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3 メアリーは幼女なの~

 刻は少し遡る。メアリーがエルフの国に行く決断をした数週間前。

 大公邸にミレーヌが訪問をしていた。

 



 私は臣籍降下してネブルク大公家を興す事を許されたフリッツだ。


 このワエキラエ王国の国史によると、

 6人の王子と7人の王女がいた。

 亡国ファモール王国からミリンダ姫が連れて来られた。


 あまりに聡明だったので、第6王子妃候補だったが王太子の婚約者に全員一同で推奨された。


 王太子以外の王子王女のうち長女は慈愛に目覚め修道院で民の平和を祈る道を選んだ。他は病死、他国へ留学、臣籍に降下した。


 とある。



 しかし、当然この歴史は違う。

 ミリンダは虐められていたのだ。




 ☆☆☆35年前王宮


 私の姉上、第1王女アマンダは傲慢を絵に描いたような女だった。


 いつもミリンダを虐めていた。

 ミリンダは小国ファモール王国の出身の王女、しかも我が国に攻められ併合された。

 後ろ盾はないに等しい。


 ミリンダと呼ばずにブスと呼んでいた。よほど気に入った使用人以外は蔑称で呼んでいた。



「ブス、馬鹿踊りをしなさい」


 ブスと呼ばれたミリンダは何の躊躇無くがに股で滑稽な踊りと歌を披露した。


「はい、アマンダ様、あ~、太陽が西から昇り♩川が海から流れ♩魚が空を飛ぶ♩~」



「「「「ギャハハハハハハハハハハ!」」」

「まあ、そんな事あり得ないのにブスは本当に馬鹿ね」



 アマンダ姉様は気がついていないのか?

 これは・・・・


「平民が社交界を開き♩街娘がドレスで着飾る~♩・・・」



 下剋上の詩だ・・・・



「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」


「いいわ。土下座をしなさい。それで許してあげるわ」



「分かりましたわ。それで許してくれるのなら」


 何の躊躇もなく土下座をした。



「これに懲りたら使用人を教育しなさい。馬面メイドに用事を言いつけたら・・・」


【申し訳ございませんでした!】


「声大きいわね!」


 使用人の悪口を大声の謝罪で遮った。



 ・・・・・・・・・・・




「・・・お嬢様、申し訳ございません。ですが、私の事を名前で呼ばずに『馬面』と呼ぶもので・・・つい、不機嫌な態度が出てしまいました」


「フフフ、いくらでも言わせなさい。貴方が貴重な人材なのは変わりないわ」

「お嬢様・・・グスン」



 今の宰相ゼムリは地方の倉庫番だったと聞く。この時から人材発掘には貪欲だった。


 当時ミリンダは12歳、美人ではない。だから誰の食指にもかからなかった。


 これはかなわない。私は第5王子の地位を辞し。王宮を去った。


 そして、そのミリンダになりたいと言う令嬢が今目の前にいる。


 ミレーヌだ。




 ☆☆☆ネブルク大公家応接室



「私はこの薬と治療法でミリンダ女王陛下のようにこの国を富ませる自信がありますわ。同盟を組みませんか?」


 私は即答した。


「ご期待に添えなくて申し訳ございません」


「まあ、何故ですの」



「無才につき領地経営で手一杯です」



 ミレーヌが去ると横で聞いていた子供達が口々に不満を言う。



「何故ですか?父上、良い話ではないですか?」

「そうですわ。ソシリアが・・・処刑されて我家の立ち位置が・・」



「お前達、仮にその話が本当だったとしても、他人が持って来た良い話に乗るのは悪手だ。生存を他者に預ける事になる。それに・・・」



 我がネブルク大公家の立ち位置は凡人の王だ。


 私だって、王権に興味がある。

 時局に乗り王位は転がり込むものだ。

 この方法でしか王位に付くことは出来ないだろう。



「我がネブルク大公家が王位につくときは各勢力の調整の王だ。それしかあるまい」



「父上、それは消極的ではございませんか?」

「そうですわ・・・イザベラ様の形勢は不利と聞きます」


「だとしてもだ。ミレーヌは自分を善人と思っている悪人だ。だから歯止めが効かない。いずれ失脚するであろう」


 そして、意外な事に粛清を行ったミリンダは自分を悪人と思っている善人なのだ。


 今は耐え忍べ。



 子供たちは凡人だ。それで良い。



 私は学園に行く。


 あのメアリーという幼女をこの目で見るためだ。

 グリケム公爵家の参謀の立ち位置らしい。

 どうせ口達者な幼女だろう。




 ☆☆☆貴族学園中庭


 ザワザワザワ~~


 人だかりだ。あの幼女はここで奇妙な体操を広めていると聞くが。



「ヒンズーロープなの~~!」


 な、何だ。幼女が長い棒か。それを地面に垂直に立て令嬢3人に支えて登っている。

 地上から二メートルくらいの所にいる。



「フガー!」


 威嚇しているのか?


「卑怯ですわ!」

「それに、ロープじゃなくて棒ですわ!」


「そこじゃないの~!」


「「「ヒィ」」」

「聞こえるように悪口言う奴はメアリーが勝負を受けるの~~!」


「逃げ、いえ、ミレーヌ様に報告よ!」

「「「はい」」」


 令嬢たちはスカートの裾を少しあげて、足早に去った。



 近くの生徒に聞いた。


「あれは一体」

「メアリー先生、自分のクラブを笑っていた令嬢を威嚇しています。ミレーヌ様の派閥です。最近、激化していますね」



 何だ。派閥争いの俗物か・・・



 興味が無くなった。ネブルク大公家は嵐が去るのを待つのみ。

 共倒れをしたら、王位が転がってくるかもしれない。


 我が代でかなわないのなら子息、その孫だ。




 しばらくして、トンデモない報を聞く。

 アマンダ姉様が追放された修道院から出てきたのだ。

 学園に行きメアリーに会うらしい。


 彼女は一応、聖女の称号を持っている。

 これは何か起きるぞ。



「見に行く・・・」


 学園に着くと

 ちょうど、アマンダとメアリーが対峙している現場に遭遇をした。



「土下座しなさい!」


「民のためにもなるの~、お願いしますの~」


「いいわ。土下座しなさい。ここで土下座をすれば考えてあげてもよいわよ」


「分かったの~、土下座をするから協力をお願いしますなの~」


 幼女とミリンダが重なった。

 そう言えば、ミリンダは使用人の粗相を庇って土下座をした。

 民のため?口だけか?いや、口だけでも出来まい。

 大望のある者なのか?



 勝手に体が動いた。

 幼女の手を取り土下座をやめさせた。




「グリケル公爵家のことも考えなさい。家門の名を背負っているのですぞ。それに、この方は名誉聖女ですよ。ねえ、アマンダお姉様」


「フリッツ、貴方何故??」


「ハニャ?」



 私は幼女に機密を教えた。アマンダ姉様は聖魔法をあまり使えない。

 冒険者の野良聖女よりも下であろう。


「彼女の聖魔法は冒険者の野良聖女以下です。前々の王の王女です。今上の陛下に修道院に追放された方です。実験は出来ません」



「「「「メアリー様!」」」



 そうか、王権は遠のいたか。

 王権とは一代で手に入れるものか。



 その後、情報を集めた。


 ミレーヌの治療法を怪しいと思う賢者や、薬剤ギルド、貴族を吸収し対抗しよう。

 と思い立ち。


 グリケル公爵家を訪ねたら。


 エルフの国に行き薬草の交易をすると言う。

 その計画の中心はやはりメアリーだ。



 公爵と対談をした。

「珍しいですな・・どこの派閥にも属さないと思っておりました」

「ええ、考えを改めました。悪人と思っている善人に協力しようと、善人にも悪人にもなれない者の定めです」


「分かりました。協力体制を取りましょう」


「ところでご養女メアリー嬢は?」

「庭です。メイドと遊んでいます」


「はい?」



 庭を窓から見ると。



「なの~、蝶蝶さん待て~なの~~~!」

「メアリー様、足下を気つけて欲しいのです」

「はいなの~」



 蝶蝶を追いかけているメアリーがいた・・・・


 王権とは奥が深いのか。

 それとも間違ってしまったのか?


 普通、ここは作戦室で策を練るだろう。




 ・・・・・・・・・・・・・




 ☆☆☆メアリー回想



 私は陳先生から、武術の闇を聞いた。



 太極拳教室、人が集まってきた。

 陳先生は大喜びだ。


 主婦、学生が中心だ。

 でも10名いないな。


 あるとき、一人の学生が質問をした。

 気弱そうな中学生の男子だ。



「先生、気功で吹き飛ばす術を教えて欲しいです」


「あいやー、それ、種明かしがあるネ」


 それは、パフォーマンスの前に催眠術や暗示を掛けるそうだ。

 それから、気で吹き飛ばすパフォーマンスをする。


「テレビも悪いネ、その催眠の時は撮さないネ、あれはパフォーマンスよ。信じたい人ほどかかるネ」



「う、嘘だ!」


 生徒はそのまま去った。


「困るネ、一定数、神秘な体験をしたい人がいるからこのインチキ商売成り立っているネ、

 さあ、再開ね。丹田から気がらせん状に出ていく感じネ」


 私は思わず聞いた。


「先生が言われている気とは一体?」


「説明の道具ネ、学問や武術、医術に使われたネ、気は便利な言葉ネ・・・」



 何でも、まだ、中国拳法が神秘の武術だったとき。中国拳法の本が翻訳された。

 日本の好事家たちは、気が書かれているので大いに期待したが。


 翻訳した内容は、逆突き(ストレートパンチ)の打ち方の説明だった。


 好事家たちは憤慨したが・・・地面から足、腰、背中、肩、拳に気を流すみたいな書き方だったそうだ。



「日本の武術は精妙ネ、素晴らしいネ、でも、説明の技術は中国4000年ネ、少し上ネ、気は催眠にかける言葉として使えるから注意ネ」



 朱子学では『気』とは万物を創成する物質で使われている。

 西欧が見えない力を現実にある物として研究したのに対し。

 東洋は、何か分からないけど存在する物を『気』として表現したのだ。


 この世界では現実に魔法があるからややこしい。


 公爵家お抱えの魔道師の伝手を頼り。催眠を掛けられる魔道師を紹介してもらった。


「はあ?幼女に幼女になる催眠魔法を掛けろと・・しかし、確かに公爵閣下の推薦状と許可書がある」


 相手は転生者だとは知らない。催眠魔法、危険なので当主、行政府の許可が必要だ。

 これは迅速に許可が下りた。公爵家にもカゲが潜んでいるのか?

 まあ、知られて困る事はない。


「でも、ずっと幼女でも困るの。10日くらいで解除する方法も教えて欲し~の」


「はあ、もう、何だか分からないが、いいや」




 ・・・・・・・・・・・・




 私の幼女時代、楽しかった。


 あれ、私、今、幼女じゃない?

 遊ぼう。


「ワーイ、ワーイ」



「メアリー様、エルフの国に行きます。お準備をしましょうね」


「ベッキー、はいなの~」



 ・・・・・・・・・・・・・・・



 やがて、メアリーたちはワイパーンに乗り。エルフの国に到着した。


 長老たちの判断により。



「ほお、これなら、陛下も会われるだろう」

「令嬢とメイドと幼女か。問題はない」



 メアリーたちは10日間の滞在を許可された。





最後までお読み頂き有難うございました。

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