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5 馬鹿で有難うなの~!

 王都封鎖になって一月が経過した。


 この魔王軍の侵攻を総評したが、恐ろしいものだった。

 グダグダな内容だったが、数ヶ月で王都にペストが蔓延しただろうと予想される。


 最初は訓練『籠城戦』と布告し、不満が出たけれども、隣国ザルツ帝国、ガイア王国の首都で疫病が蔓延しているニュースが広まり王国民は納得してくれた。


 ワエキラエ王国は病人10名未満、ゾンビネズミ32匹、今も猫ちゃん部隊が奮闘中だ。

 やはり疫病は初動が大事だ。


 実は地球の567も、日本の報道よりも早く中華圏のニュースで出ていた。

 2019年の12月ぐらいに中国で患者が確認され、口コミなどで、中国本土ではない。中国国外の華僑やSNSで流れていたのだっけ。


 日本で深刻に報道されたのは、私の記憶が正しければ、2020年の1月末になってからだ。


 陳先生が正月最初の教室で教えてくれたな。


『み、みなさん。教室はお休みになります!マスクを買って置くと良いネ』


 蘇我先生も陳先生に倣った。


『・・先生が言うのなら、本当でしょう。しばらく、人が集まるのは規制されるでしょう。マスク、品薄になりますよ。転売をする不届きな輩も出てくるから注意です』




 ・・・・・・・・



「メアリー、各国から支援要請が来ている。行ってくれないか?」


「はいなの~!飛行船で行くの~」


 陛下から頼まれた。


 私は王都封鎖の間に、チートをやろうと頑張ったが、

 青い鳥は裏庭にいた。


 エルフ屋のおちゃんの発明品の中にエンジンがある事を発見したのだ。

 魔石や魔力を対価にグルグル回るものだ。エコなエンジンだ。


 あの親父、魔道扇風機として使っていた。


「何で黙っていたの~!」

「これ、ただまわるだけだぜ??」


 プロペラと船体を大工ギルドに依頼して試行錯誤して作ってもらい。



 錬金術師に依頼して、ヘリウムをつくってもらった。いや、あった。


「え、これ、ただ軽い気体ですよ。燃えないし、軍用で使えません」

「それがすごいの~!」


 気球の発想はあったが、エンジンとヘリウムを結びつける発想はなかったようだ。



 そして、数ヶ月で小型の飛行船が完成し、私は陛下の命令で飛び立った。


 ザルツ帝国の帝都、ガイア王国の王都をまわった。


 王都上空に来たら。


「皆、マスクをするの~!」

「「「はい!」」」



 上空から、聖魔法を降らせる。一度、患者さんを治したので、対流行病に特化した魔法が出せるようになった。


「なの~!エリア聖魔法なの~!光の舞、アンチ流行病!」


 パラパラとまいた。

 病人一人一人を丁寧に助けても良いが、ここは仮想敵国、有能な人物と思われたら、良くてしつこい引き留め。悪くてラチだ。

 私が可愛いのもあるが、聖女は貴重なのだ。


 飛龍に乗った使者がやってきた。拡声魔法で呼びかけてくる。




【メアリー殿!ぜひ、我が王宮へ!慰労パーティーを開かせて頂きます!】

「グギャ!グギャ!」(デカい!デカい!)


「いいの~!お気持ちだけで嬉しいの~!エンジン出力全開、面舵いっぱいなの~!」


「「了解!」」



 それから、私はワエキラエ王国だけではなく、女神信仰圏で名が広がった。


 女神教会は『たいしたものではない。それよりも女神様への祈りが滞るのが懸念される』と声明を出した。




 女神教会へ人が集まらなくなる。つまり、お金が集まらなくなるのを心配しているのだ。


 そして、流行病が沈静化して頃、

 遂に女神教本部の聖都から使者が来た。ワエキラエ王国の公式聖女アマンダと一緒だ。


 聖なる使者なので、陛下も玉座から降りて謁見する。

 場には、グフタフ殿下、イザベラお義姉様、文武百官と言う所か。まるで儀式のようだ。恭しく出むかえた。


 使者は開口一番に言う。


「怪しき術を使い、世を惑わす魔女メアリーを大破門にいたす!」


 ああ、これは聖女のスキルを得てから予想していた。

 だが、大破門は予想していなかった。


 破門も段階がある。注意、小破門、中破門、大破門・・

 大破門は1番重い罪で、女神教徒との関わりを全て禁止される。

 口座も作れない。今までの財産を全て没収される。コジキとして過ごせと言う事だ。


 使者はそのカイザー髭を伸しながら、慇懃に言い放つ。


「よって、貧困ギルドは全て聖女アマンダ様の物になり。寄付金口座は、聖王国の口座に移管される。ワエキラエ王国国王は速やかに処置されたし」


 陛下は。


 ニコニコ笑っているだけだ。使者は了解したものとして更に口上を続ける。


「メアリーはこれより聖女服を脱ぎ。この服を着られよ」


 お付きの聖騎士が、ボロ布の貫頭衣を持って私の前に来た。コジキの服だ。

 あ、可愛いとコジキの服、ギャップ萌狙い過ぎでは?


「今、ここで脱げ!邪教徒は聖女服を着てはならん!」


 すると、陛下は目配せをした。

 これは、アカン、メアリーのせいで争いが起きる。


 その時、馬鹿、いや、ピエールがのこのこ出てきた。

 あいつ、一応客人として城に滞在したのだっけ?

 女神教聖女派、まあ、原理主義者だ。


 女神様の託宣から、考えの違う者との会話が大事と天啓を受けて、

 メイドに『我輩とお話しませんか?』と言って引かれていたよな。



 ピエールは不思議そうな顔をして、手をあげて発言をした。



「我輩は五度、大破門を受けているが・・・普通に暮らしているぞ」


 使者は驚きの顔を隠さない。


「ピ、ピエール!あの法王様の玉座にウンチをした馬鹿!」

「法王たる者、宝石がちりばめられた椅子に座るものではない!その戒めだ!」



 恐れられているな。いや、毛嫌いか?関わったら負けの人なのか?この状況嫌いではない。


「貧困ギルドはメアリーのものではないの~!法人なの~!別人なの~!」


「クゥ、一端帰るぞ」


「待たれよ。使者殿と聖女アマンダ殿」


 陛下は止める。


「アマンダ殿、生活費の寄付はやめじゃ。妾は後悔しているのじゃ、何故、あの時、煮殺さなかったのかと」



「ヒィ、それじゃ、普通のお給金で暮らさなければいけないじゃない!このブ・・」


「帰られよ」


 陛下の迫力でブスとは言えなかったようだ。不敬罪になるのか。


 ピエールが余りにもあれなので、破門が連発されたが、ピエールについていく人がいる。

 主に女神教の堕落を糾弾しているピエールだ。免罪符を売る教会だ。反発も多い。


 ピエールが大破門をされても大丈夫だと言う前例を作ってくれていた。


 陛下が頭をナデながら言ってくれた。


「フウ、アマンダは欲に溺れてはいけない見本。戒めのために処刑を止めたが、間違いだったかのう。せめてメアリーの1000分の1くらいの能力があればのう」



 グフタフ殿下が音頭を取った。


「とにかく、この場が収まったのはピエール殿のおかげだ。ピエール殿、感謝いたす」


「「「ピエール殿、有難うございます!」」」

「ピエール殿、王宮に留まるが良い」



「はあ?何故、皆、感謝する!!このピエール!信徒と母上以外から感謝されたい事はない・・・グスン、グスン」


 これは感動の場面か?

「ピエールしゃん。ヨシヨシなの~!」


 頭をなでてあげた。


 この男、信徒にだけは慕われていた。信徒が献金をすると、丁寧にお礼の手紙を書いていたそうだ。


 無駄に達筆で、信徒はその手紙を有り難がる。律儀な男なのか?信徒の前では尊大さは見せない。



 それから、また、一月もたたない内に使者が来た。あの髭、同じ人だ。やつれている。


「・・・大破門の処置、メアリー殿の技を見て判断をする・・との猊下の仰せだ」


 何かオドオドしている。陛下はため息をついて答える。



「ほお、メアリーは各国で疫病を鎮火していた。その実績を見れば分かるというものじゃ」



 まさか。


「使者しゃん。正直に言うの~!聖都で疫病が蔓延している~?」


「!!!」


 うわ。使者は口を開けた。


「さて、どうしたものかのう。メアリーどうする?」


「決まっているの~、行くの~、疫病に国境はないの~!放っておいたら、大陸に広まるの~!」


「いや、そこまでは・・・ただ、技を見ようと・・」

「馬鹿なの?ピエール以上の馬鹿なの?違うの~、ピエールと種類が違う悪い馬鹿なの~!正直に話すの~!」


 正直に話しやがった。

 聖都で疫病が蔓延しているようだ。それも爆発的に。

 まだ、初期か?



 私は飛行船で聖都に行った。



「エリア聖魔法なの~!」


 ボア~!


 後は、ワエキラエ王国からポーションが届く。それで良いだろう。



 あの使者を飛行船に乗せて道案内をしてもらったが、トンデモない事を言う。


「メアリー殿、その聖教会の上は飛ばないで頂きたい。不敬罪になりますぞ」


「馬鹿なの~!取り舵いっぱいなの~!」


「ヒィ!」


 聖教会の上空でも聖魔法を振りまいた。


 使者を郊外に降ろしてワエキラエ王国に帰った。

 使者は震えていたが、その意味が分からない。



「「「「メアリー様!」」」

「「「真の聖女様!」」」

「「「ミャー!ミャー!」」」

「「「ワン!ワン!ワン!」」」


 飛行船が飛ぶと民が出てくる。


「良い子の診断!」


 ピカッ!


「もう、病原菌はないの~!」



 この日、ワエキラエ王国は大陸でいち早く王都封鎖は解除された。

 法王からは何の感謝状もなかったが、メアリーにとっては民の感謝の方が嬉しかった。






最後までお読み頂き有難うございました。

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