神様げぇむにerrorが発現したようです
糸間 麦 十七歳
飛び級して海外の大学を卒業。国家資格を複数有し大株主としても多数の会社に影響を及ぼしている。逆境に陥ったことがなく、日々暇を持て余している。退屈しのぎで紛争地帯に赴けば反乱勢力の沈静化し称えられる。
常人とは掛け離れた身体能力と頭脳を生まれながらに併せ持ち政府ですら要人として接している。一見完璧に見える彼女だが、成長に必要な刺激が欠損しているため倫理観や常識には疎い。
笠木 榮一
麦のパシリ兼雑用係。魔石の収集や採取が主な仕事。他には交渉や心理戦などで彼の右に出るものはおらず、良いように使われつつちゃっかり自分の趣味もこなしている変わり者。
【げぇむ】開始前は研究職をしていたが特に好きな分野があったわけでもないため現状が一番楽しい。
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主な概要。
AIが浸透し始めた現代社会に突如として現れた【げぇむ】。神と名乗る者が開いたそれは、現代科学では到底追いつけない技術を用いて『神の選別』を始めた。
世界中を巻き込んだ【げぇむ】に各国の代表は緊急会議を開いたが時すでに遅し。第一ゲーム1stステージの【国民投票】により国民の十分の一が減少した。
【国民投票】はその名の通り、必要な人間だと誰か一人にでも承認されれば生き残れるげぇむ。その為身の拠り所のないホームレスや不法労働者、貧困者や高齢者の多くがその命を散らした。
この事態に大きな衝撃を受けた世界各国は、それぞれがげぇむに対抗するべく国民に情報を開示する。不安と混濁の中始まった2ndステージ【生存投票】。
【生存投票】の概要はあまりにも酷く、それ故に到底政府が規制できるものではなかった。このげぇむでは一人に付き二つの票が与えられ、その一つは『生きる者票』、もう一つは『死ぬ者票』。
もちろんこの票は投票してもシなくても良い。ただし期限までに『生きる者票』がない人間、『死ぬ者票』が一つでもあった人間は死を迎える。『死ぬ者票』と『生きる者票』は相殺されるため、一つでも多い方が結果となる。
使わなくても良いと事前説明があったのだから使わなければ良いものの、人間の本性とはそこまで綺麗なものではない。結果はご覧の通り、票を求めて警察が機能を無くすほどの暴動が起こった。その結果生存者の約四割が命を落とすという悲惨な結末を迎えたのだ。
これに立ち向かう術はなく、政府はげぇむをクリアする他生き残る方法はないと国民に勧告した。ここでげぇむの主催者が登場し、このげぇむは神を選別するために開催されたことを明かす。
3stステージ【票集め】。
第二ゲームが始まったとき、既に社会経済は崩壊していた。警察もまともな機能を果たしておらず、人はみな明日の食料を求め彷徨っていた。
第二ゲーム1stステージ【コイン狩り】。げぇむ開始から約半年。供給ラインが途絶えた食料の強奪が始まり、げぇむの続行がないことが更に人々を不安にさせた。そんな中始まったこのげぇむは、突如出現した【魔物】を倒し、その強さに応じてコインが支払われるというものだった。
コインの使用用途は様々で、価値は下の様な順となる。1p=一円
水(250ml) 100p
栄養食 150p
回復薬 30000p
成長薬 500000p
ランダムスキル 1000000p
召喚卵 5000000p
この他にも生活用品や娯楽品はコインに応じて支払いが可能である。更にこの第二ゲームの最大の特徴は一人一つにつき固有魔法が与えられたことだった。固有魔法にはそれぞれその人物に応じた特性となっているが、人望・権力・金・社会的地位などが加味され通常より数段跳ね上がった性能を持つ魔法が与えられたものもいる。
麦もそのうちの一人、というより代表的な例で彼女の固有魔法は【魔術構築】。術式さえ構築してしまえば全ての魔法を使用可能というチートものである。しかしこの最大の弱点は常人が扱おうものならその理論の難易度に使用を放棄してしまうことにある。
魔術とはすなわち数学の方式が何重にも重なっていることにあり、座標を指定するのにも並の数学者では太刀打ちが出来ず、その発動状態や威力などを考えると凄まじい数となる。
それを戦闘時に発動することなどまず不可能であり、それを可能にする人間がまずいないのだ。だがここは主人公補正、いや適正だろう。まさに彼女の為にある魔法といえる程、この魔法は彼女に適していた。
【コイン狩り】は魔物を倒し、コインを稼ぎ、魔石を集め、命を繋ぐ個人戦。コインは別に魔物だけからしか取れないわけではない。正確には魔物からでしか生産はできないが、譲渡や略奪が不可能なわけではないのだ。
コイン自体に可視化する物質があるわけではないが、コインを持つ人間を殺せば自動的にコインが流れ、本人の許可さえあれば譲渡することもできる。
この仕組みにいち早く気づいた人間からまた殺戮を繰り返していく。利益で人を殺すのも厭わない者たち、正義のため弱者救済を掲げる者たち、宗教を作り献金という名の仕組みを作り出す者たち。次第に人間たちは派閥を作りあげる。
【コイン狩り】が始まって一年。ある程度塊ができて、それにあぶれた人間達が彷徨っているところにげぇむの主催者が次のげぇむを進めるむねを伝える。
第二ゲーム2ndステージ【国盗り合戦】。【王】となる人物の名がずらりと表示され、上から順に【コイン狩り】のデータを元にした勝敗率で並べられたそれは、当然現時点で個人のコイン数一位を誇る麦が一番上に名前が上がる。
人々は今までついてきた人間の元へ下る者もいれば、それとは別に裏切り勝敗率の高い【王】のもとへ向かう者もいた。選択すればその【王】の元へ転送され、当然変更はできない。選ばなかったものはどこの派閥にも属することが出来ず、【王】もまた受け入れを拒否することが出来る。
この制度を知った麦は雑用係兼パシリの笠木以外の受け入れを拒否する。これにより完全に派閥が別れ、最初は派閥を作る良さについて解説が流れる。派閥を作るとそれぞれの役割を分担させ、コインを集める者、魔石を採取する者、魔物を解体する者、食事を用意する者、生活を支える者などに別れることで作業効率を飛躍的に上げるのだ。
これまでは誰に裏切られるかわからないという恐怖から互いを信用できなかったからこそ、この派閥というのは人間の安心感を取り戻させるには十分だった。
しかしこれはあくまでげぇむ。この【国盗り合戦】の概要は最低でも派閥を三つ掌握すること。それは同盟でも、略奪でも、戦争でも構わないというものである。
特にコイン数が総じて多く、派閥の人数がたったの二人という麦は最も狙われ、活動拠点も縮小する。愚痴を垂れる笠木に麦は派閥の真の裏底を語る。
曰く、派閥とは一種の組織であり一時的な安心感を得られる代わりに満たされた人間の欲はそう簡単には片付かない。コインを集める者はひとえに命がけであり、それを現場にいない者達に再分配することは当然不満がたまる。
さらに守られれている後衛の者もコインを集める者だけが少しでも良いものを食べていると文句を垂れる。少しずつ、水滴が溜まるようにそれぞれの不満が蓄積されれば待っているのは内部分裂である、と。
そもそも派閥内でも階級があり、それにふさわしい役職を持つ限り永遠の平等、つまりはげぇむ開始前のような立場的平等を手にすることは出来ないのだ。何も数だけ集めれば良いわけでもない。そのことを熟知していた麦の思考を笠木は評価し、これからの縮図について相談する。
【王】はランク順から『領地』を選ぶことができ、麦は日本の九州地域を選択する。これで麦の派閥の人間、つまり笠木以外の人間が領地に立ち入ればすぐに麦に報告が入る仕組みとなった。
既に何組か襲撃の予想がされている。麦は構うことなくコイン集めと魔石の研究を進めるむねを伝え、実際に襲撃された際は容赦なく皆殺しにした。この噂は風に乗ってすぐさま伝わり、敵対よりも同盟を組むことを望む派閥が動き出す。
しかし同盟で得るものが何一つないこと、失うものが多すぎることなどを理由に全てを拒絶する。同盟はコインや食料を分け与える名分にしかならず、既に十分すぎる程獲得している麦達にとっては何の意味もない。さらに大勢の人間を守りながらの戦闘に人間関係の構築など、げぇむが始まって以来趣味に没頭していた麦にとっては不快以外の何者でもなかった。
これにより一つの派閥を全面戦争によって無事掌握したわけだが、その後同盟というなよけた手段を取った申し出をした派閥の【王】がその命を持って支払わなければならないことがわかり、げぇむは急速に進行した。
結果【王】の素質が強い某数十組が世界に残留した。掌握した派閥を吸収し勢力を増やす派閥もあれば、反乱の芽を摘むために皆殺しにした派閥もいた。これは後衛を作るか、足手まといを増やすかの考えの違いであろう。
もちろん麦の派閥こそ最も数が少ないが、それでも派閥の中での順位は一度も変わることがなかった。全ての派閥が条件をクリアしたところで、第二ゲーム3rdステージ【反逆の時間】が始まった。
これは何と参加するもしないも自由というものだった。しかしその内容は今までの【王】を殺し、派閥内の順位を上げること。つまりこれまで絶対的なものであった【王】を消せるチャンスなのだ。
しかし当然通常では【王】には敵わない。そこで【反逆者】になることを決めた者たちはその烙印とともに力が数倍になるハンデが与えられる。
しかし自分のステータスは赤く染まり、魔物への誘発対象となるため迅速に【王】を処理する他あとがない。一度【反逆者】になることを決めてしまえば覆ることはなく、【王】が姿をくらませば数日でハンデは消え去り魔物への誘発だけが残る最悪のシステムである。
今まで実力で捻じ伏せていた【王】はもちろん、正義の名を語り弱者救済にあたっていた【王】ですらその弱者に紛れたろくでもない者たちの手によって窮地に追い込まれていた。
その様子は一人楽しそうに眺める麦。笠木が俺が裏切るとか考えないんすか?と聞くと視線を介さずに裏切ってもいいがその場合のメリットがないだろうと核心をつく。笠木の魔法【収集家】は決して戦闘向きとは言えず、麦の雑用でなければ2ndステージも待たずにその身を散らしていたであろう。そんな男が自分という切り札を失ってまで手に入れるものがないと麦はよく理解していた。
なんかムカつくと笑顔で怒りマークを出す笠木を無視して今後の展開を予測する。コインはひとしきり稼いだ。魔石は回収し、研究にあたっている。
どうせ暇ならと飼いならしておいた召喚獣は順調に育ちその体長は有に5mを超えている。興味本位と自分が不在時の笠木のお守り目当てに買った召喚卵は以外にも禍々しい黒狼へと成長し、簡単なおつかいもこなせるようになった。
その毛並みに埋もれつつも次にやるべきことを笠木に伝える。この壮絶な混乱時に起こす確かなげぇむに則った【反逆】。それはつまり東京掌握であった。東京とは日本の首都であり、心臓。
世界規模のデータが集まり、技術が集約する。麦が領地選択時にそれを選ばなかったのは内部に関しての知識が浅かったのと、他の領地から攻め込まれやすいというデメリットを考えてのことだった。
しかし今はどの領地も自分たちのことで手一杯。東京を領地としている【王】も少なからずその混乱に巻き込まれているはずだ。今なら叩ける。
奴らが大事に抱え込んでいた情報を全て横取りできれば儲けもの。そうでなくとももうそろそろこの平穏にも飽きて一暴れしたかったところなのだ。




