3 魔王軍迎撃作戦なの~①
王都は人口20万を超えるが、カトウはメアリーを探す有力な情報を得た。
それほどメアリーが有名人なのが災いした。
「カトウ様、メアリーはエルフ屋にいると街の者が口々に言います!」
「そう」
エルフ、なら魔道具屋さんね。治療院は警備がついているわね。
人族の海の中でドンパチは出来ないわね。
この王都で有名な白エルフは白エルフ王族のエタリーゲル・フォン・フリゲートとその妻リーザ。
エタリーゲルは魔道具の開発、リーザは魔道師で有名ね。
「行くわよ!」
「「「はい!」」」
エルフの二人が魚屋をやっているとは思いもしなかった。
錯誤の連続に陥っている最中だ。
しかし、王国も錯誤の連続に陥る。ここはSNSの無い時代、限られた通信手段しかないのだ。
飛龍が飛んで来る。下水道から来る。要人暗殺と喧々諤々の議論が行われた。
だが、メアリーは一枚上手だった。
侵攻の場所を特定しようと動き出した。
☆☆☆王宮
王宮では作戦会議が行われた。
メアリーは自分の可愛さ以外の自己評価は低い。
カゲを束ねている王太子グフタフが提言する。
「メアリー嬢に王族並の警護をつけます。作戦が終わるまで王城にお住み下さい」
「え~、メアリーに護衛?」
「はい、人族なら聖女服を着ている者を襲いませんが、魔族は別です」
「好きにするの~」
イザベラも発言をした。
「あの~、メアリーちゃんを警護するのは当然ですわ。聖女アマンダ様は如何されますか?」
ドッと笑い声があがった。
「クククク、失礼、イザベラ様、アマンダ様には聖騎士がついております」
「ええ、美男子枠ですが!」
「あら、まあ・・・」
ほお、イザベラお義姉様は天然だ。これで緊張がほぐれた。ベッキーは今、学園入学準備か?
なら、私も仕事をするか。
「フィニスと会うの~」
「ほお、エルフ女王か、確かに、王宮に滞在をしておるが・・」
陛下は口を濁すな。
と思ったら。
部屋に行ったら分かった。
紅茶を飲みながらソファーに横になり恋愛小説を読んでいた。くつろいでやがるな。
分かりやすい堕落だ。
「おう、メアリー、人族の娯楽は面白いな」
「セーファエルフの話会いで滞在しているのじゃないの~?」
「任せている」
「なの~!そんな事をしていたら属国になるの~!」
エルフは環境に左右されやすい。山奥で寮生活をしていた野球部員がプロになって、いきなり輝く世界に来て、土地や高級車を買いまくっている大型新人か?
「ついて来るの~!」
ちょうど良いので護衛を連れてエルフ屋に行った。
リーザさんが、民族衣装を来て呼び込みをしている。
綺麗だな。いや、可愛いもある。
「いらっしゃいませ!」
ここで同族の働く姿を見たら、心を入れ替えるだろう。
と思ったが、斜め方向にいきやがった。
「な、その・・・その服は・・年頃の娘の服ではないか?」
「あら、フィニス様、フフフ、もう、おばさんだけど、メアリーちゃんが人族は年齢がわからないから、これを着ても大丈夫ですって・・・もう、困るわ~」
「似合うぜ、リーザ」
「あなた・・・」
うわ。今夜は早く寝た方がいいか?
今はそれどころではない。
「フィニス!魔王と連絡をするの~、一緒にいるの~」
「な、今、魔王は不在だぞ。誕生していないぞ!・・・してないぞ。魔族の事情は全く知らないぞ!!」
うわ。目を斜め上にしてたじろいでいる。
エルフランドの魔族派から魔族の事情を聞いているな。やはり、フィニスは有能だ。
「おっちゃん。魔王城と連絡するの~!」
「おうよ。でもよ。少し、魔石が必要だぜ。魔力波を強く飛ばさなければならないからな」
「王宮からお金もらっているの~!」
「おう、少し待て」
地下に昔のテレビ局のようなスタジオがある。
大きな水晶があって、そこに人が映るのか。
「フフフフフ、今、物干しを立てますね」
最新の魔道具らしいが、物干しをアンテナ代わりにしている。
ピピピピ~
画面に出てきたのはお爺ちゃんか?骸骨が出てきた。
「ほお、何じゃ。どこの部族か?人族か?デッカい魔力波だから飛び起きたぞ」
昼寝中かよ。どうやって発音しているのだろう?
「メアリーなの。隣にいるのはエルフの女王フィニスなの~」
「ああ?何じゃって、面倒くさい?とエルフだと?」
「だから、メ・ア・リーなの~、メしか合っていないの~」
「ヒィ、何で私を巻き込むの!」
「配慮なの~!エルフの頭越しに外交をしないの~!」
これは、例えば中国が有事を起したとして、アメリカが条約を無視して戦わないで日本や韓国の頭越しに和平を結ぶのを防ぐ感じだ。
「ほお・・・」
骸骨先生は納得してくれたか?
「なるほどのう。で、何が目的じゃ?」
「質問なの~、魔族はワエキラエ王国を直接侵略しているの~」
骸骨なのにビクンと反応をした。
「していないな」
「なら、もし、直接侵略をしている魔族がいたら、ぬっころでいいの~?」
「・・・・・・・」
無言だ。
国内には少数の魔族、ダークエルフ、サキュバス族、それに、人魔大戦で人族に降伏した魔族がいる。
少なくても諜報活動を行っているな。
そして、隙を見て攻撃をしたい腹づもりか?
まあ、それが国だ。
骸骨先生はとぼけ始めた。
「フワ~、眠くなったのう~、質問はおしまいかね」
だから、エサをあげた。
「エルフランドを通せば、貿易を出来るの~!教義的に、魔族との取引にならないの~」
昔から細々と密貿易が行われてきたらしい。骸骨先生は驚いたのか。
ポト!
と骨の顎が落ちた。
「・・ムゴ、ムゴ、ほお、失礼、顎が落ちてしもうた。そうさのう。独り言じゃ、人族の技能集団が欲しいのう。インフラ関係の~、魔族領は魔石がタブついていてのう」
「メアリーも独り言なの~!もし、魔族の一集団が侵攻していて迎撃したら、報復に魔王軍が編成されたら怖くて眠れないの~」
「ほお、大丈夫だ。【王都】に侵攻をする部族はいないかのう。否決されたからのう【王都】にはな。間違って侵略している者がいて迎撃されても同情はしないかな」
王都?具体的な地名が出た。
王都にいるのか?
「悪い精霊持ちのネズミさんを放つ計画をされたら怖くてたまらないの~」
「ほお~、それは知らなんだ。しかし、魔王軍らしくないな。まるで人族のような手段じゃのう。回りくどい」
薄らと一部族が侵攻している事までは分かっているのか?主流派ではないな。
それに、
人族のよう?回りくどい作戦?
そう言えば、思い出した。回りくどい人・・・
☆回想
前世の時、あのカルチャースクールが集まっているビルに新たな教室が出来た。
「環境保護活動教室?!」
「あら、星苅さん」
「まあ、加藤さん」
少し苦手な近所の方だ。女性、確か独身?スーパーの精肉コーナーに勤めている方だ。
逃げようと思ったが手を捕まれた。
「あなたが噂の看板奥様ね!まさか、星苅さんだったなんてね。私の教室に来なさい!特別に無料で良いから・・」
男女数人いた。一目で分かるヤバさを感じた。何だろう。服に気を使っていない。服の色が薄くなっている。
「「「同志だ!」」」
「おめでとう。貴方は正義の側についたんだよ!」
オルグか?折伏か?
話を聞いて頭が痛くなった。話を聞くと加藤さんは積極的な菜食主義者、しかし、何故、スーパーの精肉コーナーに勤めているのではないか?と聞いたら生活のためだと言うのだろうな。
「今日は、ピロユキーノが菜食主義者を攻撃したロジックに反論します!」
「うわ~ん」
ネットの論難王に、ここで反論しても仕方ないだろう。
それから、活動に参加を要請された。
デモを起す?ウクライナ戦争を積極的に止めない日本政府に抗議をする?
肉食祭りに動物が屠殺される写真パネルを展示する?
余りに迂遠ではないか?活動が多岐にわたりすぎていてぼやけている。
人は肉食をしなくても生きていける?大豆を食べれば良い?大規模農業も自然を壊す原因ではないか?
失礼ながら、素人の意見よりも、大学で研究して発表してもらいたい。それが大きなビジネスになるのなら、各国の大学が縦断研究をするのだろう。
私ならそうする。
「さあ、正義の行いよ!署名して!」
「いやですーーー!」
と叫んだら、ドアが開いた。
ミリタリーの蘇我先生と太極拳教室の陳先生だ。
「このビルでは、政治的活動は禁止されているはずだが?」
「奥さん、いやーと言ったネ!離すネ!」
「爺さん。あっちに行け・・・あれ!あれれれ」
陳先生が軽く手をひねったら、体勢を崩した。
すると、信者たちは大げさに
「暴力だ!暴力だ!」
「け、警察よ!110番してぇーーー」
と叫びだした。
これは・・・私が原因で争いが起きた。艶っぽくないが、こんな想定を考えていなかった。
「奥さん。気にする必要は無いネ。帰るネ」
「そうは行きません。警察に証言します!」
警察官がやってきた。
「もしかして・・・陳先生?と蘇我先生?」
「おっと、私の経歴で優遇しないでくれ。格闘技マニアの警察官かな?ほら、私はあの現場をスマホで録画をしていた。現に犯罪が行われる危険性があったからだ。・・・見てごらん。陳先生に男の方から手をかけようとしている」
「本当だ!助かります」
二人は有名な方だったらしい。
その後、教室は無くなり。腹いせに家まで報復に来たが。
「ちょっと、こちらはね。アメリカの大学の論文を根拠にしているのよ。人は肉を食べなくても生きていけると書かれているわ!!」
「「「そうだ!そうだ!」」」
私は本物の自然派食品を扱っている知人に来てもらった。アレルギー持ちの方向けのお菓子とかを作っている。主婦になってから専門学校に通った方だ。
「その論文の捉え方間違っています。完璧菜食主義者メニューは、全年齢対象ではありません。それに、栄養管理士の指導の元、必要に応じて、卵、魚をとる事が推奨されています!私は全文読みましたわ!」
「・・・・・・・・・」
すると、スーと去って二度と来なくなった。このような輩は都合の悪いことを言われたら、途端に興味が無くなるものだ。ご近所トラブル講座で習った。
「有難うございます」
「いいえ。私達も迷惑を被っていましたから。同じと見られてね。お肉を控えなければいけない方のためのメニューも栄養士さんと相談して考案していますから・・」
何故か今それを思い出した。
相手は狂信的な小集団だ。
恐らく、王都に来ても目立たない種族、ダークエルフに違いない。
死霊使いか?
・・・・・・・・・・・・・・・・
骸骨先生に聞いて見た。
「骸骨先生、魔族にとって、強力な聖魔法使いは?」
「が、骸骨先生だと・・まあ、ええ、生きすぎて名前忘れてしもうたからの・・・・矛盾しているが、死霊使いにとっては欲しいくらいだな。死霊は一度発令したら、際限が効かなくなるからのう。論理的思考で分かるというものじゃよ。これ以上は話せないぞ!」
死んでいるのではないのか?
もしかして、狙いは私なのか?
メアリーは1日で正解に近づいた。
一方、大陸中央に位置する女神教の総本部に女神降臨と
託宣の内容の報告が届いたが・・・
☆☆☆女神教本部
「何だって・・・女神歴は女神様が地上に顕現されてからカウントされるから、こりゃ、女神歴が0年になるか?」
「いや、1年だろ・・・どうするのだよ。もう、暦は作ったぞ」
「まず。それが本当であるか調査団を派遣するべきだ!」
全く、迷走を重ねていた。
最後までお読み頂き有難うございました。