魔神に会いに行きましたのよ
ドンドコ♩ドンドコ♩ドンドコ♩ドン♩ドン♩
「「「「ベントレー!ベントレー!」」」
「さあ、大王様も手をつないで下さい!魔神様を呼ぶ儀式です」
「・・・分かったの」
今、ダークエルフの神官たちが太鼓を叩き。魔神を呼ぶ儀式をしている。皆で手をつなぎ輪になり。天を見上げて変な呪文を唱えている。
ここは魔族領の最北端に位置する魔神山の頂上だ。
右隣はクルト君だ。
手を差し出すと、顔を赤らめる。
「はい、メアリー様・・痛くないですか?」
「大丈夫なの」
紳士だ。何かモジモジしている。
『魔』、あまり良い言い方ではない。なのに何故、魔神と崇め。魔神に認められた王を魔王と呼び。魔王に率いられた戦士達を魔王軍と呼称するのだろうか?
あれか、黒人の蔑称、〇ガーは言ってはいけないが、仲間内ならOKみたいな自虐ネタか?
「魔神様が降臨しました!」
皆、空を凝視する。空にいたのか・・まさか・・・
私は地に力を感じたから地母神を想像したが、
空から半透明の・・何だ。あれは、タコ?かなり古いSFの火星人みたいだ。クラゲのようでいて、触手が沢山ある。10メートルくらいか。
何か、嫌だな。見た目が気持悪い。ウネウネしている。
そうか、見た目がどう言いつくろっても魔だから魔神なのか・・・切ないな。
神官達は皆、平伏している。
私とクルト君は立ったままジィと見上げた。
魔神はクネクネしながら話しかけた。いや、思念が頭の中に届いた。この体で発音が出来るとは思えない。
「ハーイ、君は聖女なのに、魔王になりたいの?ウェルカム!」
軽いノリだな。思念が英語に変換されている。
しかし、こいつの正体は何だろう。空飛ぶスパゲティーモンスターか?
あれだ。アメリカで進化論に反対する人達がいる。神が人を作ったという聖書と矛盾するからだ。
それで、インテリジェント・デザイン理論なる物を隠れ蓑にした。進化論と同じ時間公教育で教えろとの要求が通ってしまった。インテリジェント・デザイン説、進化に神的な何かが関わったと言う説にもならない状況証拠だ。
それに怒ったネット民はつじつまが合えば良いんだなと、空飛ぶスパモン教を作ったのだ。
有名な話では、スパモン様は赤道上空にいて、触手で生物の頭を抑えている。
だから、赤道に近くなるほど、生物の体は小さくなり。触手が届かない北極方向では、生物の体は大きくなる。
茶化した話だが、聖書原理主義者へのアンチテーゼになっている。
「ノー!僕は石に乗って宇宙から来たんだよ。この地の生物の因子と混じって共存をチョイスしたんだよ。ピースね」
もしかして、改めて、頂上から地上を見るとクレーターがある。
隕石に付着したウィルスか・・・
だから、北なのに肌が褐色なのか?どこか外来をイメージする英語モドキに思念が変換されたのか?
魔神は空を漂い。触手を地に刺し。エネルギーを空から注入しているそうだ。
これは窒素か?化学肥料を神がやっているとは。
「魔王のビジネスは、人族の侵攻から僕の因子を持った眷属を守ってくれること。それさえ守ればノープロブレム!」
「わかったの。魔王を謹んでお受けするの」
侵攻から守るには何も武力だけではない。経済とかでもありだな。
と考えていると、魔神がトンデモないことを言う。
「ヘイ!君はレディになったね。月のもの・・・」
ここで恥ずかしくなって、聖女ビーム、いや、聖魔法を放った。
「デリカシーないのー!」
私はもう完全に少女になった。語尾をどうするか?緊急案件だ。いや、それどころではない。
ヤバい。仮にも神を攻撃をした。
しかし、半透明の体は少し溶けたが、また、再生されていく。
ウィルスは病気の元だ。だから、聖魔法は苦手か。
しかし、魔神は、
「効く~!久しぶりに、体を再生出来たよー!細胞が死んでいく感覚・・・これがデットか。ウェルカム!」
何だかな。粘菌は死の概念があやふやだと聞いたが、そんな類いか・・・死んだような状態になるが、条件がそろうとまた活動を再開する。熊楠先生が魅了され、昭和天皇にマッチ箱に詰めて渡したとか。
「グッドな死、有難う。時々死にたい。来てくれ、ベイビー」
「なるべくご期待に添えるように頑張るの~」
女神が苦手をするワケか。嫌だな。
私は魔王代理を骸骨先生に頼み。
飛行船で帰国する。
途中でエルフランドに寄った。
エルフ女王フィニスは口を開け呆然としていた。収入が激減したらしい。
もう、エルフランドを通さないで各国に飛行船で魔石を運んでいる状態だ。
価格もお安く出来るだろう。
アワワ~している状態の横でミレーヌが、『ほら、言ったでしょう!』と言っている。
良いコンビかもしれない。
まだ、まだ、やることはあるが、メアリーちゃんのやれることは限界がある。
ワエキラエ王国に女神圏統一機構みたいなのを作り。魔族との管理貿易と、疫病対策、それに、女神教聖女派の立ち上げ。これはピエールに任せよう。
ワエキラエ王国の王宮に参内し・・・あれ、陛下と王太子とイザベラ様は壇上から降りている。
「もう、メアリー殿じゃな」
「宰相の後任にしたかったが、もう、私を跳び越えなさった」
「でも、メアリーちゃんはメアリーちゃんよ」
「メアリーなの」
陛下は隣にいたクルト君の手を取り。
「メアリー殿をよろしくな」
と言う。
イザベラ様もほっこりした目で見ている。
「クルト殿、メアリーちゃんを宜しくお願いしますわ」
「クルト殿とは王太子、勇者の『利』以外で親交を結びたいものだ。メアリー殿をよろしく頼みます」
「はい、必ずや。勇者の名にかけて」
あれ、そうか、クルト君は陛下と同じ国出身、ことさらクルト君が可愛いらしい。
お金や武具を渡している。
公爵邸にも挨拶に向かった。
私の義父義母義兄と、そして、実の母とも再会した。
あ、母の夫、トム、そろそろお父様認定を口に出してやろう。
と思って
「お、お、お義父様」
あれ、私は父が三人か?実の父のフランツ、義父の公爵、そして、こいつも義父になるから言い方が厄介だなと考えたら言葉が詰まった。
そしたら、トムは号泣をしやがった。
「グスン、グスン、メアリー様、グスン、いつもは『トム!』なのに嬉しいです。しかも、照れて言ってくれて・・・」
あ~、もう、面倒くさい。頭をナデナデしてあげた。
お母様はクルト君を見て、陛下と同じことを言う。
「勇者様、メアリー様、いえ、メアリーをよろしくお願いします。自慢の娘です」
「はい、必ずや」
エルフ屋にも行ったが、カオスになっていた。
『魔道エンジン始めました』
と看板があった。魚屋なのに?冷やし中華始めましたかよ。
何か雲行きが怪しい。
「メアリー、俺、やっぱ、魔道具屋が性に合っているぜ」
「メアリーちゃん。お魚に保存が効く魔法を開発したのよ」
エルフは100年単位だ。仲良く歳を取って行くのだろう。羨ましいな。
「夫婦仲良くて羨ましいの。参考にするの」
「おう、クルトさん。メアリーをよろしく頼むぜ。何でも相談してくれ」
「クルトさん。メアリーちゃんは二階に下宿していたのよ。良い子で早く寝るけど、布団をはみ出すから・・・キャア、少し早いわね」
「・・・はい、必ずや」
何だ。クルト君大人気だな。彼は女神教を離れ私の護衛騎士扱いだ。護衛騎士が勇者、贅沢だな。
学園にも行った。ヘレン、マーリエ、ニッキーは卒業間近だ。
ベッキーもいた。太極拳クラブに所属していた。
「メアリー様、グスン、公爵様がメイドのお給金を保障してくれてこうして貴族の皆様に交じって学ぶことが出来たのです」
あ、しまった。そこまで考えていなかった。さすが、公爵様、私の義父だ。
ここにいる子は、私の新たな取り組みに興味があるらしい。
私のところで働きたいと言う子、婚約者ともども来たいと言ってくれた子もいた。
いいね。事務能力がある子は大歓迎だ。
そして、ここでもクルト君は大人気だ。
いや、勇者だ。顔はイケメンではないが、真面目が顔からにじみでている。女が安心するタイプだ。
「「「メアリー様をよろしくお願いします」」」
「はい、必ずや!」
大工ギルドにも行ったが、ここでもクルト君は人気者だ。
男にも人気、これは、逸材では?
「「「クルト様、メアリー様をよろしくお願いします」」」
「はい、皆様、有難うございます」
ここでギルマスに相談する。
「貧困ギルド本部を改築したいの」
「はい、新居ですね?」
新居、そりゃ、女神圏機構にもなるから、新居でいいのか?
何か、漠然とするな。
フランク一家にも顔を出しソマリさんの近況も報告したが、ここでもクルト君は大人気だ。
「「「クルト様、メアリー様をよろしくお頼み申し上げます」」」
「はい、一命をかけて」
とりあえず。貧困ギルドに向かう。ルビアさんが出むかえてくれた。
あれから、ピエールは聖女山に帰り。信者達を説得して教義を新しくするそうだ。
急進的なものから穏健的なものに変える作業をお願いした。
聖女派として、既存の女神教会税を移管する。収入の10分の1を取ることになるな。
福祉として使おう。
人件費も必要だ。
あれ、クルト君がルビアさんに付き添われてきた。
花束を持っている。
「さあ、クルト様、真心をぶつけるのです」
「メ、メアリー様・・・」
ほお、女神教から引き取ったから感謝か。
陛下のお力が強かった。花を受け取ろう。
「綺麗な花なの。有難うなの」
「メアリー様・・・実は・・・」
その時、フランク一家の若い衆たちがやってきた。
「大変だー!メアリー様、メアリー軟膏が品薄だと思ったら、買い占めている奴がいますぜ!」
そうか、エルフランドはバブル崩壊で混乱している。品薄を見込んで買い占める奴が出てきたか。
「転売屋はぬっころなの!!」
花束を花瓶に・・・ある。花瓶にさして向かう。
階段を降りたら、ピエールがいた。髭がボウボウだ。
「我輩は教義をまとめたのだ。話を聞いてくれ」
「行きながら聞くの~」
「了解した。この御仁は?」
「勇者クルト様なの~」
「何と!お似合いですぞ」
「私は魔王でもあるの~、それは失礼なの~」
「大丈夫ですぞ。この教義、魔王と勇者殿は結婚出来るように作りました」
ほお、それはすごい。興味はあるが、今は転売屋をぬっころだ。
また、向こうから人が来た。誰だ。城の役人か。
「メアリー様、陛下からです。法王から変な書簡が来たそうです・・・ポエムが書かれています。各国にも送られています」
「それは大丈夫なの」
法王には中二病を時々思い出す魔法をかけておいたからな。
もしかして、中二病に支配されたか?
まあ、後で見に行くか?後回し案件だ。
「それと、陛下から、メアリー様へ各国の王侯貴族、国内からも釣書が殺到していますが・・」
「それは丁重に断ってなの」
「はい、もちろん」
結婚か。この世界なら婚約者がいてもおかしくない年齢か。
わたしゃ、どうするか?
まだ、まだ、騒動が終わってからだな。
でも、突き進むのみ。いや、緊急案件に語尾をどうするかがあったな。
お嬢様言葉にしてみよう。
「転売屋はぬっころですのよ!」
変なお嬢様言葉になった。
ビクン!とクルト君が反応した。クルト君に聞いて見よう。
「変じゃありませんか?」
「いえ、最高です。メアリー様はメアリー様です」
何だ。まるで、何か知らないうちに人生のレールを引かれた感触が支配した。
しかし、大丈夫だ。私はメアリーちゃんなのだから。
評価、良いね。励みになりました。応援感謝します。
ここで締めさせて頂きます。また、構想が出来たら挑戦してみたいと思います。
最後までお読み頂き有難うございました。