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プロローグ

「ソシリアとの婚約は破棄だ」


「左様でございますか」



 ワエキラエ王国の王宮のパーティー、中央付近で王太子グフタフが宣言した。

 隣にはピンクブロンドの男爵令嬢がいる。


 会場は静まりかえる。周りの貴族たちは固唾を飲んで見守る。



「なら、女王陛下と父との話し合いになります。理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」




 王子は口を開いた。




「外患誘致だからだ」


 コトッ!静まりかえった王宮にソシリアの扇を落とした音が響いた。



「マリアよ。説明せよ」

「はい」


 王子に促されてピンクブロンドの少女が説明する。



「ソシリア様、ごめんなさい。バレていたわ。金貨10枚だけど、これは不法原因給付と言う事で、私がもらいます・・・」



「マリア!貴女裏切ったの?」

「だって、外国の王子と文通している事なんて教えてくれなかったでしょう!王太子殿下の気持を確かめるためだって!」



 グフタフはマリアを手で制しソシリアを微笑みながら見た。冷笑ではない。

 どこか顔の筋肉だけで微笑んでいる冷たさを感じさせる表情である。



「さすがに、愚鈍な私でも好意以外の感情を向けられたら分かるぞ。人は「利」で動くものだ。

 罪は許すから全て話せと言ったら白状したぞ」



「そんな。軽い出来心でございます。どうかお許しを!!謀反を起す気はございません。婚約を破棄されたら、隣国に赴く計画でしたわ!決して兵を挙げるつもりは毛頭ございません。親が決めた結婚、こうするしかございませんでした!」



「婚約解消は出来る。順番を間違えたな。ソシリアの代わりになりたい者は沢山いるぞ」


「でも、父が許しませんでしたわ」


「それは関係ない」




「女王陛下のご登場でございます」


 一同礼をする。


 ソシリアは内心安堵した。

 王妃教育では女王は優しかった。


 何よりも、この女王自身、小国出身、今はないファモール王国出身。

 第六王子の婚約者であったが、婚約破棄をして当時の王太子の妻になった。

 気持は分かるはずだ。


 その後、酒色に溺れ王は死去、女王に即位をした。



 女王の名前はミリンダである。

 彼女は齢46歳、断固鼻で美人ではない。黒みがかった茶髪に薄いブラウンの瞳。

 宝石がちりばめられているドレスを着ているが、平民の服を着て市場に立てば見分けはつかないだろう。


 しかし、肖像画では美化を禁止して、宝石にちりばめられたミリンダは不思議と女王の威厳がある。

 女王はこうであるべきではなく、これが女王であると主張しているかのようだ。


 女王は、詳細を聞き。

 優しくソシリアを諭した。



「ほお、人質として我国に来られたリードリ王子と恋に落ちたと、兵を挙げるつもりは無かったと言うが本当であろう。

 しかし、そなたにはワエキラエ王族の血がある。つもりじゃなくてもそう思わせてもいけないのじゃ。隣国が担いだら戦乱が起こるぞえ」


「そうです!ガイア王国と共謀して兵を挙げる気は毛頭ありませんでした。婚約をグフタフ殿下から破棄されて、隣国に赴くつもりでしたわ。

 私は大公家の娘、後ろ盾になりますわ。反省しますわ」



 女王は扇を閉じ。一言発した。




「煮殺せ」



「「「御意!」」」

「ヒィ!」

「こっちに来い!」


「そんなー!陛下だって婚約破棄をしたのに!何故、私だけ?お父様ぁ~!リードリーーーー」


 ふう、妾は生きるために婚約破棄を仕向けたのじゃ。ソシリアは美しいが王家の血があるだけの女じゃったのう。頭の中は恋愛でいっぱいか。つまらぬ。



「グフタフよ。大公家はどうしたら良い?」


「はい、陛下、このままで宜しいかと」

「そうさのう」


 妾は齢12歳でこの国に来た。第六王子の婚約者になった。

 謀略でのし上がったが。

 不思議と当時の第五王子は妾の怖さが分かって早い時期に臣籍に下った。

 それが、ソシリアの親だ。


 妾の怖さが分かる。見る目があるのだろう。

 それに妾は外国出身、王家の血筋のプールの役目もある。



「グフタフの処置と妾は同じ考えじゃ。じゃが、どうしてその考えに至ったか?」


「はい、陛下、カゲの調査によると、大公は何も知らないようです。手引きしたスパイの使用人を処罰すれば良いかと、大公家を潰すと隣国に益をもたらします。王家と貴族たちの不仲を助長するでしょう。見せしめにスパイとソシリアを処罰すれば良いかと」



「フム、細部まで調べたか。カゲの使い方は合格じゃのう。その男爵令嬢はどうする?カゲとして使うか?」


「いえ、褒美を与え、そのままが良いでしょう」


「理由は?」


「はい、謀略に必要なのは信頼です。彼女は益で転びました。また、あるかもしれません。女学生のほんのお遊びで手を出したとしてもね」


「もし、大公が恨みに思って兵を挙げたら」

「なら、討ち滅ぼすまで」



 わざと周りの貴族たちに聞こえるように会話をした。

 そして、パタンと扇を閉じ宣言をする。



「皆の者、王太子の婚約者は不在になった。なりたい家門は名乗り出るが良い。

 才と貞淑だけを求める。身分は問わないぞえ」


「「「「御意!」」」


「ゼムリよ。選定のテストをさせよ。そうさのう。問題解決能力に重きを置け」


「御意にございます。この宰相、相応しい王太子妃を選別して見せましょう」


「して、グフタフよ。好みの女性はおるかの?」

「ご冗談を。私は国家の置物。相手には能力のみ求めます。たとえどのような醜女でも才を愛せる自信はございます」


「戯れ言を・・・」


 父に似て顔だけハンサムかと思ったが、もう、謀略の芽が出ておる。妾の血かのう。


「妾を討ち滅ぼしてもいいぞよ」

「理由がございません」

「なら、理由があればそうすると言う事かのう」

「さあ、どうでしょう。私にも分かりません。しかし、母上、あまり謀略をすると王宮は疑心暗鬼になります。どうかお控えを」

「フム、考慮しよう」


 さすがに貴族たちを殺しすぎたかのう。





 ・・・・・・・・



 数日後、一人のシングルマザーのメイドが暇を出された。

 あのマリアの家門の男爵家だ。



「せっかく娘付のメイドをしてくれたが、しばらく領地に籠もる事にする。娘の奴、王宮の謀略に巻き込まれた。しばらく謹慎だ」


「まあ、旦那様、分かりました」


「リリーさん。領地に着いて来られないかしら」


「奥様、私の旦那様が迎えに来るので王都にいますわ」


「そう・・・紹介状を書くわ」



 リリーは男爵家の寮を出た。

 幼子、メアリーの手を引き。王宮前広場を通る。



 カン!カン!カン!


「処刑だ!」

「釜ゆでの刑だってさ」

「令嬢一人と使用人たちだ!」



「メアリー、広場は避けましょう。回り道よ。とても怖い事があるみたいだわ」

「はいなの~」



 後に私生児メアリーは、王宮のうねりに巻き込まれる事になる。




最後までお読み頂き有難うございました。

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