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ハイゲーマー・ブラックソウル  作者: 火野ねこ
六章
156/200

【156】敵の正体①


 一


 場所は統一国家ユーエス、レットレイ県。


 リフルデリカとT・ティーチャー・テレントリスタン、そしてB・ブレイカー・ブラックバレットの三人は、鹿羽誘拐と麻理亜襲撃の首謀者とされる少女が目撃された迷宮を訪れていた。


「――――リフルデリカ様。“世界意思”について、一つお聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」

「……? 別に構わないけれど、何が知りたいんだい?」

「ありがとうございます。――――“世界意思”なるものは、これまでカバネ様やリフルデリカ様に大きな影響を与えていたということですが……。そもそも“世界意思”は何の為に存在していたのでしょうか? 魔術的な要素が強いことを鑑みても、それが何かしらの目的の為に創造された“人工物”であることは自明のことのように思えます」


 T・ティーチャー・テレントリスタンは、淡々とした様子でそう言った。


「そうだね。僕はあくまで自分やカバネ氏が“世界意思”の後継者であることぐらいしか知らないんだけれども、太古の昔に創造された人工物であるという仮説には僕も賛成かな。規模が規模な訳だし、何かしらのやむにやまれぬ理由があって作られたんだと思うよ。それが何だったのかは、結局分からなかったけどね」

「……理解すなわち不能。未来に生きる、顔も知らない筈の誰かを抹殺する為の術式など、私には理解出来ません」

「一理あるね。――――普通に考えればの話だけど」


 リフルデリカは、含みのある口調でそう言った。


「……示唆すなわち例外。どういう意味でしょうか?」

「“世界意思”の標的がその当時から存在していて、今もなお生きているとすれば、別に変な話じゃない。現に僕だって、結果的には長生きしてしまっている訳だし」

「まさか、エシャデリカという方が何千年も昔から存在し続けているということですか?」

「正確に言えば、エシャデリカに連なる者達が何千年と存在し続けていて、それを滅ぼしたいと願った誰かさんが“世界意思”を作った、となれば論理に矛盾は無いよ。――――ま、君達の言葉で言うところの、“こうとうむけい”って奴かもしれないけどね」

「……」


 T・ティーチャー・テレントリスタンは少し考え込んだ様子で、顎に手を当てた。


「――――結論すなわち簡潔。要するに何も分かっていない、ということですね」

「あはは。その通りさ。どうして海があるのかを誰も知らないのと同じように、どうして“世界意思”が存在するかなんて、今や知る由も無いね。――――そうだ。マリア氏が復活したら、“世界意思”について聞いてみておくれよ。彼女の頭脳なら面白い仮説が飛び出すかもしれない」

「間接すなわち手間。直接お尋ねすれば宜しいのでは?」

「いや、僕、彼女のこと嫌いだし」


 リフルデリカの言葉に、T・ティーチャー・テレントリスタンは鎧兜の下で何とも言えない表情を浮かべた。


「――――貴様ら。何しにここへ来たのか理解しているのか? 特にT・ティーチャー・テレントリスタン。主君を二人も傷付けられたこの状況で、よく談笑に興じていられるな」

「かの少女も同じ“世界意思”の後継者ということでしたから、少し聞いてみただけなのですが……。確かに無駄話でしたね」

「情報共有は大切さ。特に今みたいに、情報が不足している時はね」

「……」

「黙って睨まないでおくれよ。カバネ氏が居なくなって辛いのは僕も同じさ」


 リフルデリカはやれやれと言わんばかりにそう言った。


 瞬間。


「――――また来てくれたんだねー。キャハハ!!」


 リフルデリカ達の目的とも言える少女が、迷宮の奥から姿を見せていた。


「あ!! お姉ちゃんだ!!」

「……やあ。また会ったね。――――ところで、お兄ちゃんが何処にいるのか教えてもらってもいいかな?」

「えー? どうしようかなー?――――そうだ! お姉ちゃんが仲間になってくれるならー、教えてあげてもいいよ!」


 リフルデリカは一瞬、B・ブレイカー・ブラックバレットとT・ティーチャー・テレントリスタンの二人に目配せをすると、いつもの気楽な様子で口を開いた。


「……分かったよ。少し不本意だけれど、君の味方になってあげようじゃないか」

「――――なーんてウソ!! お姉ちゃんすごくすごーく怒ってるの知ってるもんねー!! こわいお姉ちゃんになんて教えてあげなーい!! キャハハ!!」


 少女は楽しそうにそう言うと、リフルデリカを指差しながらケラケラと笑った。


「――――交渉の余地が無いのなら、話は早い。その身に余る罪を償え」


 しかしながら、次の瞬間には、B・ブレイカー・ブラックバレットの斧が少女の肉体全てを消し飛ばしていた。


「ち……っ」


 完璧に少女を葬り去ったB・ブレイカー・ブラックバレットだったが、少女の気配が一つではないことに気付くと、苛立った様子で舌打ちをした。


「完全に消滅したら復活出来ないんだけどな……。魔力が勿体ない……」

「人体を生成して意識を共有させるだなんて、並大抵のことではないだろうね。――――その魔力は一体どこから来ているのかな?」

「……教えてあげなーい」

「おおよそ見当は付いているんだ。その答え合わせをさせてもらうよ」


 リフルデリカはそう言うと、次の瞬間には少女の眼前へと移動していた。


「――――<魔法統計超解析/ウルトラアナライズ>」


 そしてリフルデリカは少女の頭を鷲掴みにすると、少女に仕組まれた術式の解析を行った。


(やっぱりカバネ氏の魔力を使っていたか……。これだけの数の人体を生成して、かつ際限なく蘇生させるなんて、カバネ氏の魔力を使わない限り、絶対にありえないと思っていたんだよね……)


 リフルデリカは解析を完了させると、少女から距離を取った。


「――――あーあ。バレちゃった。でも肝心のお兄ちゃんが何処にいるのか分からない訳だから、私を倒せるって訳じゃないよね?」

「そうだね。でも倒せないのはお互い様だ。世界を股にかけて、好きな人とかくれんぼをするのはそこまで悪い話じゃないさ」

「あ。お姉ちゃん、お兄ちゃんのこと好きなんだ」

「うん。少なくとも、君みたいに生意気な妹よりはね。――――<軛すなわち剣/ヨーク>」


 リフルデリカは詠唱を完了させると、その手には光り輝く剣が握られていた。


「リフルデリカ。状況を説明しろ」

「はいはい。――――どうやらカバネ氏の魔力を流用することによって、こんな馬鹿げた戦い方を可能にしているみたいだね。要するにカバネ氏さえ取り戻せば、僕らの勝ちさ」

「場所は」

「分かってたら苦労はしないさ……」

「方針すわなち確認。お二方はどうするおつもりですか?」

「愚問だ。叩き潰す以外に何がある?」

「あはは。僕もブラックバレット氏に賛成だ。運が良ければ、ここにカバネ氏が居る可能性だって十分にあるんだからね」


 リフルデリカは気楽な様子でそう言った。


「――――勝てると思うの? 絶対に倒せないのに?」

「そうだね。確かに今は勝てないさ。――――でも、負けないよ?」


 リフルデリカはそう言うと、静かに笑った。


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