2 セーフティなメアリーちゃんなの~
☆☆☆グレーヌ伯爵家中庭
100近くの樽が中庭におかれていた。
皆、鼻にハンカチを当て、鼻を塞ぐ。
この樽の中にドラゴンバームの材料が入っていた。
「ミレーヌ様、ドラゴンバームの材料が届きましたが、とても臭いです。これは何ですか?」
「クソよ・・南方の地竜のドラゴンの糞を乾燥させたものよ」
「これを軟膏の材料にして大丈夫・・・ですか?」
「大丈夫よ。貴方に説明をしても分からないわね。でも実験の結果、効果変わらずよ・・」
先生の話だと、ドラゴンの糞でもドラゴンのイデアは観測されたわ。
ドラゴンの再生力の本質を神聖力として発揮出来るわ。
それに、イザベラ様のエルフ軟膏は本質的な弱点があるわ。
エルフの薬草は多量生産出来ないわ。
それに、あの国は実力以上に他国から関心を持たれている。混乱が生じるわね。
「これから、イザベラ様の薬草は失速します。その間にドラゴンバームを多量生産し、治療院で使いますわ!市場を席巻しますわ!」
「「「はい!」」」
このミレーヌの読みは当たっていた。
薬草は1年に2度ほどしか生えず。しかも、エルフの森の霊気を浴びなければ効果の高い薬草は生えなかったからだ。
エルフ軟膏品薄の報を聞いて。
この日、メアリーは久しぶりにグリケル公爵家に戻った。
この問題を協議するためにエルフの女王フィニスが公爵邸に滞在していたからだ。
☆☆☆グリケル公爵家
「メアリーちゃん!」
「メアリー様!」
「なの~」
ガシ!とイザベル様とベッキーに抱きつかれたぜ。お姉さん泣かせの罪な幼女だ。
「グスン、グスン、ヒドいのです。黙って出て行くのなんて・・」
「仕方ないの~、ベッキー、この件が終わったら、公爵様と約束したの~、ベッキーは学校に行けるの~、頑張るの~」
「修行の場を提供する約束を覚えていてくれたのですね。嬉しいのです」
私が出て行ったのは、イザベラ様とベッキーを成長させるためもある。
傲慢だな。幼女なのに。
しかし、私の中味は大人だ。許して欲しい。
挨拶もそうそうに、エルフの女王フィニスと再会した。
エルフランドは我国と交易を開始して鎖国を解いた。
そしたら、国は大混乱に陥っているらしい。
女王はやや憔悴している。そりゃ、山奥で暮らしていていきなり鎖国を解いたから、人族国家から興味津々状態だ。
「お久しぶりなの~!」
「メ、メアリーか?我が与えたものは・・・もっと、こじんまりしたものだったぞ。何か背中に星々が見える・・・古代文献にあった宇宙か?」
「コスモスが爆発じゃーないの~、今は、それはいいの~、報告するの~!ホウレンソウなの~!」
話を聞いた。
貨幣経済が浸透し、物価が高騰、他国からは決済貨幣の代りとして薬草が求められているそうだ。
だから、我国に回す分の薬草が更に品薄になっているとな?
「おかしいの。エルフの国にも貨幣があるの~」
「そうじゃ、立派な貨幣があるが、外国は見向きもしないのだ!」
フィニスはエルフランドの貨幣を見せてくれたが・・
「なんなの~これは~なの~?」
「これが、1番高い1万エルフの鉄貨、次に、1千エルフの石貨、次に、1エルフの葉の貨幣だ。葉の大きさで貨幣の価値が変わるぞ」
「やる気あるかなのー!」
「何だと!」
見せてもらったのは鉄、石、何かの葉っぱだ。
同族同士で使ううちならこれで大丈夫だろう。
この貨幣は他国の貨幣と為替は不可能だ。
だから、薬草で決済するようになったと・・・。
どうすれば良いか。
エルフの国は薬草と言う資源だけある発展途上国と見ればいいか。
通貨スワップか?
いや、これは・・・・
☆☆☆回想
会社員時代、アフリカの話になった時があった。
私の日本時代、アフリカは中国の影響力が強いと思ったが、ちょくちょくフランスの話が出てくる。
「グループ長、何故ですか?フランスは言っては悪いけど、大国と言うにはそれほど・・」
「そうか、知らないのか?CFAフランの問題がある」
フランスの旧植民地諸国、西アフリカの国々には実質的に自国通貨発行権が未だにない状態だ。
植民地独立当初、フランスの後押しでアフリカに作った中央銀行でCFAフランという通貨を発行したものだ。
フランとは固定為替相場で、現在はユーロと固定為替相場で交換されている。
相場はユーロと比べて高く設定されていて、この場合、加盟アフリカ諸国が輸出するには不利で、ユーロ圏からの輸入しやすくなっている。
つまり、円高だな。
CAFフラン発行の代償に加盟国は自国の外貨準備高の50パーセントをフランスの国庫に預けなければならない決まりがある。
「何ですか?それは・・・メリットはないじゃないですか?」
そうでもない。フランスの後押しと管理があるから、ジンバブエみたいな通貨危機は起きにくい。
なにより。独立当初は必要だった。新興国の通貨は信用が低い。
政変の多い諸国だ。例え、クーデターが起きても、CFAフランの価値はそのままだ。
市民は安心出来るメリットもある。
しかし、自国で経済政策が出来にくい。経済政策もフランス人も役員を務めている西アフリカ中央中央銀行や中部アフリカ諸国中央銀行の全会一致の採決が必要になる。
「帝国主義の延長と批判もされているから、最近は変わる動きがあるからな・・・そしたら日本のインフラがどれだけ参入出来るかだ」
・・・・・・・・・・・・・・・
そうだ。エルフの国の人口は1000人くらいだ。
ワエキラエ王国がエルフランドの通貨を発行し。そのうち、負担にならない外貨準備高を預けてもらって、経済政策の担保とする。
これをフェニス女王にかいつまんで話した。
薬草が国外に流出するのを防げるだろう。
それと。
私は提案した。
「王国内で薬草を栽培したいの~」
「はあ?それじゃ、効果は薄れるぞ!それに門外不出だ!」
「ロイヤリティ払うの~!薬草の廉価版が欲しいの~!」
「ろいやりてぃ?何じゃ」
「利息みたいなものなの~」
エルフの国の薬草は高級ポーションに使い。
それ以外の安い傷薬用は自国で作る。
国内で作れば・・・計算したら、一缶、大銅貨一枚で作れそうだ。
儲けを入れて、大銅貨2枚で販売だ。
国内で薬草が育ちそうな深山は。
そうだ。学園があるじゃないか?全国の子弟子女が集まっている。
学園に行った。
「「「メアリー先生!お久しぶりです!」」」
皆に頼み。早急に薬草を育ててもらう。いや、ダメだ。
話だけを通してもらって。
私が直接行こう。
空飛べないか?
浮力を聖魔法で生み出せないか?
「なの~!」
ボア~
「「「メアリー様!」」」
「こんなに強力に聖魔法があふれて・・」
空は飛べなかった。
ベッキーが王国にワイバーン君を借りる手続きをしてくれていた。
ロバート君はお留守番だ。
「ヒン!ヒヒ~~~ン」(メアリー!つれないぜ!)
「お土産買ってくるの~!」
ワイバーンで王国中を回り。渓谷のある領主に話を通して綺麗な水で薬草を栽培する。
「なの~!」
ボア~!
地面に肥料をまいて、聖魔法で成長を促進する。
「ここは育ちそうなの~!」
王家の直轄地、中部の山岳地帯、ヘレン、マーリエの領地、グリケル公爵の領地でも栽培が確認出来た。
そこで育てた薬草を早急に持ち帰って、廉価版を生産した。
気がついたら・・・
☆☆☆孤児院
孤児院に多量にお試しで配った。気に入ったら買ってもらう。
中庭で子供達が遊んでいた。それをこっそり門の影に隠れて観察する。
子供ってすぐに転ぶからな。
お、あの子、転びそうだ。
ドタン!
「うわ。転んだ!」
「ヒィ、血が出ているよ。早く、ドラゴンバームの治療院に行かなきゃ。あそこは割引されているよ!」
子供達の喧噪を聞きつけて、シスターが平たい缶をもって現れた。あれはエルフ軟膏か?
「まあ、サム君、水で洗うから大丈夫よ。今、メアリー軟膏を塗って差し上げますわ」
「うわ。染みる!でも、何か効く感じがする」
メアリーが王国で作った廉価版の軟膏は庶民が多く買うようになり。
孤児院でも使える値段になった。
その様子を見て。メアリー感慨にふける。
これで転んだら破傷風で死ぬ児童は激減するだろう。
さて、メアリーは静かに去るか・・・
つもりだったが。子供達の声が耳に届いた。
「メアリー軟膏半端ないよ!もう、血が止った」
「さすが、メアリーだぜ!」
「あれ、何か、名前がメアリー軟膏になっているの~」
何故だ!?
グリケル公爵はメアリーの功績大として、エルフ軟膏をメアリー軟膏に名を変えて売り出した。
メアリーの活躍は知る人は知る事になる。
最後までお読み頂き有難うございました。