4 魔王軍迎撃作戦なの~②
エルフ屋での魔道通信は終わった。
それをカトウは感じた。
「さっきまで、感じていた強い魔力波がないわね」
ダークエルフ、カトウたちは、王都を回るが、メアリーの手がかりは掴めない。
その時、若い男女の声が聞こえた。
「はあ、はあ、キャサリン待てーー」
「キャア、ダミアン!捕まえてご覧なさい!」
うわ。馬鹿ップル、殺したいわね!
「ダミアン!聖女メアリー様が王都東の空き地に来ているのですって、遅れちゃいけないわ」
「そうだ。キャサリンと僕を祝福してもらおう」
な、何、メアリー?
部下に目配せをして向かう。
しかし、この馬鹿ップル、一直線に向かわない。
あちこちによる。
まあ、馬鹿だから仕方ないのだが、さっさと案内しなさいね!
「あの、カトウ様、本当に宜しいのですか?」
「ワナかもしれませんよ」
「フン、相手は馬鹿よ。まだ、私達の・・・ゴホン」
さすがに、声に出さない。私の戦略が見抜かれている訳がないわ。
相手は人族、前世、真理を把握しているのは私と数人の同志しかいなかった。
そう、人は肉を食べなくても生きていける。動物の管理を・・・
「カトウ様、二人は屋台で串焼きを食べています・・・さすがに、ここで何もしていないと目立ちます」
「分かったわ。串焼きを買いなさい。私の分もよ」
「え、は、はい。肉ですよ」
「良いから!」
串焼きを食べながら考える。
ネズミの死骸をゾンビネズミにした。病原菌たっぷりのね。
ゾンビネズミが、他のネズミを襲う。
すると、ネズミ算式にゾンビネズミが増え。
恐れ知らずのゾンビネズミは猫を襲い。
猫を愛でる人を噛み。
人がゾンビになり。
増えていく。
部下が小声で言う。
(あの、カトウ様、大魔道師キュバエル様や上級死霊使様を説得した方が良かったのではないですか?人族の死体を死霊に出来ますよ)
(そうです。武器軟膏作戦も回りくどい・・ゾンビネズミか病原菌かどちらかに絞るべきです)
「何ですって!あの自分の名も忘れた骸骨おじいちゃんはダメよ。止められるわ!」
「あ、あの二人が動き出しました!」
追いかけた。
「はあ、はあ、はあ、よく動くわね」
「しかし、尾行しているのがバレていませんか?」
「そうです。一人にした方が良いです」
「・・・カトウ様、大変です。周りを見て下さい。通行人の・・・歩調が一定です。囲まれたかもしれません」
「馬鹿ね。人族よ。前世でも私以外全員馬鹿だったのだから・・って、あの空き地にメアリーがいるのね」
ついに目的地についた。
あの二人は二手に分かれてどっかにいった。何故?
空き地のど真ん中に屋台がある。あれはキャンディーストア?
中に一人の男がいた。
「おい、魔王軍の魔道師!監視国家ワエキラエを舐めるなよ!ヨシ!!やれ!」
すると、周りの屋根から網が飛んできた。
バサッ!
「うわ。これは、魔道封じの網だ!」
「ヒィ、周りを囲まれている!いつの間に」
「ハハハハハ、王国軍最終階級10人長の俺が、大金星をあげたぜ!やはり、メアリー様を狙っていたな!ダミアン、キャサリン、よくやった!」
「キャサリンが可愛くて追いかけたのさ」
「ダークエルフの頭目は女よ。ダミアンを追いかけたのよ。ダミアンは渡さないのだからねっ!」
「『ねっ!』じゃねえよ!人差し指を口の前に立てて、ウィンクしているんじゃないわ!」
腹立つ!しかし、何でバレた・・・・
☆☆☆王城
王城に帰ったメアリーは、自分が狙われているとして、逆に情報を流して捕獲するメアリー作戦を実行した。
「ダークエルフ隊捕獲です!ヨセフ隊です。一番の功労者は!下請けのダミアンとキャサリンです。貴族学園の学生です!」
何だ。カゲに下請けなんてあるのか?
キャンディーストアのおっさんがやったのか。
ダミアン?キャサリン?どっかで聞いたような・・・
イザベラお義姉様が教えてくれた。
「フフフフ、メアリーちゃんが縁結びをしたカップルですよ。何でもミレーヌ様の派閥が没落してから、学費もままならずに賃仕事をしていたとか」
「うむ。二人には報奨金を渡し、貴族学園の学費を免除しようぞ」
うわ。あの二人か?
カトウは投獄され。
「諸君らは魔族との取引材料になってもらう。有り体に言えば捕虜だ!」
「な、なんでだぁー!ここは暗い!上級指揮官の待遇を所望するわ!」
「ネズミをばらまいた所を話せば・・・考えなくもない」
メアリーと会うことは無かった。
その後、メアリーは。
「猫ちゃん計画前倒しなの~」
「「「はい!」」」
ペスト流行の原因の一つに魔女狩りが行われ、猫ちゃんも狩られた事がある。
猫ちゃんには病原菌は移らない。
現代日本では物議を醸す話ではあるが、猫ちゃんを街に放ち。おトイレや、寝床、お食事処を作る。
外飼いしやすくするのだ。
すると、報告が上がって来た。
「猫を追いかけるネズミの報告があがりました」
「メアリーが行くの~!」
「メアリーちゃんは、お城でどっしり構えて下さい。冒険者の聖女様に依頼します」
「はいなの~、イザベラお義姉様」
治療ギルドからも不可解な患者の報告が上がった。
これは行き。確認する。やはり、ペストだ。どのレベルのポーションで治るか確認する。
中の上ぐらいで治った。これは隣国にも渡さなければいけない。
しばらく、王都は閉鎖か。いや、出来ない。物流が滞ったら餓死だ。
しかし、やらなければいけないのは辛いところ。
早急に物資の運搬以外の不必要な人の流入を抑えなければならない。
やはり、隣国、ガイア王国、ザルツ帝国の首都も病人の報告があがった。
「あれ、メアリーは、まだ、軍師扱いなの~」
「いいえ。宰相補佐でございます」
「なの?」
「はい、女神教会の対処をしなくてはなりません。この、ゼムリいささか歳を取りまして発想が衰えておりますから、助けて頂きたく・・」
「そーなの?!」
いや、女神教会ではない。女神だ。あの女の動きが何故か気になる。
☆☆☆女神視点
人族は私を女神と言う・・今、私は大陸の上空で思念を受け取っている。
生命は川の流れだ。人族は知的生命体の中では最下流で最弱の生物だった。
「メアリーは、解決したわね。魔神も乗り気じゃなかったけど、でも、たいしたものね。羊飼い候補だわ」
では、上流神のエルフ神に会いに行きますか。
かつて、最強種として世界を席巻したエルフも今は見るかげもない。
大陸の大原生林地帯に赴いたが・・・
エルフの森には、エルフ神イニチィウムがいる。彼女も楽園を追放された女神だ。
「アハハハハハ、アルテ!森林浴を一緒にしようぞ!」
裸で立っていた。
「・・・・・また、今度、来ますわ」
最近、やや、エルフは盛り返しているようね。
ビクン!
「あら、うねりを感じたわね・・・」
私は強い思念を感じた。
場所は、ここから近い。森林の中の村だ。
降臨しよう。
☆☆☆大陸南東プリモ王国
「聞け!魔女判定だ!少女ケーレを川に流し。浮かんできたら魔女!沈んだら無罪で女神様の御許までいける」
「そ、そんな、それは実質死刑ではありませんか!皆様!助けて!」
ケーレ、孤児だ。村の中で弱い立場の女性、男性も魔女に認定される事が多々あった。
魔女裁判、ワエキラエ王国でもあるが、ミリンダ女王の時代に改革が行われ、最後は王の決裁になった。
裁判費用は告発者負担、最後は王都まで行かなくてはいけない。
事実上ない状態までになっているが、中央集権化が進んでいない国々では在地の裁判で処刑までされる事がほとんどだ。
鬱屈した村の問題を解決するための生贄と言っても良いだろう。
この国では村人が告発し、地元の代官と聖職者が執り行った。
今まさに、一人の少女が裁判という名の処刑に合う所だ。
少女が縛られ川に投げ込まれようとした瞬間。
ピカッ!
一人の女が空から光と共に降りて来た。
メアリーの前に現れたあの黒髪の縮れ毛の女神である。
ボチャン!
川の上に現れ、平然と立った。
「さあ、私は沈まないわよ。どうする?」
「大魔女だ!ケーレを助けに来たのか?」
「やはり、ケーレは魔女だった」
「兵よ!攻撃せよ!」
「「「了解!」」」
シュン!シュン!
愚かな。矢と槍が飛んできたわね。結界を張るまでもない。
「成物!物に成れ!」
ピカッ!
「うわ。矢が分解された、木と、鉄に戻って川に落ちていく」
「槍も・・・同じだ」
「「「司祭様!」」」
フ、つくづく人は愚かだ。だが・・・生物的に見たら最強、いや、最凶か?
面白い。私が試してみよう。
「悪魔よ!聖なる光を喰らい闇の中に戻れ!」
ピカッ!
あれが、司祭か?聖なる光を放っている。浄化する気ね。メアリーの1000分の1か。弱い。弱い。私と同じ属性の魔法を放っても無駄だ。
最も、多くの聖職者が女神を崇拝するが認識していない。
メアリーは女神を崇拝しないが、認識をしている。その差だよ。
私はこの聖職者に手をかざして。
「止揚!」
と術をかけた。
すると、聖職者の懐から、金貨が大量に落ちてきて、法王の衣服になった。
聖職者からしたら大罪だろう。欲望が大きすぎる。出世の欲とその手段が魔女狩りでは止揚できなかったか。
止揚は失敗だわ。
「ハアアアアーーー、脱げない。脱げない!何だこれは。この金貨は・・私の物ではない!金庫にしまってある!これは妖術だ!女神よ!助けたまえ!」
「「「「ウワワワワーーーー化け物!」」」
あやつが告発者か?思念を読み取ると・・・ケーレと言う少女を口説いたが失敗した地主の息子か。つまらぬ。
「止揚!」
「ギャアアアアーーーー!俺のイチモツが!こんなにデカくなりやがった!」
これも性欲が強すぎる。倫理と欲望の折り合いがつかなかった。欲望が飛び抜けたか。膝くらいの大きさね。
イチモツに血が行くと貧血で倒れるな。生涯、欲望を発散する事ができなくなったわ。でも、欲望は大きい。これは矛盾か?
私は次々に止揚をかけた。
ダメだ。失敗だ。
動けないほど太った体になった者、口が裂けた者、中には即死した者がいた。
最後、ケーレと言う少女に止揚をかけたが・・・
ボア!
当たりだ。聖女になった。この状況下でも、憐れみを持ち合わせていたか。他人を思っていたか・・
「まあ、貴方は・・・もしかして、女神様?」
「そうよ」
「ケーレ!無事か!」
上流から小舟に乗った青年がやってきた。少女の恋人か?
そうか、川に投げ込まれたら、助けるつもりだったか。
失敗するだろうに・・・それでもやるつもりだったか?
「フフフフ、早く小舟に乗って行け。祝福をするわ。しばらく魔獣は襲わないわ。幸運も続く・・・汝、夫婦に幸あれ!」
ピカッ!
「化け物・・・」
「ポール!この方は助けてくれたのよ!」
愚かだと思ったが、少しはやる。これだから人族は面白い。
さて、メアリーは何をしているのかしら。
☆☆☆ワエキラエ王国王都南門
王都は南門以外封鎖し。メアリーが、人々に聖魔法をかけていた。
「はっ!なの~!」
ボア~~~!
「聞いたか?プリモ王国で妖女が現れたってよ」
「村人たちが二人を残しておぞましい姿になってよう!」
「そこ話さない!3日後に王都戒厳令だよ!レベル籠城戦だ」
「「「えええええー!」」」
隣国もワエキラエ王国にならう事になった。
メアリーは深く女神について考えていた。
最後までお読み頂き有難うございました。