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4 公開治療なの~!

 ☆☆☆グレーヌ伯爵家


 メアリーの助言によりエルフの国の混乱は納まり。更に王国内で薬草が栽培された報はミレーヌにとっては青天の霹靂であった。



「何ですって!イザベラ様の軟膏の売り上げが落ちない・・・更に安い物が出回っているですって!」



 エルフの国からの薬草が途絶えないですって!しかも、王国内で栽培?

 メアリー軟膏と名をつけて大銅貨2枚で売っている。

 私の治療院には人が来るが、圧倒的だわ。


「ミレーヌよ。いっその事、治療院で使うのではなく、こちらも個人に売ろう」

「お父様、それはいけません。直接塗るとかぶれますわ」

「しかし、地竜の糞を10年間まとめ買いする契約をしてしまった」


「何ですって!」


 もう、後戻り出来ないわ。

 どうしたらいい?



 エルフの薬草が途絶えない情報にグレーヌ伯爵家は驚きを隠せない。


 しかし、メアリーの姉ミレーヌは攻勢に出た。


「まだ、大丈夫よ。ドラゴンバームはアカデミーに関心を持たれているわ!」


「しかし・・・すでに資金がない」


「大丈夫よ!私が王妃になったらあっという間に返って来ます。屋敷と領地を抵当に入れましょう」





 ミレーヌ陣営は困窮していたが。メアリーは追い打ちをかけるように公開治療を行った。






 ☆☆☆廃兵院



「グレゴール殿、笑止ですな。最も欠損回復魔法に近い貴方に招待状を送るとは、断らなかったのですか?相手は巷で噂の野良聖女メアリーですぞ」


「私は欠損回復の魔法から招待状を送られたのだ。行かないわけにはいかない。例え、偽者でもな」


 ここは廃兵院、重傷を負い社会復帰出来ない兵士が収容される最後の病院である。

 ここに多くの回復魔道師、学者が集められた。



 ・・・私は回復魔道ギルドのマスター、グレゴール、招待状を受け取った。

 ここで、公開治療を行うそうだ。しかも、欠損回復だ。


 そもそも、魔道は学問だ。回復魔法は患者の自己治癒力を増幅させる効果がある。


 私なら指の第2関節からの欠損なら回復可能だ。

 腕が取れた直後ならくっ付ける事も可能だ。


 そもそも、欠損回復は人智を超えたナニカが必要なのだ。

 そのために私は長年研鑽を積んできた。


 なのに、9歳の幼女が?


 しかし・・・この廃兵院、人が少ない。いや、患者がいない。

 まさか、治したのか?幼女の声だ。これがメアリーか?



 ザワザワザワ~


「みなしゃま、お待たせしましたの~、本日は足下が悪い中、ご足労を頂いて有難うなの~」



 聖女服を来た幼女と学生達、車椅子に乗った患者が登場した。患者は包帯がグルグル巻きだ。

 左手がボロボロで、右手が肘から先からない。顔は包帯で見えないくらい巻かれている。

 学生が車椅子を押している。自分では動かせないくらい重傷だ。



「これから、公開治療を行うの~!この方はドズ2等兵さんなの~、爆裂魔法を直近で受けて、庇った右手をなくされて、左手はボロボロなの~、目も負傷されたの~」



 包帯を取った。

 我ら回復魔道師は、患者の姿を見て動揺をする者はいないが、学者の中で目をそらしているを者がいる。軟弱者め。


 しかし、あの幼女と学生達は平常心だ。慣れているのか?


 幼女は両手を挙げて。


「なの~!」


 と叫んだ。


 すると。


「な、何だ。こんな強力な聖魔法は見た事がない!」

「聖魔法が患者の体を包んでいる」



 それからは涙目でよく見えなかった。魔道師失格だ。


 右手が肘から生え。左手は力を取り戻した。

 顔もみるみる元に戻っていく。




「治療は終わったの~、ドズ2等兵しゃんは医学の発展のために、最後まで治療を待ってくれたの~、敬意を表して欲しいの」


「「「ドズ殿、有難うございます」」」


 皆は、膝をつき礼をした。


「ドズしゃんは病室に戻って、リハビリを受けるの~」

「はい、メアリー様!」


 もう、車椅子から立っている。

 奇跡を目の当たりにしたのだ。


 私は思わず叫んだ。


「メアリー殿!質疑応答をお願いしたい!」

「はいなの~」




 内容は魔法の事から。



「あの、あ、私達の回復魔法は・・・間違いでしたか?私は、いくら研鑽を積んでも欠損回復をなしえません・・」

「間違いではないの~、自然治癒力を高める魔法なの~」


「聖女様の力の源は?あまりにも膨大な魔力を感じました。魔石も見当たりませんが・・・・」

宇宙そらなの~」


「聖女様は・・・もしかして、原子論をご存じですか?」

「知っているの~、でも、この先は観測魔道具が発展しなければいけないの~」



 メアリーの私生活まで多岐にわたった。


「メアリー様はおいくつ?」

「9歳なの~」


「婚約者はいますか?」

「いないの~」


「夜は何時に寝ますか?」

「21時なの~」



 そして、ミレーヌのドラゴンバームに話題がいった。


「グレーヌ伯爵家のドラゴンバームは実際どうなのでしょうか?あらゆる魔道師がドラゴンバームと負傷者の間に何らかの作用があるものと思いと観測していますが、魔力や力を観測していません」



 メアリーは、ニッキーがまとめた実験の資料を配った。騎士科学生が被検体になってくれた実験である。


「ニッキーお願いなの~」

「はい、こちらの資料をご覧下さい。アカデミー公認の資料です」



 資料を手にした学者たちは困惑を隠せない。



「これは、ドラゴンバーム以外にも効果あり・・・」

「ほぼ、ドラゴンバームと同じだ」



「そ、それでは、ドラゴンバームの治療法は間違いだと?」


 その問いにはメアリーは。


「・・・・・・・・・・」


 人差し指を口の前で立て、シィーの仕草をした。



 その意図をグレゴールだけが察した。



 なるほど、粗悪な薬をつけるよりは塗らない方が良い。

 ドラゴンの名を冠しているから思い込みで自然治癒力が高まる可能性がある。

 とグレゴールは判断した。


 つまり。


「メアリー殿、ドラゴンバームは軽傷者の大人が対象、老人、子供以外なら効果ありということですな」



「そーなの。ドラゴンバームは一部有効なの~、しかし、軽傷限定、老人と子供には使わない方が良いの~」


「なるほど・・後で私が皆に徹底しましょう」


「宜しくお願いするの~」


「あの最後に質問がございます」

「どうぞなの~」


「『なの~!』とはどのような意味の詠唱でございますか?」


 ・・・これか、学者は時に末尾些末な事にこだわる性質がある。

 何て、答えようか。ミクロの世界、『ナノ』テクノロジーとでもいうのだろうか?


「特に意味はないの~!」

「なるほど、かけ声のような物ですか。了解です」



 その後、メアリーは都市衛生の重要性を訴え協力を要請した。




 ・・・・・・・・・





 一方、ミレーヌは、メアリー軟膏の効果は疑いようがないので誹謗中傷を行った。




 ☆☆☆貴族学園アカデミー



「皆様!メアリーは王都で糞を集めていますわ。軟膏の材料はいったい何でしょうか?」



 ザワザワザワ~



「いや、この缶には材料が明記されているぞ」

「そうよ。高級品は輝いているわ」

「少しも変な匂いがしない」


「それよりも、ドラゴンバームの材料にドラゴンの素材が使われていると聞いたけど、どの部位が入っているんだ?ドラゴンの素材が多量に手に入る話は聞いたことがないぞ」


「それは・・・家門の秘密でございますわ!」

「最近、グレーヌ卿の屋敷は悪臭が漂っていると評判ですぞ」


 まさか、ドラゴンの糞を使っているとは言えない。

 特大ブーメランであった。


 返って疑心暗鬼が生じる結果になってしまった。





 ☆☆☆伯爵邸



 屋敷に戻ったミレーヌはいらだちを隠せない。


「何故、イザベラ様の軟膏は品薄にならないのよ!エルフの薬草が途絶える事がないなんて・・・」




 追い打ちをかけるようにとんでもない情報が入った。父からだ。


「お父様、何ですって!メアリーごときがドラゴンバームの有効性を訴えたですって!」


「そうだ。まだ、メアリーは、父である私に未練があるようだ。余ったドラゴンの糞を買ってくれたぞ。肥料ギルドの名でだ。メアリーは助けてくれたぞ」


「・・・おいくらかしら」


「一樽大銅貨一枚だ。輸送費を考えたら大赤字だが、これも損切りだ。そうだ。また、メアリーを迎えて、今度こそ義姉妹として仲良くしなくてはならないぞ」



 ・・・もう、ダメだわ。勝負は決したわ。お父様は目が曇っているわ。楽な方に考えている。現実逃避しているわ。


 ドラゴンバームは、大金貨3枚をはたいて買った魔道書から得た知識だったのに。

 作者の異世界人のタエ・カトウはインチキだったのかしら・・・

 ダークエルフの秘術と書かれていたわ・・・



 ミレーヌはガクンと膝を崩した。しかし、新たな報告がもたらされた。



「ミレーヌ様!新しい聖女が現れましたと評判です」


「はあ、どうせ、偽者でしょう・・・関係ないでしょう」


「いえ、病気が治るって評判の聖女様ですよ」


「名前は?」


「メェアリー様です」


「何、それ・・・」


 後年、いわゆる偽メアリーと呼ばれる事件であった。


 余りの人気にメアリー軟膏も売れなくなり勝負は一端お預けの形になった。






最後までお読み頂き有難うございました。

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