5 幼女勲章なの~
「メアリー殿、当職に絶対勝てる方法をご教授をお願いしたい」
「はいなの~」
ジェース総騎士団長が出陣の日に私に尋ねた。
ここは孫子でいいか。実は10倍の兵力で敵を取り囲む話の続きがあるのだ。
「10倍の戦力で敵を取り囲むの~
5倍の戦力差なら攻めて攻めまくるの~
2倍以上なら、軍を分けて挟撃するの~
同じ戦力なら知略をこらすの~
それ以下なら撤退なの~」
「ほお・・・了解した」
3つの騎士団と歩兵軍合わせて五万の兵力の援軍を送ることになった。
騎兵が急行する。その後、歩兵か。
まとまって行軍した方が良いと思うが。
この場合は拙速か?
☆☆☆回想
あの変わった先生も言っていたな。
「災害の時は、とにかく拙速だった。災害派遣命令が出なくても多くの部隊が準備態勢を取った。とにかく急行し。
後から、防護マスク、防護衣を搬送した場合もあったな。
・・・後から、大変な事になったと分かった。地震から三日後に福島原発が水素爆発を起した。しかし、現場にいたから動けた事が多々あった」
「記憶にありますわ・・」
・・・・・・・・
と言う事は、お城は今後に備えて、大本営は大忙しだ。
「お義姉様~、提案なの~」
「何?メアリーちゃん」
イザベラお義姉様、メアリー、ベッキーの三人で、白の割烹着を着て城に詰めている役人、兵士たちにお夜食を配り。アメを配ったりもした。
城の割烹着は記憶を頼りに作ってもらった。
効果は一目でボランティアと分かる。
邪魔扱いされない。
しかし、教科書に載っていた国防婦人会みたいだな。
「皆様、お疲れ様です」
「お疲れ様なのです」
「アメちゃんなの~」
「おお、有難う。助かる」
「美人三姉妹か?」
イザベラ様は学生なので、交代でボランティアをすることになった。
ヘレン、マーリエ、ニッキー、その他太極拳クラブの人達が参加してくれた。
そして、数ヶ月後。
我国の勝利が報告された。
蓋を開けてみれば、騎兵隊が後ろから回り。向こうの大将、リードリ王子を討ち取った。
本当に愛に準じて戦乱を起したらしい。
ガイア王国の大使から手打ちの話が来た。増援はなしだ。
もし、ソリシアが亡命していたら、どうなっていたか分からない。
ネット小説のように凱旋をしたかもしれない。いや、それはないか。
ただ、国内は大混乱に陥った事は間違いない。
大公家を討伐しなければならなかっただろう。
そして、遂に、表彰の時が来た。
☆☆☆王宮謁見の間
王宮に文武百官が集まり叙勲式が行われた。
総騎士団長、騎士団長、歩兵隊長が受勲され。
私とイザベラお義姉様とヘレン様を代表に太極拳クラブも参加していた。
「グリケル公爵令嬢イザベラ殿!ザルツ大使との話会により兵を引かせた功績!感状及び淑女勲章を授ける!」
「はい、グリケル公爵家イザベラ、謹んでお受けします!」
パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!
「「「「オオオオオオーーーー」」」
「イザベラ様――――」
「貴族学園太極拳クラブ代表ワーキレア伯爵令嬢ヘレン殿!ボランティア活動により軍務を助けた功績!タイキョクケンクラブに感状及び各位に賞詞を授ける!」
「はい、ワーキレア伯爵家ヘレン、タイキョクケンクラブを代表して謹んでお受けします!」
パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!
「「「「オオオオオオーーーー」」」
「ヘレン様、立派ですわ!」
もう、これで城の表彰は終わりか。後は部隊か。
これで、お義姉様の婚約者内定か。
肥料ギルドが完成したら、お義姉様の功績は完璧だ。
わたしゃどうしようか?王都靴流通センターでも作ろうか?
いや、これは、ダメだな。少しもチートではない。
物干し売りでもしようか?
と考えていたら、呼び出された。
「グリケル公爵令嬢メアリー!総騎士団長への助言の功績!感状及び幼女勲章を授ける!尚、幼女勲章は今回より創設された」
「なんなの~~~~!」
「メアリー殿、陛下の御前である。私語は厳禁だ!」
何だ。幼女勲章?!そりゃ、まだ、令嬢でもないけど。
私は壇上に上がった。
「はい、謹んでお受けするの~!」
受け取ったら、
宰相のゼムリは発表を促す。
「メアリー殿、総騎士団長への助言をここで発表するように」
もう、どうにでもなれ。何故か両手を挙げ。レッサーパンダのように威嚇しながら発表した。
「戦いの基本は。
10倍の戦力で敵を取り囲むの~
5倍の戦力差なら攻めて攻めまくるの~
2倍以上なら、軍を分けて挟撃するの~
同じ戦力なら知略をこらすの~
それ以下なら撤退なの~」
パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!
「メアリーちゃん。立派よ!」
「「「メアリー先生!」」」
ふう。終わったか。列に戻ろうとしたら声がした。嫌な声だ。
この声は。
「お待ち下さい!異議がございます!陛下発言の許可を!」
実の父、グレーヌ伯爵フランツだ。
横にはミレーヌがいる。
奴らはここ数ヶ月何をしていたか。少し気になる。
ミレーヌが言い放つ。
「陛下!イザベラ様の対談で兵が引いたのと因果関係が認められませんわ。
それに、メアリーの助言は当たり前の話ですわ。
タイキョクケンクラブも、食べ物を運んだだけですわ。
少しも功績ではありません。
少なくても、戦いに勝ったのは騎士団ですわ!」
伯爵も追随する。
「そうです。彼女らは少しも偉くない!どうか、表彰の取り下げを!ご再考をお願いします!」
陛下はどうでる。
一瞬で王宮が静かになった。女王陛下は憤怒されるか?
しかし、ニッコリ微笑んで、お義姉様に話しかけた。
「イザベラよ。伯爵の言、如何思うか?」
「はい、その通りですわ。私は少しも偉くございません。偉いのは騎士様ですわ」
「「!!!」」
「な、何よ。また、聖女ぶって」
「ほお、イザベラよ。妾の決めた表彰に難癖をつけるか?」
「いえ、とんでもございませんわ。これはやる気を出させる陛下のご慈悲だと思っております。
しかしながら、提案をいたします。奏上宜しいでしょうか?」
「うむ。許す」
「私の表彰を取り下げる代わりに、学園の騎士科学生様の宿舎を補修若しくは立て直す案を奏上いたしますわ」
「ほお、何故だ?」
「はい、メアリーが騎士科学生達から聞き取り調査をしましたわ。雨漏りがすると言います。それは直すべきかと」
「ジェース、どう思う?」
「はい、騎士は野営をいたしますから、若いうちから質素倹約に努めるべきと愚考しております」
「いえ。総騎士団長様、騎士を大事にする気持を若い時から見せるべきですわ・・」
「うむ・・・」
お義姉様は、女王陛下や総騎士団長と会話をしている。
グスン、グスン。
「ほお、それでは、騎士科学生の代表とも話をいたそう」
「・・陛下、私、ミレーヌも奏上いたします」
「許さぬ。日を改めよ」
「グッ」
もう、グレーヌ親子は蚊帳の外であった。
メアリーは懐の棒付きペロペロキャンディーの数を数えた。
イザベラは私がいなくても王宮を舞うであろうと目を細めるメアリーであった。
結局イザベラの受賞は取り消されなかった。
最後までお読み頂き有難うございました。