6 女神視点~神と対話しなさい
私は女神アルテ、人族の守護神だ。神々の体系では最下流の神だ。ほんの7万歳。
名は人族古語で芸術を意味する。
同期は魔族の神。
私は7万年前に生まれた。人族の少女が岩壁に書いたナニカだった。
それから、人族の脳に革命が起きた。見えない物を想像出来るようになったわ。
その子が初代聖女よ。それが女神教の起源・・・
今は法王が神の代理人とうそぶいている。まあ、それはどうでも良い。
見えない物、パラレルワールドのテラなら、社会契約説かしら・・
人族は見えない物を依り代に団結して、数々の種族を殲滅してきたが今は停滞している。
非人族諸部族が魔王の元に団結し、人族の攻勢を跳ね返して来たわ。
こざかしい。
今はテラにいる。
☆東京某所図書館
「そろそろ閉館です」
「失礼、もう、そんな時間か」
「哲学お好きなのですね」
「ええ、司書殿、この世界の学問は興味深い」
「この世界?外国の方ですよね?」
「異世界の女神だ」
「ええ?」
「では失礼するよ」
図書館の外に出て
転移!
をして元いた世界に戻る。さすがに騒がせてはいけない。
人族一強の世界、それが私の求める世界だ。
・・・・・・・・・・
今日は、大陸西方の絶海の孤島を訪れる。
ピカッ!
島に降臨すると、巨人の女神、ゲルラがいた。昔は40メートルを超えていたが、今は10メートル未満か。巨人の思念が無くなってから、衰退する一方だ。
「ゲルラ・・聞こえるか・・」
彼女は膝を山のように折り曲げて、顔を膝につけている。
もう、半透明になっているわ。
30万年前に絶頂期を迎えた巨人族、最後の生き残りが死んでから1万年が過ぎた。
この惑星中に散らばったが、1万体はいなかった。
10万年前に気候変動が起き。獲物になる巨獣が減り。巨木が無くなり。
7万年前に、人族が台頭し、徐々に追いやられ、島に逃げ延びた巨人だけが島嶼化、つまり島に生息する生物が小さくなる現象で何とか生き延びようとしたが、
それも一万年前に、最後の巨人が死に絶えた・・・
「ゲルラ・・・ご苦労様、昇華!」
ボア~!
「天に召し。偉大な法則の一部になり。我らを導き給え・・」
光の粒子になり。天に昇るゲルラを見送る。
神は眷属がいなければ衰退する。眷属か先か神が先か。鶏が先か卵か先の議論になるであろう。
後は、沼地に生息している竜人の女神は蛇のような姿だわ。魚をそのまま飲み干す。
ドワーフの女神は山に籠もって酒を飲んでいる。エルフ神は森で裸で森林浴を楽しんでいる。
どれも人族の敵ではない。
魔神が唯一の敵だわ。
さて、善意の化け物に会いに行きますか・・・
私は孤島から西南に向かい。人族発祥の地に向かった。
断崖絶壁に囲まれ周りから孤立した高原に魔力が湧き出る沼がある。
そこに原初の女神がいる。
沼の支配者にして人族の祖先種の女神だ。
ここは人族の伝承では楽園と言う。
現在は結界で覆われている。
シュン!
高原から岩が飛んできた。
「成物!岩よ。本来の役割に戻れ!」
ポトン!
岩は地に落ち景色の一部になった。
結界のすぐ近くまで到達したら原初の女神の声だけが聞こえた。
「アルテ!よくものこのこと!私の可愛い人族を返して!」
「お姉様、もう、後戻りは出来ません」
「私の可愛い子たちに、農業を教えて!!しかも、姿すら似てきて!」
「お姉様、もし、また、大洪水を起すのなら、今度こそ、容赦はしません!」
もう、お姉様には、石を投げるぐらいの能力しかない。
しかし、時間が経過したらどうなるか分からない。
お姉様はその力で人族の祖先種に食べ物を与え。外敵が侵入しないように地形を変えた。
しかし、食べ物を与え続け外敵を排除したら絶滅仕掛けた。
生物は楽園では絶滅するようになっているらしい・・・
そんな中、いつも歌っているばかりの個体が一族をつれて、崖の下の世界に進出をした。
冒険に出るには楽天家の方が良いようだ。
更に、ゴブリンのような姿の祖先種は段々とお姉様に似てきたわ。
それをお姉様は神への反逆と捉えている。
度々、火山の大噴火や大洪水を起して、人族を滅ぼして生態系を作り替えようとしてきたわ。
私は何度も消えかけ。何度も立ち上がったわ。
今は、人族は自然をある程度改良出来るようになった。
それに伴い私の力は増し。異界を行き来出来るようになった。
「お姉様、どうか、お健やかに・・・」
次に女神教会に向かう。
初めての聖女は、私を産みだした少女だったが、もう、この法王という男にその面影はない・・
☆☆☆女神教会本部
メアリーの活躍により聖都の疫病は鎮火をしたわね。
法王はでっぷりしている。
体には装飾品がちりばめられているわね。
「皆様、教会には女神様や精霊様が宿ります。良いのですか?教会がボロボロでも?
ええ、良くありません。
ですから、免罪符を買えば功徳は限りないのです!」
「皆様!特別に金貨10枚で販売いたします!」
ザワザワザワ~!
「でもよ~、疫病が治まったのもワエキラエ王国の紋章のある空鯨から聖魔法が降ってきたからじゃないか?」
「そうね・・・もう、今年何回目の免罪符かしら」
「段々、ピエールがまともに見えてくる・・・ヤバいな」
ほお、この法王が演説しても不満を口にするか。こう言った場合は、外敵を作る事だ。
「ゲールよ。確かに聖教会の上を飛んだのだな」
「はい・・・しかし、それで猊下はお治り遊ばしたのでは・・」
「魔女メアリーを召喚し、火あぶりの刑に処す!ワエキラエ王国に勅令を発せよ」
「しかし・・余りにも」
「フン、ゲールよ。お前も魔女か?」
「いえ、そんな!」
・・・法王は愚かだ。フフフフ、それで良い。これで女神教とやらはメアリーの物になる。
未来は予測不可能、しかし、筋道は立てられる。
ワエキラエ王国は渡さない。戦争が起き。法王虜囚になるであろう・・・
しかし、数日後、信じられない報告がもたらされた。
「メアリーは、ワエキラエ王国にいないと返答が来ました!」
「な、何だって!嘘に決まっておるわ!ガイア王国、ザルツ帝国に聖戦を布告せよ。ワエキラエ王国を神敵として討伐だ!」
え、メアリー!がいない。思念を追わなかったわ。
私はメアリーの思念を探したが・・・見つからないわ。
もしかして、
魔族領!魔神の領域・・・
しまったわ!
思念が届かない。
魔族領では私の分が悪い。
「降臨!」
ピカッ!
私は女神教会本部に降り立った。まるで人族のように不確定な行動を取った。つまり、八つ当たりね。
「おい、女!何者だ!」
「フ、託宣を授けに来た!」
「聖騎士取り押さえろ!」
「成物!皆、それぞれの原物に戻れ!」
ピカッ!
大理石は元の加工前に戻り。鎧は鉄塊に戻る。服は分散し、糸に戻る。
「女神様、お助け下さい!」
「その女神様だ。お前達が想像している女神は原初の女神だぞ!」
金髪碧眼、それがお姉様の姿だ。
「成物!私はこんな家に住んではいないぞ!」
ガタガタガタ~
建物を崩した。
「法王猊下!避難を!」
ああ、これから、グダグダな戦乱が続くのね。
退屈だわ。
「転移!」
ピカッ!
私は暴れるだけ暴れて日本に転移した。
☆☆☆東京某図書館
「司書殿、哲学で面白い物はあるか?」
「はい、このニーチェ の『ツァラトゥストラはかく語りき』は如何ですか?
「ほお、どのような内容ですか?」
「そうですね。有名な名言は『神は死んだ』でしょうか?」
「・・・そうか。紹介痛み入る」
この世界の神は人族に干渉しなくなった・・・お前ら、地球人は少しは神と対話しろよ!
さすがに、今日はドワーフの女神のように酒を飲みたくなった・・
最後までお読み頂き有難うございました。