表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/33

7 良い子勲章なの~!

「え、何だって!金貨をこんなに払うのに断るって!豪邸だぜ。大きな仕事だぜ!」


「バカ野郎!王都の大工は誰も受けねえ!メアリー様に迷惑をかけて!」

「「「そうだ!そうだ!」」」


「フン、後悔するなよ」


 とワシは捨て台詞を吐いた。

 ワシ、今、最も勢いのあるこのカルル・キース様が大工ギルドで豪邸建築を依頼したら、断りやがった。


 メェアリーの肖像画で大もうけをした有徳人だぜ!金は徳のある者に集まるのだ。


 キース一家が頭を使って儲けた金だ。

 愚人は汗水垂らして働いて、ワシらのような頭の良い者に利用されるのが仕事なのに。



 家に帰った。相変わらずに雨漏りがするみすぼらしい家だ。


「父ちゃん。大変だ!メェアリー教会が勝手に俺の肖像画を模写して商売を始めた!」


「な、何だって!」


 畜生、人の商売をパクりやがって。


「貴方、どうする?」


「う~む。ワシに良い考えがある。地方で肖像画を売ろう。引っ越しだ」



「貴方、暖かい所が良いわ」

「うん。俺もそう思う」


「そうだな。暖かい所で家を買おう。大もうけをしてな」


 地方に移住だ。王都で流行った物は時間差で流行出す。

 誰かが地方で売る前に売りだそう。

 すぐに印刷ギルドに行った。王都で肖像画を多量に刷るのだ。

 しかし、色よい返事はもらえない。しかも高くなっている。


「頼む。メェアリーの肖像画を刷ってくれ」

「ダメだな。今、王国から仕事が入っている。職人は大忙しだ」

「版木はある」

「王国案件は多色刷だ。手間がかかる。職人が足りない」

「なら、ほれ・・」

「まあ、良いだろう」


 賄賂をやって、メェアリーの肖像画を刷りまくってもらった。


 次に輸送を押さえるか?


 運送ギルドに行ったが、これも高い。



「今、王国から輸送を請け負っているから大忙しだよ」


「何だよ。では・・・これを・・」

「まあ、端っこにぶっ込むか」


 これも賄賂を渡した。





 ワシらは手押し車に荷物を積み。王国の南都に向かった。


 道中、ワイバーンを見かけた。ワシらの行く方角だ。


「父ちゃん。ワイバーンだよ」

「何か、運んでいるな。珍しいな。戦争か?」


 まあ、ワシの知ったことではない。戦争が始まったら、何かで儲けよう。

 今回、大分、金を使ってしまった。


 そして、港町の市場で、スペースを借りて商売を始めた。1番良い場所だ。


「いらっしゃい!王都で大人気の聖女メェアリー様だよ!!」

「飾っとけば病魔が退散するよ!」

「手描き希望者は俺までお願いします」



 ザワザワザワ~


 お、人が集まって来たな。


「主人、これいくらだ?」

「金貨一枚だ!王都で大人気の聖女様だ」


「はあ?たけー」

「それに、何か、微妙だな」


 フフフフ、人は高い物に価値を見いだすのだ。


「そうか、なら、帰った。ワシは価値の分かる者にしか売らん」


「・・・でもよ。メアリー様の肖像画は大銅貨一枚で売っているぞ」

「それも、鮮やかな色彩の物だ」

「それな。先週、王都から多量に入ったぜ。運送ギルドの知り合いが大もうけしたぜ」


「な、何だと!それは偽者だ!」


 何だ。王都の印刷ギルドと運送ギルドが大忙しだったのは、ワシの他に誰かが偽メアリーの肖像画の販売に目をつけたからか?

 ワシは商会に行った。薬剤ギルドだ。

 店の前に貼られていた。


 ‘‘メアリー軟膏の創始者、聖女メアリー様です’‘



「はあ?こいつ、偽者だ!おい、ギルマスを呼べ!」


「何だ。こいつ」


 ギルマスにワシは一生懸命に訴えた。


「ワシのメェアリーが本物の偽者だ!」


「お前、何を言っているのだ?」

「こちらは正当な軟膏のルートから仕入れたのだ」


「ヒドい!金儲けのためなら何をしても良いのか?!」


「はあ?この収益は、孤児院、救貧院、廃兵院に寄付されて、収益の3パーセントがメアリー様のペロペロキャンディー代になるって通達されている」


「嘘だー!全額懐に入れるつもりだ!そいつは偽者だ!金に汚い詐欺師だ!」


「ば~か、帳簿はうちらがつけて直接送るから確かだよ・・・と、うるさいからつまみ出せ!」



「「「はい、ギルマス!」」」


 ドンと石畳の道に放り出された。


 売り場に戻ったが、絵は売れていないどころか、市場長が来た。


「あのよ。場所代払ってくれない?」


「今はそれどころではない!」

「うっせー、1番良い所を陣取りやがって、大金くれるって言うから無理したんだぜ!」



 その時、声が聞こえた。

 拡声魔法だ。空からか?



【皆様、空をご覧下さい!欠損回復魔法のメアリー様です!メアリー様に祝福の光の舞をして頂きます!腰痛、肩こり。体調不良、若返りに効果があります!

 申し遅れました。私、エルフのリーザと申します。エルフが言っているから確かですわ!エルフ、嘘をつかない。つけない種族です!では、メアリー様!一言どうぞ!】


 何だ。市場の上空をワイバーンが三体飛んでいる。真ん中の一体がゴンドラを吊している。

 その中に、幼女とエルフの魔道師?エルフ、信用はある。何て奴だ。エルフの権威を利用しやがって、汚いな。実力で勝負しろよ!



【なの~!聖魔法なの~!私がメアリーなの~!】



 パラパラ~と青い光の粒子が落ちてきた。

 市場にいた者は次々に叫び出した。



「おおー!肩こりが治った!」

「キャアー、肌がツルツルになったわ!」

「髪が、髪が生えてきたのじゃー!」



 メアリーは聖魔法をかけながら笑みを浮かべた。腹黒い笑みだ。


 ・・・フフフフ、これぞ、メアリーインフレ作戦、資本主義アタックだ。

 何か、中小企業のアイデアを大企業が乗っ取る様に似て嫌だったが。

 相手は詐欺師だから良いだろう。


 SNSなら、公式の声明か?

 しかし、この作戦、嫌だな。メアリーが大人気になってしまう。もう、ひっそり暮らす事が出来なくなるのかも知れない。



【さて、皆様、提供は治療魔法ギルドでございます。さらに、下をご覧下さい。ポニー隊の登場です!悪を見抜く聖なるポニー!ロバート君が隊長です!】



 その空からの声で、子馬の群れが、迷うことなく、ワシの・・・売り場に突進してくる!


【ヒン!ヒヒ~~~~ン】(あれだ!兄弟姉妹達!)

「「「「ヒヒ~ン!」」」」(突撃!)


「や、やめろ~!馬は紙を食べないだろ!」

「嘘、なんで、ここに一直線!」

「商売の邪魔をするな。衛兵隊!」



 市場の者は、聖魔法の奇跡に目を奪われて、この一家に構う余裕はなかった。





 そして、メアリーは王国の主要都市を回り。


 王国から新たな勲章を授かる事になった。



 ☆☆☆王宮


「メアリー殿、良い子勲章を授ける!」

「はいなの~」



 うわ。熊さんの形の勲章だ・・・お、これは可愛いな。

 幼女勲章をもらったから、これで二つだ。


「さあ、メアリー様、良い子パレードですぞ!」


 と宰相に促されて、オープン馬車に乗った。王都を回る。



「「「「メアリー様!」」」

「まさか、良い子勲章をもらう子が詐欺をするわけはないな~」



 偽メアリー騒動は落ち着きを取り戻した。



「「「「メアリー様!」」」


 しかし、

 群衆の中に、グレーヌ伯爵夫妻がいた。


「メアリー、ワシだ。お父さんだよ!」


 メアリーに駆け寄り警備の兵に取り押さえられたが、メアリーは。


「良いの~、話だけは聞くの~」


 と近くに寄らせた。


「メアリー!我が子よ。戻って来てくれ。ドラゴンの糞を買い取ってくれた。また、助けてくれ!公爵家を出たのだろう?ワシの子に戻りたいからだよな!」

「そうよ。リリーの子だけど、特別に可愛がってあげるわ」


 口々に自分勝手な事を言うが、メアリーの心中は複雑であった。



 ・・・こいつが、現世の父か。そう言えば、こいつが、お母様を騙さなければ私は生まれなかった。伯爵夫人も浮気されたのだから、そりゃ、私に意地悪をする気もわからなくない。


 原罪か?わたしゃ、罪の子か?キリストか?いや、違うなメアリーちゃんだ。気分が沈むな。

 どうする。放っておいても、お母様に何かをする力もないはずだ。


 しかし、次の言葉で。


「そうだ。ミレーヌは廃嫡した。メアリーが総領娘だ」

「そうよ。伯爵家を富ませて!」


 メアリーは久しぶりに怒った。


「・・・兵隊さん!やっぱりいいの~、王国のパレードを妨害した罪で捕まえるの~」



「「「はい!」」」


「そんな!」

「メアリー、どうして!」



 このパレードは王国の年代記に公式に記された。

 一組の夫婦が乱入したとだけある。



 その後、メアリーは。


 汚水槽を浄化するバクテリアの捜索を土魔道師たちに依頼した。


 メアリーが死んでも続く都市の下水システムを作ろうとしたのだ。

 これは、メアリーの義兄、グリケル公爵家の次期当主、土魔道のスキルのあるディーターが担う事を快諾した。

 一方、メアリーは10歳になった。



 その誕生日に、グリケル公爵家の結婚式を執り行う事になる。

 メアリーの実母リリーとトムの結婚式だ。



「病めるときも健やかなる時も、トムはお母様を幸せにするの~!お母様を泣かせたら、チン蹴り100回を誓うかなの~!」



「まあ、メアリー様、いえ、メアリーちゃん。無体な事を言ってはいけないわ」

「いいえ!その覚悟です!」


「「「「アハハハハハハ」」」


「さあ、メアリー、今日はメアリーの誕生日でもある。皆で祝おう!」


「「「はい!」」」

「なの~!」



 使用人の結婚式ではあるが、公爵夫妻、イザベラ、ベッキー、学生、多くの者が集まったと云う。


 メアリーの改革は一言で言えば、道に落ちている馬糞の処理だ。都市衛生に尽きるが。

 後に王国は幼児の死亡率が下がり。結果として人的資源に恵まれることになる。

 まるで、蝶蝶が羽ばたいたら、竜巻が起きたようだとも評する人もいた。



最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
詐欺師へのざまあがぬるい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ