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ハイゲーマー・ブラックソウル  作者: 火野ねこ
六章
166/200

【166】夢の終わり


 一


 鹿羽を救出することに成功した麻理亜は、ギルド拠点へと帰還すると、各地へ派遣されていたNPC達を呼び戻していた。


 そして、C・クリエイター・シャーロットクララ達の手によって今回の黒幕であるミユキは打倒され、鹿羽と麻理亜の二人の無事が、全員の知ることとなっていた。


「――――という訳だ。心配掛けたな。楓」


 連絡を受け、急いで帰還した楓に対し、鹿羽は事の顛末を説明していた。

 対する楓は、呆然とした様子で鹿羽の説明に耳を傾けていた。


(……反応が思ったより薄いな。リフルデリカの時も大丈夫だった訳だし、あんまり心配しなかったか?)


 結果的に無事だったとはいえ、鹿羽自身は誘拐され、監禁されていたが、説明を受ける楓の態度は非常に淡白なものに見えた。

 そして、あまり心配されていなかったのではないかと感じた鹿羽は、何とも言えない感情を抱いた。


 瞬間、楓の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。


「……っ!?」

「ありゃ、泣いちゃった」


 楓は、もはやどうしようもないほどに鹿羽と麻理亜のことを心配していた。


「……麻理亜殿、鹿羽殿」

「な、何だ……?」

「……とりあえず、一発殴らせるのである」


 楓は涙をポロポロと流しながら、拳を強く握り締めた。


「いや、でも今回俺は悪くな――――いってぇ!!??」

「優しくしてね♡――――きゃっ」


 楓は、鹿羽をグーで殴り付け、麻理亜を軽く平手打ちすると、二人を強く抱きしめた。


「――――心配したのである……っ。良かった……っ」

「……ああ」

「ふふ。ただいま」


 そして、鹿羽と麻理亜もまた、楓を強く抱きしめた。


「……リフルデリカ。貴様はいつからC・クリエイター・シャーロットクララの計画に気が付いていた?」

「いや、最後まで半信半疑だったさ。本当に裏切っている可能性はゼロではなかったからね。作戦を瓦解させないように、黙っていたけどさ」

「はっ! 相変わらず嫌な奴だ」


 リフルデリカの言葉に対し、ローグデリカは吐き捨てるようにそう言った。


「ふわ……? ブラックバレットちゃん、泣いてる?」

「泣いてない。――――しかし、作戦とはいえ、一時は本当に肝を冷やした……」

「おや。B・ブレイカーも涙を見せる時があるのですね。これは貴重なものが見られたかもしれません」

「――――A・アクター。一発殴らせろ」

「いや、それはご勘弁を……」


 A・アクター・アダムマンはそう言うと、あっという間にB・ブレイカー・ブラックバレットから距離を取った。


「……疑問すなわち質問。L・ラバー・ラウラリーネット。貴女はC・クリエイター・シャーロットクララの作戦に気付いていたのですか?」

「黙秘シマス」

「はあ……。やれやれですね」


 T・ティーチャー・テレントリスタンは呆れた様子でそう言った。


「――――カバネ様。メイプル様。此度の件は、本当にご迷惑をお掛け致しました。このC・クリエイター・シャーロットクララ、如何なる罰も受ける所存です」

「……C・クリエイターか。どうせ麻理亜の作戦だったんだろ? 何があったのか詳しくは知らないが、みんなこうして戻ってこれたんだ。感謝することはあっても、罰するつもりなんて無いさ」

「……寛大な処置、感謝申し上げます」


 C・クリエイター・シャーロットクララは丁寧な口調でそう言うと、ゆっくりと頭を下げた。


 すると、鹿羽は背中の辺りに何かが飛びついたような感触を味わった。


「……?」


 鹿羽は振り返ってみると、そこには鹿羽を見上げる小さな女の子の姿があった。


「――――お兄ちゃん。抱っこ」

「ま、麻理亜。この子って……」

「今回の黒幕ね」


 麻理亜は何てことない様子でそう言った。


 すると、G・ゲーマー・グローリーグラディスが慌てた様子で現れ、鹿羽にくっ付いていた女の子を引き剥がした。


「むー」

「も、申し訳ございません……。地下の牢獄に閉じ込めていた筈なのですが……」

「あ、相手はこんなに小さな子だったのであるか……?」

「い、いえ……。我々が敵対したのは成長した状態の彼女になります……。様々な要素を考慮しまして、今はこのような状態にさせておりますが……」


 G・ゲーマー・グローリーグラディスは申し訳なさそうにそう言った。


「抱っこ」

「……だそうだ。麻理亜」

「そう? それじゃあ……」

「やーや!!」

「あら。嫌われちゃったみたいねー」


 麻理亜はケラケラと笑いながらそう言った。


 次章が最終章となります。ここまでお付き合いくださった読者の皆様に深い感謝を申し上げると同時に、もう少しだけお付き合い頂けると幸いです。

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