2 また、託宣がきたの~!
私は目を閉じた。
初めに浮かんでくるのは、前世、中2病だったときの記憶だ。
『私は堕天使かもしれない・・・』
と根拠もなく思い込み敵のキリスト教について調べて見た。
図書館に行って調べたら驚愕した。
旧約聖書に記されている天使は異形の姿だ。
四つの顔に四つの翼の天使や、燃え盛る多量の車輪に目がついただけの天使が登場する。あのアニメの使徒か?
堕天使ルシファーになってこいつらと戦うのは嫌だなと思い。
バタンと図鑑を閉じた。
堕天使ルートは諦めた。
天使は現れるときにこう言う。
『我を恐れるな』
異形の姿をしているからだろう。
超自然的な存在が天使や神だ。
あの女神は人の姿ではあるが、どこか不安にさせる。人族の守護神かもしれないが、全体を生かすために個人を平気で犠牲にする感じがした。
リストラばかりするCEOか?
思考は利己的遺伝子だろうな。
働き蟻は遺伝子を直接残せないが兄弟姉妹の世話をして生涯を終える・・・
だが、種全体では存続に役に立っている。
宗教が本来、良いものであると言うのは間違いかも知れない・・
時代と共に中和したのかも、それを考えたら、日本の葬式仏教は最高だ。
いや、よそう、今、庭にキャンディーストアのおっちゃんとロバート君がいるはずだ。
私はそっと目を開けた。
すると、
『キキ、こんにちわなんだな。僕はソングソングって言うんだな!』
目の前にゴブリンみたいな奴がいた。
また、目を閉じる。
開ける。
そしたら、ゴブリンの隣にエルフがいた。増えている!身長2メートルくらいの女だ。腰蓑を着け。胸はブラジャー無し乳房に葉っぱをつけて隠している。
乳房の形が分かる。非常にセクシーさんだ。
金髪だが、未接触部族を思い出される。
顔はどこかフィニスに似ている。
この異常事態を、近くにいるおっちゃんとロバート君は気がつかない。
「メアリー!」
「ヒン!ヒン!」(メアリー!メアリー!)
心配してくれるロバート君、可愛いな。
あれ?白昼夢。
ゴブリンはピョンピョン飛び跳ねながら話してきた。
「僕は人族、魔族諸部族の共通の祖なんだな。魔力が湧き出る沼地で歌って踊って楽しく暮らしていたんだな。皆、始めは同じなんだな」
ああ、そうかい。
エルフは腰に両手をあて、偉そうにのたまう。
「我はイニチィウム!皆、同じだが個性がある!だが、それが良い!」
だから何が言いたいんだよ!
今、それはどうでも良い・・・いや。これはDNAが見せている幻覚だ。
そう言えば、何故、エルフの始祖神が見えるのだ?お母様は30前でも10代に見える。
私は10歳だが、遅育ちとか言われていた。
年齢よりも幼く見える。この年齢で幼く見えるは致命的だ。お母様は大人になったら問題はないと言っていた。
何故、お母様はエルフ屋を知っていたのだろうか?お母様は言っていた。
『買食いはここでしなさい。エルフの料理は健康にだけは良いから』
『はいなの~!』
血が呼んだのか?
痴女エルフは答えるかのように言葉を続ける。
「フム、メアリーにエルフの因子が少し入っているぞ。だから、見えたのだ。感じたのだ」
陽気なゴブリン先生はとんでもない事を言う。三人称になっていやがる。
「ソングソングは、こう考えるんだな。いつも通りで良いんだな。失敗したら大勢死ぬだけなんだな」
人と魔族は永年争っていた。メアリーちゃんが責任を負うことはない。
少し、気が楽になったら。
プシュ~と二柱は消えていった。
「メアリー!」
「ヒヒ~ン?」(大丈夫か?)
「・・・もう、魔族は来ている可能性が高いの~。おっちゃん連絡は?」
「女神様降臨の報告は王城にしたぜ・・・後、王都にいるカゲに回報を回したぜ」
さあ、王城に行こうと思っていたら、奥からピエールが出てきた。
ヨレヨレだ。
「我輩を・・・連れて行け・・役に立つぞ」
「ピエールさん・・」
ピエールさんも一緒なので、おっちゃんが呼んだ馬車で向かう。
馬車の中でピエールさんは自分の気持を話す。
「我輩は女神教聖女派・・・我輩の信徒はいるが、皆、同じ事しか話さない。年々、過激化していく・・・我輩は限界を感じたのだ。弟子は我輩と同じ思考をする。会話をしようにも、まるで自分と話しているようだった・・・それを女神様がたしなめたのかもしれない・・考えが違う人と話す事によって啓示を授かる事があるのではないか・・」
こいつも苦労しているのか。地球で言えば、カルビン、ルター、それとも日蓮か?
城に着き。既に各国の大使が召還されていた。
大使達は半信半疑だったが。
「女神様降臨?信じられない」
「魔王軍襲来は間違いではないか?」
「我国の防衛網に少しも引っかかっていない。託宣じたいが誤り・・・な、なに?
こいつはピエールだ。見た事がある・・震えているぞ!」
皆、顔面蒼白なピエールさんを見て驚愕した。
このピエールさんは、大国の王を叱りつけたり。大軍の前に単身出てきて塞いだり。
何よりも、地上の女神様の代理人とされている法王を批判し続けているのだ。
主に免罪符を大金で売っている事を非難している。
そのピエール氏が恐れるなんて、と言う事らしい。
「馬鹿故に、恐れ知らずのピエールが?」
「迷惑ピエール、しかし、免罪符を批判している」
「狂信者ピエールは時々嘘を言うが、女神様降臨の嘘だけはつかないだろう」
ヒドい評価だな。
「「「ワエキラエ女王陛下会議を!」」」
会議室に皆を集め。女神降臨の詳細を話した。痴女エルフとゴブリン先生の事は話さない。
「託宣から魔王軍が来ていると思って考えるの。でも、慌てなくて良いの~、きっと、判明したら、『ああ~、その手があったか』と思える程度なの~!大使達は国に一報を入れるの~」
「「うむ」」
「分かった。この件に関しては協力しよう」
「女王陛下、何でも良いの~何か変わった事は?」
「そうじゃな・・・、ネズミが増えたと下水ギルドから報告があがったのう。
メアリーが浄化しているのに、おかしいとは思っておった」
それだ!
女神がネズミを成仏した。いや、成物か?どちらでも良い。ヒントをくれたのか?
ネズミを媒介として病気をばらまく作戦か?
・・・ペストか?
「薬草を集めるの~、ポーションを作る準備なの~!」
「「「分かった」」」
「治療ギルドのグレゴールしゃんに連絡なの~!不可解な病人がいないか聞くの~」
「「「了解!」」」
いつの間にか。メアリーが宰相のように指示をだしていた。
ここは軍事国家。
指示を出せる者が優先される。
宰相ゼブリはメアリーの下で動く事を決断した。
「これより準戦時下だ!陛下、メアリー殿を軍師に推挙いたします」
「分かった。グフタフをアカデミーから呼ぶのじゃ。一応、王国の女神教会に報告じゃ。聖女アマンダから聖都に報告がいくじゃろう」
「御意」
「して、メアリーよ・・・魔王軍はどこからやってくるか。検討は付くかのう」
「経路は分からないの。でも、ネズミを使って病気を振りまこうとしていると思うの~」
☆回想
ミリタリーの先生はこう言っていた。
「ノモンハン事変の時、日本軍の参謀は、ソ連軍は馬車で補給するものと考えていた。自分らがそうだと思っていたからだ。しかし、実際はトラックだった。だから大きく遅れを取っていた」
・・・・・・
実のところ。魔王軍は王都に来ていた。
軍と言うには正確ではない。
たった数人だった。
そして、目的はメアリーだった。
☆☆☆王都市中
ダークエルフの一団がいた。皆、ローブを羽織っている。
ダークエルフ、微妙な存在だ。魔族領に多くいるが、人族側にもいる。
主に、祈祷で生計を立てていた。
・・・インパール作戦の時、イギリス軍の空挺部隊が日本軍占領地域に出没した。
それを聞いた指揮官はイギリス軍が来れるのだから、我が軍ならいともたやすくいけるだろうと2週間分の食料だけを渡して行かせたわ。馬鹿よね。
魔王軍の大軍は人族の地に来にくい。ワエキラエ王国はエルフランドを挟んでいる。ガイア王国は山脈、ザルツ帝国は大河、でも、少数なら商隊に紛れて可能よ。
馬鹿な人族は少数では侵略されないと信じ切っているわ。
あら、偵察に出した部下が戻ってきたわ。
「カトウ様、武器軟膏の治療院はございますが、多くが閉鎖をしております」
「何だと、武器軟膏を紹介し。間違った治療法を広める作戦は失敗したか・・」
人族を殺すには武器はいらない。不潔な都市に病気持ちのネズミをばらまけば良い。
「しかし、この国の王都は馬糞が落ちていないな。ネズミの餌になるのにな」
まあ、良い。私はダークエルフの多恵・加藤、この地のダークエルフに転生をしたらしい。
瀕死のダークエルフに魂が乗り移った・・・
しかし、武器軟膏は失敗ではなかったわ!
広めている最中、『真の聖女メアリー』の情報を得た。
真の聖女、それは迫害される存在でもあるわ。
私の死霊術と合わせれば、この地を浄化が出来る。
人間の本性は悪、悪ならば取り除かなければならない。
私は前世、環境保護活動家だった。
熊殺しに抗議した。
企業はCO2を地球に振りまいて、人は星を食い散らかす害虫よ。
私は日本時代、同志と共に絵画にペンキをまいたり。コンサート会場に乱入もしたが効果なかった。
この異世界ではそうはいかないわ。
「カトウ様、あれがメアリーではないですか?・・・」
「よし、私が説得する」
親子連れか。子馬に乗っている。ローブを羽織っているわね。
情報からメアリーは転生者だ。だから日本語で話しかけた。
「(メアリーよ。共に魔族領に行き。人族殲滅作戦を行おう)」
幼女はキョトンとしているわね。
「???」
「まあ、ダークエルフの言葉かしら」
「ヒン?ヒヒン」?(誰?道を塞がないでくれる?)
「(魔族は良いぞ。1日数時間、採集をすれば暮らして行ける。だが、人族はどうだ?麦の奴隷になっている。動物を閉じ込め虐待をしている。
魔族領に行けば、精神的に豊かな生活が出来る)」
「・・・・」
「(作戦はこの大陸をゾンビだらけにして、人族を殲滅した後、メアリーの聖魔法で浄化するのだ。そしたら、この大陸は自然豊かな地に戻る)」
メアリーはすっとぼけているわね。
「申し訳ありません。言葉分からないです~」
なら、日本語を見せよう。私は素肌に悪滅と入れ墨を入れた。
悪滅隊と名付けようか。
バサッ!
ローブをはだけて、右胸の上を見せた。
私は水着のような衣服の上に革鎧を着ている。
これがダークエルフの標準的な衣服だ。
すると、連れの母親が叫びだした。
「キャー!痴女よ。マリアンネ、行きましょう」
「父が監視する。アリナはマリアンネを連れ逃げてくれ」
「貴方、見たいだけでしょう!」
ズレてない?そこじゃないでしょう。マリアンネ?
「カトウ様、他にもローブを羽織って子馬に乗っている幼女がおります!」
小癪な。カゲ武者か?こんなに多数、メアリーはカゲ武者を使う策略持ちか?
中流階級ではメアリーごっこが流行していた。
魔王軍死霊部族は混乱する。
地球の近代でも起こる錯誤の連続に陥った。
最後までお読み頂き有難うございました。