少し遅れて桜の俳句(2024)
『花疲れ 母の名で 吾を呼ぶ祖父』
『花疲れ』は花見の人出や陽気に当てられて疲れてしまう事を言います。
背が高くて恰幅が良かった祖父は、高齢になり認知症を患うと痩せ細り、妻子の顔もわからなくなりました。
歩ける認知症患者による珍事件はだいたい網羅。
いろいろ──ありましたねぇ。
祖父は若い頃、仕事の関係で家族と離れて暮らしていたそうです。
当時子供だった私に母の面影を見たのは、幼い娘(母)ともっと一緒の時を過ごしたかったという想いの表れでしょうか。
母に向けられるはずの祖父の微笑みを代わりに受けとる後ろめたさと。
祖父の中に“孫の私”がいないとわかってしまう寂しさと。
いや、この憂鬱は人混みに酔ったせい。うん、きっとそう。
『憎めども 故郷の花と 比べおり』
何が憎いのか。
どこに想いをぶつければ良いのかもわからなかった、あの頃。
俳句では、『花』といえば『桜』になります。