1 託宣がきたの~!
メアリーが10歳になった年。女神歴1000年だ。
王都上空に光球が現れる怪奇現象が世間を賑わせていた。
「な、何だ!また、現れた!」
「女神教会は声明を出したかしら」
「掲示板だと王国魔道師団も不明だって書いてあったぞ!」
「ヒン?ヒヒン」(何?あれ)
「ロバート君、大丈夫なの~」
ロバート君も動揺している。患者さんの家からロバート君に乗って帰路につく。
すると、現れやがった。UFOだ。
空を飛んでいる。不安に思う人や動物も多い。
「「「ミャー!ミャー!」」」
「「「ワン!ワン!ワン!」」」
「ヒィ、女神様からみすれられて悪が・・・湧き出てきたのよ!」
「「「女神様!女神様!」」」
最近の悩みだ。治療で宇宙の力を使うと光球が現れるように感じる。
しかも、青い光だ。女神様の光だっけ?
もしかして、メアリーが呼んじゃったか?
ベントレー!ベントレー!か?
いや、因果関係は分からない。
「行こう。ロバート君」
「ヒヒン」(おう)
治療院に帰ったら、来客がいた。
ルビアさんが対応してくれていたそうだ。
「メアリー様と問答をしたがっています。会わない方が宜しいかと・・屋台村で買食いをしてください。私がやり過ごしますわ」
「メアリーは幼女なの~。いいの。論戦して負けるの~」
「メアリー様!」
「おお、帰られたか?その方がメアリー殿か?」
会話を聞きつけローブをまとっている初老の男がやってきた。
痩せているが眼光が鋭い。
「我輩は隠者ピエールである!聖女山の開祖である!」
「メアリーなの~」
挨拶もそうそうに彼は問答を始めた。
「近年、女神様の託宣も無し。これは女神歴1000年問題に由来しているとしか思えない。更に怪奇現象が現れ民は動揺している。
真の聖女と言われているメアリー殿は救い無き世で如何に民を導く!如何に生きるかお答え願いたい!」
如何に生きるかって、宮田パヤオの映画か?
ああ、女神歴1000年問題が。1000年前、人魔大戦で女神と魔神が地上に現れ大戦が起きた。
それから1000年経過した。託宣はあるが女神様は地上に現れていないのだ。
1000年目で女神様の力が地上から完全に消えると風説が流れている。
地球の2000年問題か?こう言ったものは・・・
一神教の神がもし実在してこの世界に干渉出来るとしたら。
ラプラスの悪魔じゃない。
ラプラスの悪魔、全知全能の神がいたとしたらこの世の全てが予測出来るであろう・・とニュートンの時代の科学者は人工の神を想像した。
しかし、この世は予測不可能だった。
つまり、神と言うものが本当に存在したとしたら・・
ピカッ!
光球が庭に降りてきやがった。
「な、何だ!」
「ルビア、皆を避難させるの~!」
「はい、メアリー様も避難を・・・」
「いいの~!」
ピエールさんは、女神様の像を懐から取り出し叫ぶ。
「化生め!女神様よ。守られたまえ!」
ピカ!と光がはじけて、中から人が現れた。女だ。女・・・・
私は女に対面をした。
何かの魔物かもしれない。いや。もし、この世に干渉出来る神がいるとしたら。それは
化物だろう。
「量子障壁なの~!」
まあ、いわゆる結界だ。ミクロの世界では粒子が現れたり消えたりしている。
それをマクロの世界に出現させ応用した。
アインシュタイン先生ごめんなさいだ。
女は、白い貫頭衣を着ている。
服装に頓着しないのか?
髪は・・・縮れた黒髪が肩甲骨まで伸びている。目は深い青、顔立ちは・・不思議だ。オリエンタル風だ。
しかし、ナーロッパ白人、東洋人、アフリカ人・・・か?
まさか、全ての特徴を表している五毛人か?
アニメの獣フレンドリーのバックちゃんか?
「あら、まあ、やっぱり弱い力は操れるのね・・・」
女は結界を容易に突きつけてきた。良い子ビームも効かないだろうな。
ピエールは。
「魔性の女め!女神様の鉄槌を喰らうが良い!」
そう言って女神像を振りかざすが・・・・女は全く意に返さない。
「貴方がメアリーね」
「そうなの~、貴方も名乗るの~!」
「オホホホ、おチビちゃん。私が貴方方の言う女神よ」
「なの~!」
さすがに驚いた。
「何しに来たの~!」
「貴方方の言う託宣を授けに来ました」
・・・・・・・・
それから、しばらく、庭でお話をした。傍らにはピエールさんがいる。
何だ。託宣って、普通女神像の前で祈っている聖女様に託されるものではないのか?
「あら、それなら、簡単に偽造できるでしょう」
「そうなの~」
でも、それなら、今まで・・
「ええ、あったわ。都合の良い託宣を偽造して魔族を攻めたり。非人族国家を滅ぼした事あったわ。でも・・・貴方なら分かるわよね」
「神は人の個人の幸不幸にかかわらないからなの~?」
「ご名答よ。でもね。人族全体の守護神として、伝えなければならない事があったわ」
個人の幸不幸には関わらないが種族全体には関わるのか?まるでDNAか。
「何ですの?」
何故か。お嬢様言葉になった。
「フフフ、魔王軍が侵攻しているわ。貴方ならその意味が分かるわよね。迎撃しなさい」
魔王軍?それなら王国案件だろう。私一人でどうしろって言うの?
「もし、貴殿が女神様ならお答え下さい。私は30年、山に籠もったが、女神様の声を聞いたことがない・・・私の何が悪かったのですか?」
ピエールさんが女神様に問うが。
「メアリー、この世にある力って分かる?」
ピエールさんをガン無視だ。今日、会ったばかりのお爺さんだけど、可哀想なのと傲慢なこの女に腹が立った。少なくてもお前を慕っている信徒だろう。
「強い力と弱い力、雷魔法・・と・・・」
しまった。電磁力とかはこの世界では言い換える言語がない。
だから、日本語で話した。
「(強い力、弱い力、電磁力、重力・・・そして、物体や精神に干渉出来る魔法)」
強い力は物体を維持する力、まだ、地球でも未解明だ。
弱い力、原子力発電とかに応用されている。
女神は日本語分かるか?
「そうよ。もし、強い力を操る力を上げると言ったらどうしますか?」
ニコヤカに言いやがる。
だから、私は。
「いらないの~、答えたの~、その代りピエールさんの問いに答えるの~」
女神は、う~んと右の指を顎に手を当てながら答えた。
「そうね。私は人族の中にいる。全にして個でもあるわ。自分の中に答えはあるし、他の人族の中にも答えはあるわ。思索と他人との会話の中に私はいるわ」
ピエールさんはワナワナ震えている。
バタン!
腰を落とし。絶句している。
その時、ロバート君のいななきが聞こえた。
「ヒヒヒ~ン!ヒヒ~ン!」(メアリー!メアリー無事か?)
「来ちゃだめなの~!」
「あら、邪魔な子ね・・・」
女神はロバート君に手をかざしやがった。
何をする気か?
「やめるの~!」
私はロバート君の頭を手で押さえて、女神に背を向けてロバート君を庇う。
「ヒン?」(何?)
「成物!」
ピカッ!
手から光が・・・光線が出た。ヤバい奴だ。
だが、
「チュー!チュー・・・・」
ネズミに光を放ち。ネズミは粒子まで分解されていった。
何だ。ネズミに光線を放ったのか。
「私がこんな可愛い人族の友を成物させるわけないわ。貴方、ますますいいわ。ねえ。本当にあげるわ。強い力に興味ない?貴方なら惑星を壊さないわ」
「い、いらないの~!」
「あら、ますますいいわっ!皆に知らせなきゃ!」
手を組みキャキャ言いながら、飛び跳ねている。そして、光に変わり空に消えて行った。
ピエールは。
ガクガクブルブル震えていやがる。
「そ、そんな。女神様が・・・女神様は・・・慈悲深い方ではないのか・・いや、神はこうあるべきであると不遜に思った罰かもしれない・・」
仕方ない一瞬でアイデンディテーが消失したのだ。
治療院の患者にしよう。
「ルビアさん。このおっさんをお願いするの~」
「はい、メアリー様」
しかし、どこにも魔王軍襲来のニュースはない。
そもそも、魔族領と王国の間にはエルフランドがあって侵攻が分かるはずだ。
いや、自分の常識で考えるのは早計だ。
まず。メアリーは深い思索に入った。
つまり、瞑想状態だ。
信じられないことであるが、聖女メアリーにとって、初めて聖女の修行だった。
それほど、事態は深刻なのかも知れない。
最後までお読み頂き有難うございました。