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2 公式馬鹿な欲しがり義妹になったの~

「旦那様!迎えに来てくれたのね。嬉しいですわ!」


 母は手を胸の前で組む笑顔を見せる。

 どうやら私の父らしい。


 男は私に挨拶をしないでジロとみる。


「ほお、これが手紙であったメアリーか。顔だけは良いな」


「旦那様、学校に通わせました。シスター様からお褒めの言葉を頂きましたわ。空で四桁の計算を出来るとか・・・」


 チャリン!


 お金の音がする小袋を机においた。


「メアリーを連れて行く」

「旦那様!」


「娼婦でもしていたのだろう。伯爵夫人になれると思ったか?」


「なの~!違うの~!」


 お母様はあの美貌だ。結婚の話が来ていたが断っていた。

 全てこの男が迎えに来ると信じて。

 体も売ってない。なのに、この男は決めつける。


 私は無理矢理馬車に押し込まれて連れ去られた。



「お母様!」

「メアリー!メアリー!!お金はいりません!返して下さいませ!」



 私は泣くことしか出来なかった。

 父らしき男は私に言う。


「娘ミレーヌが、王太子殿下の婚約者候補になった。お前を養子にして親戚から婿を取る。我家が飛躍するチャンスだ。お前には令嬢の教育をしてやる」


「ウグ、やなの~!」

「そうか、なら、お前の母親がメイドを出来ないようにしてやる。貴族に雇うなと回覧を回すぞ」



 この男、お母様がメイドをしている事を知っていた。娼婦じゃない事は知っている。


 ググッ!と言葉を飲み込む。

 こういう嘘を平気でつく輩に説得は不可能だ。



 その日のうちに屋敷に連れて行かれた。



 ☆☆☆



「新しく養子になるメアリーだ。挨拶しろ」


「メアリーなの。よろしくなの~!」



 使用人たちの前で挨拶をした。奥には貴婦人と令嬢がいる。


「伯爵夫人ヘルミーネだ。お義母様と呼ぶように、これが義姉になるミレーヌだ」



 ツンとして、挨拶も返さない。使用人達も何も言わない。

 私の立ち位置が分からないからだ。


「メアリーは婿を取り伯爵夫人になるが子供を産むのが役割だ」



 そうか、父は自分の血を残したいだけなのだ。

 これは、伯爵夫人から排斥されるな。


 どうしよう。私はお母様の元に帰る。

 目的は一つにしよう。

 と決めた。



 ・・・・・・・・・・・・・




「ウワ~ン!ヤーなの!」

「何てじゃじゃ馬!だ!こちらからお断りです」


 お茶会と言う名のお見合いでダダをこねた。

 次々と帰って行く。お義母様の親戚だ。



「お仕置きだ!食事抜きで閉じ込めておきなさい」

「はい」


 お父様に小部屋に閉じ込められた。


 しかし、まだ、王太子妃候補なのに私を迎えるのは気が早くないか?



「対抗馬のイザベラ様は優しいだけの令嬢よ。とてもこの陰謀取り巻く王宮で王妃は務まらないだろうな」


「ええ、そうですわ。ミレーヌが王妃に相応しいですわ」



 伯爵と夫人の会話を盗み聞くにどうもお義姉様にほぼ決まりらしい。

 相手は公爵令嬢イザベラ様か。


 う~む。どうも筋道が立たない。


「あの、お嬢様、お食事です」

「はにゃ、怒られるよ」

「フフフ、妹がいるのです。だからほっとけないのです」


 髪は茶髪で、太い三つ編みのメイドがパンを差し入れてくれた。


「ランドリーメイドのベッキーなのです!」

「ありがとうなの~おいくつなの?」

「12歳なのです!」


 それから3日後にお仕置き部屋を出た。

 私には専属メイドがついた。


「スージーと申します」

「よろしくなの~」



 こいつ、ことある毎に私をそそのかす。


「ミレーヌ様が新しいドレスをお買い求めになったようです。古いドレスをおねだりしては如何ですか?」

「大丈夫なの~!」


「家庭教師が参りましたわ。勉強は退屈ですのでサボっちゃいましょう」

「大丈夫なの~!」


 気に食わない奴だが、食事に毒でも入れられたら嫌だ。微笑んで誘いを断る。


 どうも、夫人のカゲがちらつく。私を追い出したいようだ。


 だから、夫人の前でスージーに抱きついた。


「スージー大好きなの~!」

「ヒィ、そ、それはようございました」

「いろいろ教えてくれて助かるの~」


 夫人の目が光る。

 よし、これでいこう。


 すぐに、メイドは交代になった。


 また、同じ事をする。


 すると、ついにベッキーちゃんがやってきた。

 オドオドしている。


「あの、よろしくお願い申し上げます」

「よろしくなの~!」


 アタフタしている。

 きっと、夫人に何か言われているに違いない。


「夫人にメアリーはぐうたら娘だと報告するの~」

「ヒィ、それは・・・」

「女は秘密を持っていた方が輝くの~」

「そ、そうなのですか?」


 おっ、納得してくれたか?



 家庭教師に勉学を教わる。

 ベッキーは部屋の後ろで椅子に座り見守る。


「ほお、基礎は出来ている・・では、これは出来るかな?」

「はいなの~!」



 ベッキーには私はサボっている報告させる。


 そして、夫人の前では、ベッキーを冷遇する。


「フン!黙ってついてくるの~!」

「はい」


 夫人は表情がないが目が笑っている。

 これで正解か?



 お義姉様は王宮に滞在しているからあまり会わない。


 このままで行けば良い。機をうかがう。

 お母様の元に帰るのだ。


 

・・・・・・・・



 家庭教師から勉学を学ぶがルーチンだ。一般教養は男の痩せた先生だ。


「ほお、これは解けるか?」

「はいなの~!」


 勉強は楽しい。段々高度になっていく。

 私は寿退社した後、塾講師を始めた。

 だから、公式とかは頭の中に入っている。


「ふ~む・・・今日はこれまでにしましょう」

「有難うございましたなの~」




 マナーは未知数だ。

 これも初歩から習っている。


「メアリー様、罰でございます」

「いたいの~!」


 鞭は傷がつくから叩かれない。

 脇の下をつねられる。



 はあ、と思って部屋に戻ったら。


 何かおかしい。


 ベッドの上にドレスが山盛りだ。宝石もある。


 クルッと振り返り後ろについてきたベッキーに目で確認する。


 フリフリと顔を横にふる。

 知らないようだ。


 すると、夫人と義姉が使用人達をつれて入って来た。


「お母様、私のなくなったドレスが沢山ありますわ。お母様のグレーヌ家の女主人の証の首飾りまで・・・」


「まあ、貴女はまだ貴族籍に届けていませんわ。という事は平民が貴族から物を盗んだことになりますわね」


「奥様、私、メアリー様と一緒にいたのです。盗んでいないのです」


「そのメイドも共謀ね」



 私とベッキーは小部屋に閉じ込まれた。

 鞭打ちの刑に処せられるらしい。


「グスン、グスン、お嬢様はやっていないのに」

「大丈夫なの~」



 鞭打ち、刑罰途中で死ぬ可能性があるくらいだ。


 やがて、伯爵邸の庭に引き出された。

 裁判とかないのかよ。まだ、不十分な世界だ。




 伯爵夫人とお義姉様が扇で口元を隠して見ている。使用人達も囲んでいる。見せしめだ。


 刑執行人のムチムチの男が言う。


「鞭打一人10回だ。何か希望はあるか?」




「なら、ベッキーの分も私に加算するの~!」


処刑人は夫人に目で見て確認した。


「・・・心得た」

「お嬢様!グスン、グスン」


処刑人は続けて言う。


「何か体につけるか?ドレスの下にオイルだけでもつけるか?何でも良いぞ。少しは痛み和らぐぞ」


「なら、嘘つき女二人、夫人とお義姉様を私の背中につけて下さい」


 これは、ジョークだ。


「戯れ言を・・・では、一回目!」


 鞭を振り上げたとき、大声が聞こえた。父の声だ。



【刑罰やめだ!】


「はい、ですが、旦那様、メアリーは強欲な欲しがり義妹です。罰が相応しいですわ」



「黙れ!メアリー何をした!王宮からお呼びがかかっているぞ!!あの暴虐・・・いや女王陛下ミリンダ様直々に呼び出しの書状だぁ!!!」



「「「ヒィ」」」



 私はすんでの所で助かった。


 何でも、王太子殿下の婚約者の選定の儀に出席しろだ。


「メイドはベッキーが良いの~」

「好きにしろ!」


 こうして私は王宮に参内することになった。


 しかし、


「これを着て行きなさい!」

「はいなの~」


 わざとヒラヒラなドレスと大きいだけの宝石がついたネックレスを渡された。

 馬鹿な欲しがり義妹が私の公式だ。


最後までお読み頂き有難うございました。

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