに、反省文を書かせるのじゃ。次に生かせる者は大好きじゃ・・・【なんじゃと!】」




 ☆☆☆王都内



「おい、俺も文字を教えろ!」

「計算を教えてーーーー!」


 視察に出たら、本当じゃった。書店、学問所に殺到しておる。

 一体何をしたのか?



「兵を配置しておさめるのじゃ」

「「「御意」」」


 メアリーはまさかギフト持ちかのう。

 奇貨居くべしじゃ。


 メアリーを呼び出した。

 イザベラとミレーヌとその家族も一緒じゃ。



「浅学な妾にご教授願いたい」


 頭を垂れ賢者に相対するように接した。


「お金を配ったの~」


「ほお、どのようにしたのじゃ?」


 メアリーは語り出した。やり方はゲスの極みだった。




最後までお読み頂き有難うございました。

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