7 幼女魔王なの~グスンなの~
「もう一つおまけにエ~ンヤコ~ラ~なの~!」
「「「もう一つおまけにエ~ンヤコ~ラー!」」」
ドン!ドン!ドン!
「奥様のためならエ~ンヤコ~ラ~なの~!!」
「「「「嫁さんのためならエ~ンヤコ~ラー!」」」
ドン!ドン!ドン!
今、私は魔族領で、扇を両手に音頭を取っている。
道路建設現場だ。ドンドンと言うのは木槌で地面を固めている音だ。
私は大破門を受けてから、自ら希望して、魔族領への技術支援の派遣長としてやってきた。
交易だ。骸骨先生と約束した技術支援だ。誰も魔族領に行きたがらない。そりゃ、そうだ。安全が保障されない。だから、言い出しっぺの私も行くべきだ。
いや、女神から逃げているのだ。そう言えば、いつも思っていた。女神が直接、魔王と戦えば良いじゃないのか?もしかして、来られないのか?と考察したのだ。
今のところ現れていない。
「休憩なの~!」
「メアリー様、教えてくれた工法最高です。土嚢を埋めて固める。これなら、魔族でも出来ます」
「喜んでくれて嬉しいの~」
これはアフリカなどの青年協力隊で用いられる工法だ。村の子供や女性でも出来る。
排水してから穴を掘り。土嚢を埋めて固める。やや傾斜をつけて排水する事を覚えれば良いだろう。これは前世、会社員時代聞いた方法だ。
この現場には因縁深い女もいる。
「な、何で私もやらなくてはいけないの!」
「それはミレーヌだからなの~!」
王都でくすぶっていた腹違いの姉、ミレーヌものこのこ事務員の応募で来やがった。
ここはお給金が良い。
この女、現場の発想が圧倒的に足りない。だから、現場を知ってから事務仕事をさせようと思っている。
「次の空鯨で帰りますわ!」
「止めないの~」
やはり無理だったか。
あ、地竜ちゃんたちだ。
「クウ!クウ!クウ!」(大変だ。大変だ。大変だ)
「ク、クウ、クククク!」(僕たちの水場が取られちゃうよ!)
「行くの~!」
私は地竜ちゃんたちの背中に乗った。
地竜、地球で言えば、ノドサウルスみたいな子たちだ。背中は厚い鱗に覆われ。側面にはトゲトゲがついている。可愛いがバイオレンスな子だ。
ここにはポニーのロバート君はつれて来なかった。大型の肉食獣がいるから危険だ。
ロバート君はマリアンネちゃんの家に預けた。女の子のポニーがいるから、お見合いも兼ねている。
『ヒヒ~ン、ヒン』(うちのお嬢様の方がいけているわ)
『ヒヒヒヒ~ン!』(メアリーが最高だ!)
『喧嘩していまぁす。大丈夫ですか?』
『良いの~、これは仲良くなる喧嘩なの。どうしてもダメなら、エルフ屋に行かせてなの~』
・・・・・・・・・
地竜ちゃんたちの言葉は分からないが、何か大変な事が起きていると分かった。
導かれるままに赴く。工事現場に近い。
するといた。魔族の一部族だ。
地竜ちゃんたちの水場に身長2メートルくらいの魔族たちがやってきたようだ。
「おい、ここの水場はマガル族が使う!出て行け」
「「「「クウッ!クゥ!」」」(横暴だ!横暴だ!)
「止めるの~、話会いが大事なの~!」
「はあ?何でここに聖女がいる!このマガル族、族長フンギルの・・」
「高圧聖魔法なの~」
シュン!
聖魔法を高密度で放った。もちろん。地面だ、地面にジュルルルと湯気が立つ。
「ま、参りました!軍門に降ります」
「降らなくてよいの~!水場は仲良く使うの~」
この地には力を感じる。恐らく、魔神は地母神か何か?と予想をする。
「「「「クウ!クウ!」」」」(有難う!有難う!)
では、帰りますか。
「送って欲しいの~」
「「「クウゥ」」」(もちろん)
「「「ククク~」」」(僕が送る~)
「お願いしますの~」
それ以来、地竜ちゃんが背中に乗せてくれるようになった。
地竜ちゃんの背中に乗って各現場をまわる。
魔族兵は6000で人族軍10万を破ったことのある強兵だ。
しかし、まとまりがない。魔族が侵攻し、初戦は勝つが。そのうち、人族軍の作戦により撤退がいつものパターンだ。
私は女神から逃げている。後はどうやって、しのぐが思案している。
神は良い者だろうか?
私の祖母はキリスト教系の大学だった。
ある日、家に宗教の勧誘がやってきた。
☆回想
「聖書を一緒に学びませんか?幸せになれますよ」
「そうですね。ヨブ記について教えて下さい」
一瞬、困った顔をして立ち去った。
「お婆ちゃん。ヨブ記ってなに?」
「それはね・・・」
かいつまんで言うと、神が悪魔にそそのかされて、信仰心を試すためにヨブさんという方をいじめ抜く話だ。財産と子供がいなくなっても神の信仰は保てるかと
財産を奪い子供たちが死ぬ・・・
その後、何やかんやあって、2倍の収入を得るようになり10人の子供が出来たと言うが・・・
死んだ子は?
神は人の幸不幸に関わらない。
それ以来、地球の聖女の顔が、毒林檎を持ってくるお婆さんにしか見えなくなった。
「星子ちゃん。それは絶対に口にしてはいけないわ。信仰とは人の幸不幸に関わらないの。彼女は信仰をしているだけなのよ」
シィとされた。
「はい、お婆ちゃん」
☆☆☆魔王城
魔王城に赴く。
城下街はあるが、寂れているな。村規模だ。
しかし、魔王城は立派だ。ドワーフが多く関わり細かい彫刻が施されている。おどろおどろしい姿だ。戦士文化なのかは分からない。
城で骸骨先生に出むかえてもらった。
「実は魔族領にも独自の貨幣が欲しいの」
「作れば良いの~」
「エルフランドの貨幣みたいのが欲しい!欲しい!」
欲しがり骸骨かよ。
「ドワーフに頼めば良いの~」
「物は作れるが、経済が分からないのじゃ」
仕方ないな~。
「飛行船でエルフランドに行くの~!」
あ、そうだ。ミレーヌだ。
飛行船にミレーヌを乗せて、エルフランドに行く。
今、ここは人族、魔族の中継地点として、栄えている。ギリギリ女神の思念は届かないか?
エルフランド、ワエキラエ王国の北方に位置し、魔族領との中間地点になる。
空鯨と呼んでいる飛行船は、あまり運べない。
だから、キャラバンを組んでいる。
エルフランドはすっかり変わっていた。
あちこちに、ラブホみたいな建物が目立つ。
「よう、メアリー!しばらくぶりじゃ」
「フィニス、これは何なの~!」
「魔族、人族、キャラバンがここで取引をする。両方から権利料を払ってもらえるぞ!」
「馬鹿なの~!それじゃ、ナウ〇。中〇の経済表彰村みたいになっちゃうの~!」
どちらも最後、悲惨な末路をたどった。やがて、大型空鯨が出回ったら、あっという間に観光でしか外貨を稼げない国になる。
「ミレーヌ!ここでフィニスのお目付役になるの~!」
「ヒィ、こんな成金エルフに?!何をする仕事なの?」
「堕落しないように、ガミガミ言うの~、ミレーヌの特技はガミガミ細かい所まで言うところなの~」
「ヒドいわ。メアリー、私を何だと思っているの!」
「性悪女なの~!」
書簡を人族のキャラバンに託して魔王城に戻る。財務官の派遣の要請をお願いした。
ここで、王国側の書類を受け取った。定期的にニュースを送ってもらっている。
「なの~!」
驚く。聖都で、妖女が現れ、聖教会を崩した。
ワエキラエ王国討伐の勅命が降ったが、どの王国も乗り気じゃない。
女神教会の求心力が落ちている。
さすがに、ザルツ帝国、ガイア王国は疫病鎮火で助けてもらったばかりのワエキラエ王国を攻めるのは気が引けると・・・
勅命が降ったが、兵は動かない。
これは・・・
「戦争が起きなければどうでも良いの~」
そして、女神教会は求心力を巻き返すために魔王討伐を実行しようとしている?と書かれている。魔王は不在だ。
「これも関係ないの~、勇者様が来たら、骸骨先生に任すの~!」
それから、私は業務に追われた。
ドワーフの工房に行く。
「お金を作るの~!」
「絵柄は何にする?」
それか。魔王でいいか?人族と交流するのに、魔王は不味いだろう。
そうか、魔族のダークエルフは可愛い。それに人族側にも住んでいる。
「可愛い子にするの~」
「ほい、来た」
女神圏は長年魔族と戦争をしていたから、経済が遅れている。単為も金貨一枚とか、そんな感じだ。
セーファーエルフのような単位が必要だな。
これは、骸骨先生に任せるか。
「魔族、人族、両方で使える単位を考えるの~」
「分かったのじゃ」
魔王城の城下街に人族の居留地がある。
ここは大工ギルドの若手ナンバーワンのハンスさんが指揮を執って家を作っている。
一度、助けた大工さんだ。さすがに奥様は連れて来ていない。
「メアリー様に恩返し出来て嬉しいです」
「いいの~!返されまくっているの~」
魔族諸部族の内、ドワーフもいるが、彼らは数が少なく、主に高級品を作る。
ほどよい品質の物を多量に作る能力は人族が上だ。
だから、骸骨先生は人族の技能集団を欲しがったのか。
あの先生は魔族では尊敬されているが、はねっ返りもいる。
「おい、人族がこの地に来るのは賛成していない!魔族の名族、オーガのスヒン!一騎打ちを所望する!」
「分かったの~」
「な、何だ。幼女か?聖女?片腹痛いわ!」
「忙しいからくっちゃベってないで戦うの」
「フン、この鉄斧が目に入らないか?ドワーフの名工が作った一品よ。これでお前は真っ二つさ」
「高圧聖魔法!(口より手を動かせ)なの~」
ブシュウーーー!
「え、斧が・・溶けた・・のか?」
その時の気分で適当な日本語をつけて、技名にした。
「軍門に降ります」
「降らなくて良いの~!」
更にこんな事もあった。工事現場近くの村が襲われていたようだ。
「大変です。ダイオウ様、私どもは、ウサギ獣人です・・・オーガに襲われています」
「行くの~」
ダイオウ?代王か。まあ、ワエキラエ王国女王陛下の代理の権限あるし。
地竜ちゃんにのって、ヒュ~ンと行って。
「悪い子は空爆なの~!」
空に魔王陣を浮かべて、当たらないように、光の矢を振らせる。
「なの~!(光陰矢のごとし)!」
シュン!シュン!シュン!
「な、何だ。あれは、降伏します」
【弱い物イジメはだめなの~!メアリーがガオーするの~】
「「「「ハハーーー!」」」」
全く、魔族は戦士文化だ。居留地や工事付近の警備もしなくてはならない。
さすがに、王国の騎士団に駐留をお願いしたら、戦争が起きることぐらいわかるけど。
あ、また、工事を邪魔しに来た。一人だ。
「我はダークエルフのゴーサン!高名なダイオウ殿に魔道対決を申し出る」
「忙しいから、さっさとやるの~!」
「では、私から、炎鳥よ!汝の敵を討ち滅ぼせ!」
何か、デカい炎の鳥が出てきた。周りの水分を集めるか。
「聖魔法!(雨が降ったらキャンディーを食え!)」
ザザザザーーー!
「雨、そんな祈祷もせずに、晴天なのに、ああ、炎鳥が・・縮んで行く。頼む。眷属を消さないでくれ!」
「分かったの~!」
・・・・・・・
「ダイオウ様、書類の決裁を!」
「もう、骸骨先生は?メアリーの仕事じゃないの~!」
魔王城で、派遣隊の書類を決裁していたら、魔族側の人達もやってきた。
困る。
「メアリー様、手伝いますわ」
「有難うなの~」
「いいえ。メアリー様のおかげで私生まれ変わりましたわ。恩を返したくて」
「対価をもらったから、恩じゃないの~」
「まあ、私に気を使って・・・グスン」
ソマリさんだ。フランク一家のお嬢さんだ。一度、聖魔法で治療した事がある。
第三次派遣隊で来てもらった。安全だと認識されてきたな。
私はもすぐ11歳だ。まだ、遅育ちで見た目は幼女だが、そろそろ、語尾『なの~』は止めた方がいいか?
次は何にしたら良いかと悩んでいたら、奴らはやってきた。
何故か魔王城で事務仕事をする事になったダークエルフの魔道師のゴーサンが慌ててやってきた。
「大王様!勇者一行がやってきました!」
「なの~!魔王は不在なの~!お帰り願うの~!私はワエキラエ王国女王陛下の全権委任大使なの~」
「???貴方が大王です。人族の呼称では魔王でございます。こちらでは、大王と呼びます」
【なの~~~~!】
心底驚いた。思わずのけぞり椅子から落ちてしまった。
作中の宗教の勧誘に関する逸話は私の聞いた話です。私は宗教の勧誘が来たら、とにかく断るのが是としています。
最後までお読み頂き有難うございました。