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3 悪ポニー、ロバート号の独言

 刻はメアリーがワイバーンに乗り王国中を飛び回る前に遡る。



「ヒン!ヒヒ~~~ン」(メアリー!つれないぜ!)

「お土産買ってくるの~!」




 ヒン、ヒヒン、そんな俺はメアリーの側近じゃなかったのかよ!

 俺はロバート、ポニー牧場で育った。




 ☆回想


 母上の言葉が思い浮かんでくるぜ。



「ヒン、ヒヒン、ヒヒン・・・」


 ・・・坊や、人族は速く走れないし、重い物を引けません。だから、私達馬族が助けてあげるのです。その見返りにお世話してもらっています。


 そして、人族は馬族が大好きです。

 馬の役割は多岐にわたるようになりました。私達ポニーはホスピタリティが役目の一族です。


 子供を乗せて速く走ってはいけませんよ。

 ゆっくりパカパカです。

 坊や、良いですね。


「母上、でも、俺は速く走りたいです!」


「待ちなさい!坊や!」


 パカ!パカ!パカ!



 皆、分かっていない。俺はこの体躯でも素早く走れる方法を身につけた。

 地面を掻き出すように前足を動かす。

 その前にこの牧場に来る子供達は外見で俺を敬遠する。



「うわ。あの子、ポニーなのに、目つきが鋭い」

「他の子にする?」



 お世話係は俺を選ばない。

 いや、選ばせない。

 乗せて俺が走ったら目を回す子なんて嫌だ。俺は眼力で拒む。


「ヒン」(フン)


 軟弱者め。


 また、来たか。


「メアリー、どの子にする?」

「お義父様、あの子に試乗したいの~」

「ロバート号ですね。おすすめは出来ませんが・・」

「大丈夫なの~、渋い子なの~」


 酔狂だな。軽薄そうな幼女が生意気に俺を指名する。

 良いだろう。



「なの~!」

「おい、ロバート!」


 俺は手綱をもっている世話係を振り切り走った。


 だが、


「なの~!速いの~」


 な、何?平気なのか?なら、もっと速く走っても大丈夫か?


「なの~原付よりも速いの~」

「ヒンン、ヒヒン」(捕まっていろ)


 俺は柵を跳び越え牧場の外を走った。


「なの~!すごいの~!こんなに速いのに全然ガタガタしないの~、気を使ってくれているの~」


 な、何、俺を分かってくれているのか?本望だぜ!


 数時間、俺は柵に戻った。この子とずっといたいが、親に返さなければならない。



 もう、後悔はない。

 お世話係は謝罪する。


「申し訳ございません!こいつは、もう、処【この子と暮らしたいの~】」

「お義父様、良いでしょうなの~」

「ああ、メアリーが気に入るのならそれが1番だ。贈らせてもらうよ」


 え、俺を引き取ってくれるのか?


「なの~、メアリーなの~、ロバート君よろしくなの~」

「ヒヒン、ヒヒ~ン」(ああ、こちらこそ宜しく頼むぜ)





 ・・・・・・・・・・・・・・・




 なのに、ワイバーンに乗り換えやがった。

 少し速い動物が出たら乗り換えるなんて。


 ふて寝していたら、おっさんに声をかけられた。



「おい、ロバート、散歩行くか?」


 エルフの亭主と?

「メアリーが留守だからな。頼まれた。さあ、ウンチ袋をつけるぞ」


 まあ、いいか。


 ウンチ袋、俺のお尻につけるバックだ。ウンコをしたら回収される物だ。

 メアリーが考案したらしい。



 パカ、パカ、パカ。


 街を歩くと、甲高い声が聞こえた。



「ワーン、ワーン」


 子供が泣いている。メアリーよりも年下か?

 仕方ない。行くか。



「ヒン?」(どうした?)

「うわ。お馬さん?とエルフ?」

「君、どうしたの?」



 迷子らしい。家は王都の南だ。結構あるな。


「おい、ロバート、この子、乗せてやりな」

「ヒン」(でもよ)


 俺はメアリーの専属だ。

 しかし・・・・乗り換えたのはメアリーだ。


 俺は迷子を乗せて、おっさんとこの子の家まで行った。近づくにつれこの子は道を覚えていた。



「お母様!」

「まあ、マリアンネ、心配したのよ!」

「ウワーン」



 どうやら、親と大通りにいったら、大道芸人の後を追いかけて迷子になったらしい。



「エルフさんとお馬さん有難うございます。お礼をしたいです」

「いや、なら、ロバートに人参でもやってくれ」

「はい、ケリー、台所からお野菜を籠ごと持って来て」

「はい、奥様」


「ロバート君、有難う」

「ヒン、ヒヒン、ヒン、ヒヒ~ン」(別に、お前のためにやったんじゃない)



 籠いっぱいの人参、野菜をもらった。


 まあ、子供を乗せて歩くのも悪くない・・・



 俺はそれから近所の子と遊ぶようになった。


 メアリーは時々帰ってくる。

 まるでメアリーに当てつけるように遊んだ。


「うわ~、楽しい」

「人参食べる?」

「ヒン、ヒヒン」


 しかし、メアリーは忙しそうだ。俺を一瞥してまたどこかに行く。



 もう、いいんだ。俺はここで生きて行く・・・子供と遊ぶのも悪くない。

 帰って来ても知らないふりをしてやる。



「おい、ロバート、メアリーが帰ってきたぞ。もう、用は済んだみたいだ」


「ヒン!」(なに?)


 ビクン!と体が震えた。



「ヒンーーーー!」(メアリーーーー!)


 パカ!パカ!と行きたいが馬小屋だ。メアリーが来るのを足踏みしながら待つ。


「ロバート君、お待たせしたの~、お土産なの~」

「ヒンヒン」(何?何?)


「お馬さん用のスカーフなの~」


 青色のスカーフを首に巻いてくれた。鏡を見せられた。


「どうなの~?」

「ブフ、ヒン」(いいじゃないか?)



 それから、俺はメアリーの側近に戻った。

 メアリーはこのウンチ袋を奨めに商会に行く。ここは荷馬車をよく使う商会だ。




 ☆商会


「お願いなの~、お馬さんにウンチ袋をつけて欲しいの~。これから法令が出来るの~」


「ええ、聖女様、でもお高いのでしょう?」

「貧民達の自立支援で作ってもらったの~、でも、自分で作っても良いの~、これからはウンチの垂れ流しが法令で禁止になるの~、子供達のためなの~」

「子供か・・・そういや、俺の最初の子も6歳で亡くなった・・」

「生ウンチは悪い精霊がいるの~街にあふれたら大変なの~」

「分かった。子供は弱い存在だから守らなきゃな」



 そして、俺がモデルになって街を歩く。


「ブホホホーー!」(ダセーお尻だな!)


 ロバに絡まれた。


「ロバート君はかっこよいの~」


 メアリーはナデナデしてくれた。

 すると、馬車が止り雌馬が声をかけて来た。



「おい、ヒンメル!どうした?何だ。聖女様が乗っているポニーに興味があるのか?」



「ヒヒヒヒ~ン」(そこのスカーフがかっこいいお兄さん)

「ヒン?」(俺の事か?)


 それ、最近、馬界で話題のウンチ袋でしょう?ご主人に奨めてくれないかしら。

 あたし、ウンチをお嬢様にかけてしまって、それから怖がらせてしまってね。

 申し訳なくてね。



 俺はメアリーを見て、ヒンヒン言った。


「分かったの~」

「ヒン、ヒン」(頼むぜ)


「御者さん相談なの~」

「な、一体、馬は何を言っているのだ」


 メアリーが説明している間、雌馬は頭を俺の頭にすり寄せて無言で感謝の意を表してくれた。


「・・・・・」(ありがとう)

「ヒン、ヒヒヒ~ン」(まあ、どういたしまして)


「ブフォーーー」(何故だーーー)


 ロバが地団駄を踏んでいやがる。


 やがて、馬界で人気のファッションリーダー的な存在のヒンメルがつけたことで、王都中の馬たちがお世話係がウンチ袋をつける事を嫌がらないようになったぜ。


「ロバート君のおかげなの~」

「ヒン、ヒヒン・・・」(まあ、別に・・・)



 一方、王国の正聖女アマンダはこれを軽視した。いや、都市衛生の重要性を理解出来なかった。






 ☆☆☆ワエキラエ王国女神教会本部


「プ~、クスクスクス、聖女が糞袋を売っている!これも聖王国に報告しなさい」

「はい、アマンダ様」


 これで、人気は落ちるわね。

 そうだわ。私は綺麗なドレスを着て街中をパレードすれば人気は取り戻せるわ。


 アマンダは豪勢な聖女服に身を包み豪華な装飾品で飾り。

 6頭立のオープン馬車でワザとらしく王都の大通を通り民衆に手をふったが。


 民衆達には。


 ガヤガヤガヤ~


「何だ。あれは、贅沢だな」

「メアリー様はポニーで移動しているのに」

「それよりも儀式しなさいよね」



 不評だった。



 当然、アマンダはその不評の理由が分からなかった。

 高級な部屋着に身を包み高級なワインをビンからラッパ飲みしながら部下に問うた。


「な、何故よ!ヒック」



『それだよ!その贅沢な生活だよ』と側近達は口には出さなかった。



最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
「生ウンチは悪い精霊がいるの~」で「菌が寄生虫が~」と説明するより、「精霊が~」と納得しやすい言葉遣いが大事ですよね。自分もそうありたいと思います。
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