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1 嵐の前のメアリーちゃんなの~

「待て~、ハニー!」

「キャアー、ダーリン、捕まえてごらんなさい」



あ~、学園の散歩道を、いつぞやの成金子息とピンクブロンドもどきが追いかけっこしている。


私、メアリーが間接的に誕生させたカップルだ。

ああ、地獄の光景だ。馬鹿だな。あいつら。



今はベッキーと一緒にキャンディーストアでミルクを飲んでいる。



どうせ馬鹿なのなら、せめて、この二人はナマコを初めて食べた馬鹿になって欲しいものだ。


この世は名もなき馬鹿が偉大な功績の手助けをして文明を発展させて来たことがあった。

例えば麻酔の発明は馬鹿が発端だ。

乱痴気パーティで笑気ガスを吸った馬鹿が椅子に足をぶつけても血を流しながらも踊っていた。


それを見た医者がこれ外科手術につかえんじゃねえ?

と思って試行錯誤をして麻酔が発明されたのだ。


馬鹿のおかげで医学が格段に進歩したのだ。


「う~ん。おっちゃん。ミルクもう一杯なの~」

「はいよ」

「ベッキーは?」

「私はいいのです・・」


キャンディーストアのおっちゃんはやはりカゲだった。


「おっちゃんが女王陛下に忠誠を誓ったきっかけは?」


「聞きにくい事を聞くね。私は昔、盗賊討伐の見張りをしていた時に、酒を飲んでしまったのだ。軍令違反だ・・・」



見張中に寝たり。酒を飲んだら軍令に基づき死刑だ。

上官に見つかり。

事の重大性を思い知った。

妻と子供達が路頭に迷う。


王都に送られ軍刑務所に入った。

それから、3ヶ月後に女王陛下が直接来られた。


『ヨセフだな。三ヶ月で酒は抜けたか・・』

『陛下!』


俺の名を呼んだ。


『次は無いぞ。次、軍務中に酒を飲んだら即死罪じゃ。今日はグフタフの婚約の日だ。恩赦じゃ』

『はい!かならずや』


それから、女王陛下のおそばに仕えたくて、負傷した時にカゲに志願したのさ。



・・・・・・



ほお、これから読み取れるのは、リンカーンの伝記では。

見張中居眠りをした二等兵に対して死刑の判決が出た。

しかしリンカーンは止めたと言うのがある。


子供の頃は分からなかったが、当時、電信技術を戦争に使い。あらゆる情報が大統領に報告されていた。

この国もあらゆる情報が文書によって女王に報告されている体制だ。


そして、孫子で言えば間諜を使う者は

『聖にあらざれば間用いることあたわず。仁にあらざれば間用いることあたわず』

だな。まあ、優しくなければならない。


メアリーには無理だよ。っと。


お、ザックが来た。ミレーヌ派の騎士科学生だ。

この場所は人目に付かないから接触しよと待ち伏せていたな。


「メアリー様、騎士科寮の改築有難うございます」

「お義姉様の発案なの~」


何だ。何の用だ。


「実はメアリー様にご報告が、ミレーヌ様が・・」

「ストップなの~」


「メアリー様に情報を渡せます」


こいつは二重スパイになりたいのか?それとも、騙そうとしているのか分からない。


「それはダメなの~、きちんと派閥を変えてくるのならお義姉様も迎えると思うの~、それは誠実ではないの~」


「・・・分かりました」



そうだ。私はカゲを使える器量はない。


「メアリー様、相談があるのです」


ベッキーに相談を持ちかけられた。


「私、メアリー様の役に全然立っていないのです・・・修行に出たいのです」


ガーン!


ベッキーそう思っていたのか?ベッキーは貴重だ。

私はグレーヌ家でお仕置き部屋に閉じ込められた。その時、パンを差し入れてくれたのがベッキーだ。


幼女に食事抜き。その時、パンを差し出す行為は、伯爵への命令違反だ。

企業で言うと、コンプラ違反や明らかに間違った命令を無視して行動を起こせる者。


例えば、東北大震災の時、官邸の意向や災害対策本部、本社の命令を無視して、原子炉に海水を注入した所長。

そうしなければ、今の日本はどうなっているか分からない。


旭日旗の新聞社は、その所長の調書から作業員は逃げ出したと誤報を流したが・・・

いや、どんな企業でも間違いがあるが、あの新聞社は自分と支持する者以外は性悪だと決めつけているようだ。時の政権は自民ではない。だから民主・・と、ここまでだ。


まあ、良い。ベッキーちゃんは周りに流されないで善を行える素質があるのだ。

それを何と伝えようか。



「ベッキーの気持は分かったの~、でも、婚約者内定まで待つの~、いて欲しいの~」

「はい・・・」


それしか言えなかった。


「青春だね。・・・これから嵐が来るよ。おっと」


おっちゃんは何か言った。女王陛下は中立だ。こちらに情報は流さないだろうな。


でもイザベラお義姉様で決まりだろうと思っていた。

婚約者内定がきたら私は何をやろうか?

このまま学園の教師で食べていこうか?ベッキーちゃん一人を養う自信はある。


慢心だった。


とんでもない話が公爵から持たされた。


「ミレーヌ嬢が万能薬の開発に成功したと評判だ」

「まあ」


先の戦いで負傷兵が沢山出た。

騎士の一騎打ちではない。歩兵団同士による大規模な槍の突き合い。


重傷者には回復術士をあてているが、問題は軽傷者だ。

小さな傷でも破傷風で死まである。


しかし、


「ああ、何でもドラゴンバームと言う名前らしい。特別な治療法があって今は極秘だ」


「でも、負傷兵の治療に役立つのなら良い事ですわ」


とお義姉様は喜ぶ。

こういう心は素直に美しいと思う。

これで一勝一敗か?


とまだのんきに構えている私がいた。過去に戻って自分をぶん殴りてえ!



学園の太極拳クラブでも情報が持たされた。


魔道科のニッキーからだ。


「メアリー様、大変です。魔道科の教授たちがミレーヌの新薬に注目して、魔法ではない別の力、神聖力があるかもしれないと研究が始まっています」


「有難うなの~」



更にミレーヌは、私達の真似をして、美人体操なるものを始めた。

しかも、私達の隣だ。


「オ~ホホホホ、どこかの幼女の体操は腰を低くしますわ。腰痛を起しますわ!今、このサークルに所属したら、万能薬を売る権利を差し上げるかもしれませんわ。

 お父様に相談して、派閥ごと来て下さる方限定ですわ」


聞こえるようにいいやがる。

ここは誰でも許可を受ければ使って良い芝生だ。


少なからずの令嬢がミレーヌの方に行く。



「メアリー様、申し訳ございません。お父様からミレーヌ様のサークルに参加せよと・・」

「いいの~、今まで有難うなの。ご多幸をお祈りしますの~」

「グスン、メアリー様」


ああ、暗転だな。

公爵家にはカゲはいない。

情報が欲しい。


やがて、ミレーヌのサークルには大勢集まり。

私達のクラブは、10人をきった。


更に、肥料ギルドの立ち上げにも問題が生じた。


聖女様が訪ねて来たのだ。年配の方だ。



「貴女がメアリーね!私は聖女よ。何故、不浄物に聖魔法を掛けなければならないのよ!」


「ご理解お願いしますの~」


肥料を発酵させ病原菌などを殺しても、やはり畑に使うには寄生虫の問題がある。

聖魔法は、人族の敵たる存在を消すと聞いたので実験をお願いしたのだ。


「ごめんなしゃいなの~」


「まあ、口では何とでも言えますわ!」


こいつ、公爵家でお願いしたのに私に来る。


「クスクスクス~」

「まあ、みっともないわ」

「聖女様にとんでもないことをいうのね」



ミレーヌの派閥の奴らも集まって来た。


こいつら。聖女とミレーヌはグルか?


「民のためにもなるの~、お願いしますの~」


「いいわ。土下座しなさい。ここで土下座をすれば考えてあげてもよいわよ」


もう、やけだ。土下座をして協力をお願いしよう。



「分かったの~、土下座をするから協力をお願いしますなの~」


しかし、何で、こいつ、先の戦いに招集されなかった?

今も王立治療院で負傷兵の治療は続いているはず。


?と思いながら、膝をつこうとしたら。


「メアリー様!」

「お止め下さい!」


「そこまでです」


ガチと腕をつかまれ止められ、まるで心を読んでいるかのようにささやくイケオジが登場した。

スパダリにしては年上過ぎる。


「グリケル公爵家のことも考えなさい。家門の名を背負っているのですぞ。それに、この方は名誉聖女ですよ。ねえ、アマンダお姉様」


「フリッツ、貴方何故??」


「ハニャ?」


イケオジは耳元でささやいた。


「彼女の聖魔法は冒険者の野良聖女以下です。前々の王の王女です。今上の陛下に修道院に追放された方です。実験は出来ません」



「貴方、この幼女はあの女狐・・・フン!」


聖女様は逃げた。


「・・・期待していますよ」


イケオジも自己紹介もせずに去る。


ミレーヌは驚いている。


「大公殿下が何故?」



大公?そう言えば、この国には大公家があったな。ミリンダ女王と王位を争わずに王宮を去った王子がいたと聞いたが。


「興がそがれたわ!美人体操は中止よ!」

「「「ミレーヌ様!」」



その時。まるでミレーヌたちと入れ違いのようにあの馬鹿カップルが、追いかけっこをして入って来た。空気読めよと思ったが・・・


「キャー、ダーリン、捕まえてごらんなさい」

「待て~、ハニー!」


「キャア!」


ズドーンとピンクブロンドもどきが石につまづき盛大にこけた。



「いたーい、ダーリン♡」

「大丈夫だよ。今、お薬を出してあげる。父上はミレーヌ様の派閥に入って特別にお薬を分けて頂いた。君が痛さに顔をゆがめるのは初夜だけで十分さ」

「キャアー、キャー!もう、ダミアンたら」

「キャサリンを転ばした悪い石め。エイ!」


あれ、あいつ、軟膏を石に塗り始めた。


まさか・・・ミレーヌの新薬の実体って。

これは、西欧世界の最高の知識階級が何百年も騙されたあれだ。


私が止めないと、いや、私だけでは不十分だ。



「有難うなの~!」


私は二人にカーテシーをした。


「メアリー様?」

「まあ、私たちの愛に感動をしたのかしら」



そして、後ろにいたベッキーに懇願する。


「ベッキー、貴女が必要なの~!助けて欲しいの!修行は必ず叶えるの!」

「はい!メアリー様、何なりと言いつけて欲しいのです」


すると、向こうから、騎士科学生達が来た。



「メアリー様、我ら騎士科学生52名、騎士爵と平民出身者、それぞれ親を説得してグリケル公爵派に入る事の承諾をえました。是非、陣営に参加させて下さい!」


「お義父様に伝えるの!付いてくるの~」


「「「はい!」」」



メアリーたちが去った後、成金令息とピンクブロンドもどきは微笑んだ。


「僕らに素晴らしい伴侶と出会うきっかけを作ってくれたメアリー様」

「ええ、こんなことでしか恩返し出来ないわ・・」


この一連のやりとりを見たカゲは王宮に報告をあげた。


『メアリー、カゲを使う素質あり』と。




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