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ハイゲーマー・ブラックソウル  作者: 火野ねこ
三章
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【043】最後の冒険④


 一


「――――ごほん。えー、皆さんのおかげで、今回、迷宮を見事攻略することが出来た訳ですが――――――――」


 骸骨の異形が鹿羽の前から姿を消した後、意識を取り戻した攻略部隊は迷宮探索を再開していた。

 うんざりするほど出現していた魔物達は、以降、全く姿を見せることはなく、攻略部隊はあっさりと迷宮の最深部へと辿り着いていた。


 今までの苦労が嘘のように、あっけなく終わりを告げた迷宮探索。

 肩透かしを食らったような気分に陥った攻略部隊であったが、最深部は宝物庫のように価値のある遺品が数多く残されてあった為、攻略部隊のテンションは再び盛り上がりを見せた。


 そして、攻略部隊は迷宮から帰還した。

 迷宮探索の依頼は、攻略完了のパーティーと共に終わる予定となっていた。


「……ニームレス殿。あれで良かったのか?」

「多くの人々が意識を失った中で、流石にあのレベルを相手に守りながら戦うのは得策じゃないと思ったんだが……。良かったのかどうかは分からない」

「かの異形……。何かに囚われているようであったな……」

「…………関わらない方が良さそうな感じではあったな」


 鹿羽は思うところがあるのか、歯切れが悪そうに言った。


(――――あの骸骨の呪い。やっぱり、あれは麻理亜の魔力じゃない。でも一瞬、見間違うレベルで似ていた……。ただの、偶然なんだよな……?)


 鹿羽は、骸骨の異形の中に存在した禍々しい魔力のことを思い出していた。


 その魔力の存在に気付いた時、何故か、鹿羽の脳裏に麻理亜の姿が思い浮かんだ。

 魔力それ自体は麻理亜自身が持つものに酷似していたが、それでも全く別人の魔力であることを鹿羽は理解していた。


 何てことない、ただの偶然。


 しかしながら、鹿羽はどうにも後味の悪い感覚を抱いていた。


「――――ニームレス、だったか?」

「……? 何か用か?」


 飲むつもりのないワイングラスを片手に思索に耽る鹿羽だったが、そこに仮面の少女が声を掛けた。


「…………あの時、お前が守ってくれなければ、私は軽くない傷を被っていたことだろう。だから……、その、なんだ。礼を言いに来た」

「……意外と几帳面なんだな」

「……………………どうして私を助けた。少なくともお前から見て私は、助けようと思える相手ではなかった筈だ」

「そんなこと言われてもな。助け合うのはお互い様だろう。確かに気難しい人とは思ったけどな」

「…………理解に苦しむ」

「そうか? 難しい話じゃないと思うが……」

「……礼は言った。以上だ。もう話すことはない」

「…………」


 仮面の少女はそう言うと、振り切るように立ち去った。


「……悪しき魂の持ち主ではない、のか?」

「まあ、悪い奴ではないんだろ。とんでもなく不器用か、或いはそうならざるを得ない事情を抱えてる、とかな」


 鹿羽は、仮面の少女の小さな後ろ姿を見送りながら、そう言った。


 二


「お礼、言ったの?」

「――――ニームレス、か。奇妙な奴だ」

「アポロちゃんが私達以外の人の名前を覚えるなんて」

「……私をなんだと思ってるんだ?」


 仮面の少女は、不満げにそう言った。


「アノ屍王ヲ前ニ、全ク恐レルコトハ無カッタ。チカラハアル、ダロウ」

「そうね。“屍王/リッチ”の迫力……。凄まじいものだったけれど、彼は全く気にしていない様子だったわ」

「……力が全てではない。恐れを忘れれば、早々に命を落とすことになる。その辺り、奴に教えてやる必要があるかもな」

「…………アポロちゃん、彼のことが気になるの?」

「な……っ!? そういうことではない! 変な邪推をするな!」


 仮面の少女は断言するように、激しく否定をした。


(――――私はあくまで先輩冒険者としての責任を果たそうとしただけだ! 決して、助けてもらったからだとか、もしかして同じ境遇なのかもしれないとか、そんな考えは、全く――――――――)


「ごめんね。アポロちゃんがそんな風に言うのが珍しかったから。つい」

「……全く」


 三


『――――――――カバネ様。聞こえますでしょうか』

『……? C・クリエイターか。急にどうした。何かあったか?』

『――――報告致します。フィリル村が襲撃を受けました。現在、敵性勢力の撃退には成功しましたが、被害は甚大です』

『…………詳しく教えてくれ』




『――――E・イーター・エラエノーラが死亡。住民も、半数以上が殺されました』





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