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ハイゲーマー・ブラックソウル  作者: 火野ねこ
五章
144/200

【144】死闘の果て


 一


「――――<祓う闇王/ダークロード>!!」


 鹿羽が詠唱を完了させた瞬間、あまりにも禍々しい巨大な門が出現した。

 そして巨大な門の中からは、炎を身に纏った巨大な骸骨が姿を見せていた。


(――――神位に属するという第十階位魔法の更に上……。確か、極位魔法と言っていたっけ……。発動まで時間が掛かる上、その間は術者は動けない訳だから、あまり興味は無かったけれど……。――――確かにこれは脅威的だね……)


 瞬間、骸骨はその巨大な腕をリフルデリカに向かって振り下ろした。


 リフルデリカは難なくその攻撃を回避したが、巨大な骸骨はその体躯からは想像もつかないほどの機敏な動きを見せると、リフルデリカを捕らえようと両手を伸ばした。


(――――でも、所詮は魔力で出来た物体に過ぎない。僕の剣で斬れない道理は無いね!)


「はあああああああ!!」


 避け切れないと判断したリフルデリカは猛々しく雄叫びを上げると、その手に握り締めた剣を超高速で振るい、伸ばされた骸骨の両腕を切り刻んだ。


 両腕をバラバラにされた“祓う闇王/ダークロード”は怨嗟の叫び声を上げると、そのまま細かい粒子となって消滅した。


(は……っ! 随分と贅沢な時間稼ぎだ……っ!)


 リフルデリカは、心の中でそう吐き捨てた。


「――――<創造の災厄/ギンヌンガガプ>!!」


 リフルデリカが“祓う闇王/ダークロード”の相手をしている間に、鹿羽は次の詠唱を完了させていた。

 瞬間、真っ白な魔法陣が天井を覆い尽くすと、全てを焼き尽くす光が降り注いだ。


 しかしながら。


「――――何でまだ生きてんだよ……」

「君だって……、どうして魔力が尽きないんだい……? その綺麗な石こそ何でもアリじゃないか……」


 鹿羽が持つ最大の攻撃魔法は、あらゆる魔法を無効化する“虚無の術式/ナシングネス”の防御の上から、リフルデリカにダメージを与えていた。

 しかしながら、決定打と言うには、まだまだダメージが足りていないのが現実だった。


「大規模イベント用に貯めてた超絶レアアイテムなんだけどな……っ!!」


 鹿羽は複雑な感情を吐き出すかのようにそう言うと、再び手に持った宝石に力を込め、魔法を詠唱した。


「――――<祓う光王/ライトロード>!!」


 鹿羽が詠唱を完了させた瞬間、今度は“祓う闇王/ダークロード”の時とは全く対照的に、神々しい光の門が出現した。

 やがて光の門は静かにその扉を開くと、中からは六本の腕を持つ巨大な騎士が出現していた。


(冥界の王の次は、天界の王を呼び寄せるとはね……っ。道具に頼っているとはいえ、君は最高の魔術師だよ……っ!)


 騎士の六本の腕には、全て神々しい剣が握られていた。

 騎士は表情が読み取れない鎧兜の上からリフルデリカの姿を捉えると、六本全ての剣を機敏に振るった。


(――――だけれど、魔術師は僕に勝てない。“魔女”ほど有名なものではないけれど、僕には“魔術師殺し”という名前だってあるんだからね)


 瞬間、リフルデリカを中心に、剣閃が瞬いた。


 リフルデリカは、一瞬の内に“祓う光王/ライトロード”の六本の剣を全て断ち切っていた。


「速過ぎだろ……っ!――――<創造の災厄/ギンヌンガガプ>!!」


 鹿羽は一瞬で二つの宝石を砕くと、再び“光”がリフルデリカに降り注いだ。


 しかしながら、リフルデリカが止まることはなかった。

 想像を絶する熱量に焼かれながらも、リフルデリカは剣を握り締め、鹿羽に肉薄していた。


「――――僕の術式はあらゆる魔法を防ぐ筈なのに、やっぱり君は凄いね」

「なあ……。俺達、友達だろ……?」

「そうだね。良き友人“だった”と思うよ?」

「畜生……っ!」


 鹿羽は吐き捨てるようにそう言った。


 瞬間、リフルデリカの剣が、再び鹿羽の首を落とした。

 そしてそのまま、鹿羽の身体は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。


「……」


 しかしながら、リフルデリカは警戒した様子で剣を構え続けていた。


「……ようやく、終わりか」


 どれだけの時間が経過したのか、リフルデリカはウンザリした様子でそう言うと、額の汗を拭った。


「――――いい加減にして」


 瞬間、笑う少年の剣が、リフルデリカの胴部を貫いた。


「が……っ!!」


 リフルデリカは一瞬、驚愕の表情を浮かべたが、すぐに真剣な表情で少年から距離を取った。

 あまりにも突然の出来事だったが、リフルデリカは混乱する様子もなく、冷静に行動出来ていた。


 しかしながら、笑う少年から滲み出る“気配”に、リフルデリカの表情は暗いものへと変化した。


「ああ。理解した。理解したよ。君か。君だったんだ。そうだね。君ぐらいだ。いや、君しかありえない」

「――――これ以上、傷付けないで」


 少年は薄気味悪く笑っていたが、その口調は何処か咎めているようだった。

 対する少女の表情には、これ以上ない憎悪が滲んでいた。


「エシャデリカ……っ!!」


 リフルデリカは、この世界の中で最も嫌悪している存在の名を口にした。


 対する少年は、静かに笑っていた。


(――――状況は最悪の最悪だね……っ。もし時間を何度でも巻き戻せると言うのなら、たとえ僕でも勝ち目は無い……っ。でも、“ここ”を放棄して逃げるのが最善の選択肢なのか……っ?)


 リフルデリカと鹿羽の二人は、剣を構えたまま、静かに睨み合っていた。


(今更だ……っ! 分霊箱を作り、再起を誓ったあの時も……っ! 生き残れば貴様を殺す機会は必ずやってくる……っ! 今度こそ……っ! 今度こそ絶対に殺してやるぞエシャデリカ!!)


 戦っても勝てないと判断したリフルデリカは脱兎のごとく飛び出すと、そのまま少年から距離を取った。


 そしてリフルデリカは、鹿羽を閉じ込めておく為に隠していた出入り口を再び出現させようと魔力を集中させた。


 しかしながら、いつまで経っても、出口はリフルデリカの前に現れなかった。


(出口が消えた……? まさか……っ)


 リフルデリカは慌てた様子で振り返ると、笑う少年が静かに立っているだけだった。


(カバネ氏の肉体を通じて“世界意思”に干渉することで、僕の権限までも奪ったのか……っ)


 リフルデリカは忌々しそうに少年のことを睨み付けた。


 すると、少年の表情から笑顔が消えた。


「――――待って。出てきちゃ駄目。私が戦う。だから」


 そして少年は苦悶の表情を浮かべると、頭を抱えて、ブツブツと独り言をし始めた。


「――――駄目。私だよ? 私だよ? ねえ。違う。違うの。私が私なの。私は偽物なんかじゃない」


 リフルデリカの存在すら気に留めた様子もなく、少年は苦しそうにそう言った。


 リフルデリカは今が好機であることを何となく理解していたが、それよりも少年の変貌ぶりに驚き、その場から動けないでいた。


 そして少年はハッとしたような表情を浮かべると、苛立った様子で口を開いた。


「ち……っ。また変なことしがったなリフルデリカ……っ!」


(元に戻った……?)


 リフルデリカは、鹿羽の人格が再び入れ替わったことを理解した。

 そしてリフルデリカは、鹿羽本人が自分の身に何が起きているかを理解出来ていないことにも気が付いていた。


(まあいい。エシャデリカの件は後だ。――――ここでカバネ氏を殺しても、また復活する可能性が高い……。話が通じる内に引き分けに持ち込んだ方が得策だね……)


 リフルデリカは、目の前に居る少年が確かに鹿羽であることを確認すると、静かに口を開いた。


「――――はあ。ハッキリ言って、君がここまでやるとは思わなかったよ」

「あ……?」

「だけれど、僕には届かない。まだやるかい?」

「……殺すつもりだったのに、見逃してくれるって言うのか?」

「不本意だけれど、これ以上魔力を浪費したくないというのもあるかな? まあ、君がまだ戦いたいって言うのなら、どちらかが死ぬまでやってあげてもいいけどさ」


 リフルデリカは淡々とした様子でそう言った。


 鹿羽は息を吸って、そして静かにそれを吐くと、ニヤリと笑った。


「――――じゃあ続けようぜ? どちらかが死ぬまでな……っ!」


 リフルデリカの表情が、一瞬だけ歪んだ。


「……驚いたね。君は無謀な戦いに挑むような性格じゃなかった筈さ」

「何か勘違いしているみたいだが、別に俺は何も変わってねえよ。――――お前こそ無謀な戦いに挑むような性格じゃないからな。お前が戦いたくないってことは、俺に勝算があるってことだろ?」


 リフルデリカは、鹿羽のことを二重の意味で侮っていたことを後悔した。

 鹿羽自身は決して強くはなかったが、規格外の魔力量を有するなど、実力に未知数な部分が存在した。

 そして鹿羽は、リフルデリカが考えていたよりも、リフルデリカ自身の性格や行動をよく理解していた。


(もう少し痛め付けておくべきだったみたいだね……)


「それに、良い魔法を思い付いたんでな。これならお前ともやり合える。――――<楔それは剣/ウェッジ>」


 鹿羽は詠唱を完了させると、リフルデリカが持つ光の剣とは対照的な、黒く禍々しい剣を生み出していた。


 そしてその剣は、リフルデリカが最も嫌悪する存在が振るっていた剣だった。


「……随分と悪趣味な魔法だね。僕の教えた魔法はもう使わないのかい?」

「は……っ! 言われた通り使ってやるよ……っ!――――<軛すなわち剣/ヨーク>!!」


 鹿羽はもう一度詠唱を完了させると、今度はリフルデリカのものと同じ剣を手にしていた。

 鹿羽の両手には、二本の剣が握り締められていた。


(“あの剣”を発動させながら、“軛すなわち剣/ヨーク”を使うなんて……っ。いや、これもエシャデリカの力と判断すべきなのか……?)


 鹿羽は対照的な二本の剣を強く握りしめると、リフルデリカに向かって飛び出した。


「はあああああああああ!!!!」

「く……っ!」


 鹿羽は、右手に握り締めた禍々しい剣を勢いよく叩き付けた。

 対するリフルデリカは手堅く受け止めると、そのまま押し返し、鹿羽の体勢を崩した。


 リフルデリカはそのまま薪割りのように上から剣を振り下ろしたが、鹿羽は二本の剣を交差させる形でそれを受け止めていた。

 剣を受け止められたリフルデリカは苛立った様子で舌打ちをすると、後方に下がりつつ魔法の詠唱を開始した。


「――――<未知の断罪/ヒドゥンスパイク>!!」


 リフルデリカは膨大な数の半透明の杭を生み出すと、全て鹿羽の元へと射出した。


「魔法相手なら存分にやってやるよ!!――――<黒の断罪/ダークスパイク>!!」


 対する鹿羽もまた、数え切れないほどの漆黒の杭を生成すると、降り注ぐ半透明の杭を迎撃する形で一斉に射出した。


 数えきれないほどの杭は全て互いにぶつかり合い、そして相殺されていった。


「全く……っ! 論理的なことはてんで駄目なくせに、手先だけは相変わらず器用なんだね!!」

「褒め言葉だな!!」


 両者の剣が再び、交錯した。


(不味い……っ。予想以上に消耗している……っ。カバネ氏が“あの剣”を使っているのが原因か……っ)


 鹿羽が持つ禍々しい剣――“楔それは剣/ウェッジ”は、相手の生命力を少しずつ奪う力を持っていた。

 リフルデリカが持つ剣――“軛すなわち剣/ヨーク”ほどの切れ味はないものの、その耐久性能は同様に凄まじいものであり、リフルデリカの最強の防御魔法――“虚無の術式/ナシングネス”すらも貫く、強力な破壊力さえ有していた。


(エシャデリカ……っ! 貴様は……っ! 貴様は何処まで僕の邪魔をすれば気が済むんだ……っ!)


 リフルデリカは、心の中で吐き捨てるようにそう言った。


「はあああああああああ!!!!」


 瞬間、鮮血が舞った。


 リフルデリカの突きが、鹿羽の左の脇腹を貫いていた。


 一方、鹿羽の二本の剣が、リフルデリカの心臓と腹の中心を貫いていた。


 そして鹿羽はリフルデリカを押し倒す形で、リフルデリカの身体ごと剣を地面に突き刺した。


「か、は……っ」


 リフルデリカの口から、鮮血が流れた。


「はあ……。はあ……。手間、かけさせ……、やがって……。はあ……」

「ど、どうして、殺さないんだい……? 少し、でも、剣を動かせば……、簡単に殺せるだろう……?」

「うるせえ……。ぶっ殺すぞ……」


 鹿羽は息を切らしながら、吐き捨てるようにそう言った。


「君は……、優しいね……」

「あ……? 身体に剣をぶっ刺された状態で言うセリフなのか……?」

「認め、よう……。僕の負け、さ……。――――でも解せない……。君はどうして、僕を倒そうとしたんだい……?」


 リフルデリカは一転、穏やかな口調で質問を投げ掛けた。


「知りたいか……? 今まで俺に掛けた迷惑に対して誠心誠意謝罪するって言うなら……、教えてやらんこともない……」

「今まで悪かったよ……。さあ……、教えておくれ……」

「……」


 リフルデリカの軽薄な態度に、鹿羽は何とも言えない表情を浮かべた。


「――――お前と俺の“世界意思”を破壊する。それだけだ」


 瞬間、リフルデリカは再び剣を握り締め、鹿羽を斬り伏せようと動いた。


 しかしながら鹿羽はそれよりも早く、剣を持つリフルデリカの腕に剣を突き立てた。


「絶対そうすると思ったぜこの野郎……っ」

「ぐ……っ! やはり君はエシャデリカの回し者か……っ! 初めから……っ! 僕のことを陥れる為に……っ!」

「勘違いするな……。どちらかと言えば……、俺もエシャデリカっぽい奴に殺されかけてる……。俺はお前の味方じゃないが……、エシャデリカの味方でもねえ……」


 鹿羽がそう言うと、リフルデリカの身体から力が抜けていった。

 リフルデリカは既に胴部、肩、腕、そして心臓を貫かれ、辺り一面は流れ出た血液で真っ赤になっていた。


 鹿羽はあまり気が進まなかったが、念の為に胸の辺りに剣を突き立てた。


(――――油断した隙に後ろから刺されたら、堪ったもんじゃないからな。あとで蘇生させてやる訳だから、悪く思うなよ)


 鹿羽はリフルデリカが息絶えたことを確認すると、剣を消滅させ、静かに歩き出した。


 しかしながら。


「何なんだよ……」


 鹿羽は苛立った様子でそう言った。


 歩き出そうとした鹿羽の右足首を、少女は倒れ込んだまま掴んでいた。


「――――諦めろリフルデリカ。お前の負けだ」


 鹿羽は吐き捨てるようにそう言ったが、対する少女は何も言わなかった。


「……っ」


 少女は、泣いていた。


「――――カバネ氏……。お願いだ……。“世界意思”を壊さないでおくれ……。“あれ”が無くなってしまえば……。エシャデリカを殺すのが難しくなってしまう……。頼むよ……。僕はエシャデリカを殺せれば何だっていいんだ……。何だって言うことを聞くよ……。君の奴隷になったって構わない……。だから……」


 少女――リフルデリカは懇願するようにそう言った。


 対する鹿羽は、何も言わなかった。

 鹿羽は、胸ぐらを掴む形で、ゆっくりとリフルデリカの身体を持ち上げた。


「……」


 そして鹿羽は、リフルデリカの頭に思い切り頭突きを食らわせた。


「――――どう、して」

「ぐ……っ。いってぇ……。――――黙って大人しくしてろ……。俺だって疲れてんだよ……」


 鹿羽は吐き捨てるようにそう言うと、リフルデリカをそのまま地面に叩きつけた。


 今度こそ、リフルデリカが再び動くことは無かった。


 鹿羽は大きく息を吐くと、遺跡の奥へと歩き出した。


 二


(――――これが“世界意思”、か……。一体誰がこんなものを作ったんだか……)


 鹿羽は、遺跡の最深部の更に奥にある、小さな部屋に辿り着いていた。

 その小さな部屋の壁や天井にはビッシリと文様が刻まれ、鹿羽の目には典型的な遺跡の風景のように映っていた。


(幸い、リフルデリカとの戦いでアイテムを使い切らないで済んだからな。チャチャっと極位魔法ぶっ放して帰るとするか)


 鹿羽は、部屋の中心に置かれた水晶玉に目を向けた。

 その水晶玉に刻まれた術式が一体何を意味するのかは、鹿羽には全く分からなかったが、少なくとも良いものには思えなかった。


 鹿羽は魔力を回復させる効果のある宝石とキャストタイムを省略する効果のある宝石の二つを砕くと、淡々と詠唱を完了させた。


「――――<創造の災厄/ギンヌンガガプ>」


 巨大な魔法陣から降り注いだ光は、一瞬で水晶玉を粉々に破壊した。


(思ったより、あっけなかったな)


 鹿羽は“世界意思”が完全に破壊されたことを確認すると、静かに部屋を後にした。


 三


「――――よお。元気か?」

「……」

「無視するんじゃねえよ。魔力で起きてるのバレバレだぞ」

「やって、くれたね……」

「ああ。やってやったぞ」

「――――これでもう、“僕ら”にあった特別な力は失われてしまった……。エシャデリカを殺す為には、“世界意思”の力が必要だったというのに……」


 リフルデリカは鹿羽のことを睨み付けながら、忌々しそうにそう言った。

 対する鹿羽は気にする様子もなく、淡々とリフルデリカの腕を掴むと、そのまま自身の首の後ろに回して、リフルデリカの身体を持ち上げた。


 そして鹿羽は、力が籠もっていないリフルデリカの身体を半ば引きずる形で歩き出した。


「――――僕をどうするつもりだい……?」

「別にどうもしねえよ」

「は……。それじゃあ僕はこれから……、どうすれば良いんだろうね……」

「知るか。今まで通り、食べ歩いて、大好きな魔法の研究でもすれば良いんじゃないか?」


 鹿羽は素っ気無い様子でそう言った。


 鹿羽はリフルデリカの身体を支えたまま、静かに歩き続けていた。


「――――お前さえ良ければ、前みたいに一緒に居ればいいんじゃないか? 俺としては、そうしてくれると助かる」

「は……っ。僕のことを口説いているのかい……? 君が僕から全てを奪ったくせに……」

「全てなんかじゃねえよ。――――まあ、後悔はさせないつもりだ。これで良かったって、そう思えるぐらいには頑張ってやるよ」


 鹿羽は再び、素っ気無い様子でそう言った。


「は……。頼もしいね……。僕に導かれることを望んだ人は沢山いたけれど、僕を導こうとしているのは君が初めてかもしれない……。――――ああ。嫌だな……。変な気分になってきたかもしれない……」

「リフルデリカ。俺にはお前が必要だ。一緒に来てくれ。いや、一緒に来い。たとえお前は嫌でも、俺は無理矢理お前を連れていく」

「僕の意思は関係ない、か……。全く酷い告白だね……」

「悪いな」

「――――いや、構わないよ……。――――ああ、不思議な気持ちだ……。口にしたくはないんだけれどね……」

「行くぞ」

「……うん」


 鹿羽とリフルデリカの二人は遺跡の外に出ると、空は清々しいほどに晴れていた。


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