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6 良貨は悪貨を駆逐する作戦なの~!

「ウハハハハハハー金貨がこんなに」

「すごいわ。貴方」

「これも僕のおかげだね」



 カルル・キース。

 詐欺師一家である。普段は寸借詐欺をしていたが、メアリーの肖像画をメェアリーと偽って売ることを思い付き。大金を手にした。



「全く、笑える。メェアリー教団まで勝手に出来上がったぜ」

「あんた、これからどうする?」

「おう、もう頭打ちだ。この金で豪邸に住もう。これ以上は危ないぜ。詐欺は引き際が肝心だ」

「さすが、父ちゃん。もう、こんな雨漏りがする家はこりごりだ」



 しかし、この騒動の中で本物を見分けている人々もいた。





 ☆☆☆治療院


 治療院に怪我をした大工がギルマスと裏組織のフランクたちに連れられて訪問してきた。


ギルマスは怪我人に肩を貸しながら言う。

「メアリー様、ギブソンが怪我をしました。治療費をお支払いしますから、治して下さい」


「なの~、ここに来るまでに治療できたの~」


 足から血を流している。痛そうだ。打撲か?もしかして、骨にヒビが入っているかも知れない。


「ですから、メアリー様が王都広場で公開治療をすれば、皆は刮目をします。偽メアリー様騒動も落ち着くって寸法ですよ」


「会場は押さえています」


「なの~、もし、このためにワザと怪我をしたら、メアリー泣くの~」


「いえ、さすがに、それは大工の誇りに反しますからやっていません」


 そうか、最近、人が来なくて静かになって良かったと思ったが・・・・

 心配してくれる人がいる。



「ギブソンしゃん。とりあえず痛み止め魔法をするの~」


 ボア~


「有難いです」



 皆の親切を受け取って王都広場で公開治療を行おうとしたが先客がいやがった。





 ☆☆☆王城前広場


「皆様!聖女アマンダ様の奇跡の治療です。この車椅子の男性を治します」


「エイ!」

「あー、治った。立てる。立てる!さすが聖女アマンダ様だ」


 何だ。あれは、アマンダが公開治療をしている。

 怪しすぎだ。

 あの車椅子の男は・・・



 ザワザワザワ~


「あれ、冒険者のサムじゃねえ?」

「昨日、酒場で見たよ。仕事が入ったって言っていた。この事か」

「じゃあ、昨晩怪我をして車椅子に乗ったってことか?なんてありえねえ」



 群衆に見透かされている。


「やっぱり、やめるの~」

「そうですね・・・それがいいですね」


 ボア~


 とギブソンを手当した。



 さあ、どうするか?

 

放っておこう。分かる人に分かれば良い。


そう思っていたら、広場の隅で言い争いが聞こえた。


「メアリーはインチキだ!」

「そうだ。そうだ」


「メアリー様は素晴らしい方でぅす!目の付け所がちがいます。ロバート君のご主人です」

「我が娘マリアンネの言う通りです。道ばたではすっかり馬糞がなくなりました」

「そうですわ。メアリー様のおかげですわ」


と群衆達と家族連れが口論している。家族連れの中に幼女もいる。

ロバートを知っている?


「ヒン?ヒヒヒヒ~~ン!」(マリアンネ?メアリー行こうぜ!)


まあ、私を庇ってくれている人を見捨ててはいけない。群衆の前に、家族連れを背にして乱入した。



【メアリーの悪口はメアリーに言うの~!】

【ヒヒヒヒヒ~~~ン!】


ロバート君が前足をあげて、悪口を言っていた大人たちを威嚇した。

私はロバート君の前に出て、両手を腰に当てプンプンした。


「覚えていろよ!」


と捨て台詞を言ったが、お前らは誰だ?

私がお前らに何か迷惑をかけたか?

そうか、可愛すぎるのが悪いのか?


その後、ご家族から事情を聞いた。

マリアンネちゃん6歳が迷子になったときに、エルフのおっちゃんと散歩中のロバートが助けた?


父親が自己紹介をしてくれた。


「ローニ家でございます。王都の下水の管理しております」


「なの?」


そうか、汚水槽を聖魔法で浄化出来ないか?と前から思っていた。


なので、汚水槽を回らせてもらった。


「なの~!」


ビビビビビ~と汚水槽を浄化する。


「な、何と、水が綺麗になった・・」

「メアリー様、すごぉいです!」


おかしな話だ。浄化魔法は瘴気の浄化に使われるが、なら、汚水に使ってはダメな理由はないはずだが、


道行く人で、陰口をたたく者がいた。


「うわー、臭い!偽聖女とウンコ業者が仲良くしているぞ!」


「なの~!裏組織の方々、お願いなの~!これはしばいていいの~」


「「「よっしゃ!」」」


と悪口を言った10代の男を捕らえさせて、


「ヒィ、暴力聖女!」


住所を聞いて。


「反省するまでお前の家のウンコは回収しないようにするの~・・・」


と思ったが、やめた。これは、違う・・・民に良心はあるが愚かでもある。そういうものだ。



思い出した。ミリタリーの蘇我先生の言葉だ。


☆☆☆回想



「・・・デマから戦争が始まった事がある。米西戦争・・・19世紀に勃発した戦争だ。元々はキューバを植民地にしていたスペインと独立派の争いだったが、アメリカの新聞社が売り上げを伸すためにスペインが原住民を虐待していると誇張して報道し。結果、アメリカがスペインと戦う事になった・・・奇妙な戦争だ。

 近現代でも、ナイラ証言というものがある。湾岸戦争の時。15歳の少女がイラク兵の蛮行をアメリカの議会で証言をしたが、実はその少女は偽名で、アメリカのクウェート大使の娘で話はねつ造であった事がわかった・・」




・・・・・・・・


デマを放っておいたら大変な事になる場合もある。

私のせいではない。しかし、私を庇ってくれている人がいる。

その人達のために、わたしゃ。道化にでもなるよ。


誠実に謀略を実行する。




「フランクしゃん。この人は注意して解放するの~」

「よっしゃ、説教は得意じゃけえ。やらせてもらうぜ!」




なら、あの作戦、『本物の悪貨は偽者の悪貨を駆逐する』を実行しよう。


「メアリーは王宮に行くの~、皆様、有難うございましたなの~」


私は深々と頭を下げた。



ほぼ、同じ時刻、王宮でも会議が行われていた。


 


☆☆☆王宮


 執務室で行われた。

 ここにいるのは女王ミリンダ、王太子グフタフとイザベラ、ベッキー、ミレーヌ、宰相セブリの6人である。

 イザベラは既に婚約者の内定が決まっていたので、グフタフの隣にいる。



 女王は意見を求めた。


「この偽メアリー騒動をどう治める?」


 イザベラが発言をする。


「この騒動は皆様がメアリーちゃんを好きすぎるのが原因ですわ。なのに、メアリーちゃんは表に出てこない。

 メアリーちゃんを表に出せば良いのですわ」



 ミレーヌも負けじと発言する。


「メアリーを逮捕すれば良いのです!そして、法律を作ってメェアリーの肖像画を持っている者を逮捕して牢獄に送ればいいですわ!」



 ・・・ほお、イザベラは分かっている。

 宰相は、イザベラを王妃に、ミレーヌを側妃にしようと思っていたが、ミレーヌは感情に左右されている。

 それに、ベッキーが思いがけない成長をした。


 王佐の才だ。

 なら、ミレーヌは必要ないな。



「妾はイザベラの意見を採用するのう。ミレーヌよご苦労であった。

 これからは官僚の試験をうけるも商業に勤しむも領地経営に専念するもよし。好きにするが良い。妾は応援するぞ

 婚約者選定の儀はこれにて終わりにするぞ」



「そ、そんな」


「ベッキーお願いですわ」

「はい、イザベラ様、印刷所を押さえるのですね」

「では、私は王太子の名で全国の流通網を押さえよう」



メアリーは自分の可愛さ以外の自己評価は低く、本物の悪貨と自らを喩えたが。


イザベラはメアリーを良貨と喩えた。


「この作戦を『良貨は悪貨を駆逐する』作戦名にしますわ!皆様、如何ですか?」


「「「賛成!」」」

「ふむ。良いのう」


その時、ちょうど、メアリーが参内した。歴史の表舞台にメアリーは立つことになる。

この日から三日後、イザベラが正式に王太子の婚約者に指定された。












最後までお読み頂き有難うございました。

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