雨は晴れる
拙い文章ですがよろしくお願いします。
僕、天水時雨には高校で付き合っていた彼女がいた。
彼女の名前は双葉芽愛。
双葉芽愛は綺麗なサラサラのセミロングが似合う黒髪で、笑顔が可愛い女の子だった。
芽愛とは高校2年からずっと同じクラスで、高2の初夏ぐらいに付き合い始めた。
眩しい夕日が差し込む夕焼けの教室だった。
誰もいなくなった教室でそんな雰囲気だったと思う。いつの間にか芽愛は距離を詰めて、僕の目を真っ直ぐに見つめていた。
「好き」
とただ一言だけ。僕の耳に響いてきた。僕も僕で芽愛のことを嫌いじゃなかった。女子の中でも1番中が良かったし、一緒にいて楽しかった。付き合うならこんな子がいいなと懸想したこともある。僕もきっと好きだったんだろう。
「僕も」
だから僕もただ一言好意を伝えた。
彼女の顔は照れて赤いのか夕焼けで赤いのか分からなかった。
僕の顔も赤かった、彼女がそれに気づいたのかは今となっては分からない。
そうして僕達は付き合い始めた。
今思えばすごいことだなと思う。もしどちらかが拒絶したら今まで仲良くしてきたことができなくなってしまう。変化は必ず良い方向に向かうとは限らない。僕達の変化は良いものだった。友達から恋人へとランクアップしたのだから。
最初は手を繋いだり、顔が赤くなったり、照れまくったり、愛い恋人だった。僕は初めてのことばかりで上手く接することができなかったかもしれない。
「可愛い」
芽愛はそう言って僕をからかう。可愛いだったとしても彼女に言われると途端嬉しくなった。
彼女には経験があったのかもしれないが僕は聞かなかった、聞きたくなかった。
でもそんな時間も楽しかった。深く彼女を知れたり、彼女が僕に合わせてくれたり、あーでもない、こーでもない、とりとめのない会話すらも、心ときめく逢瀬だった。
誕生日やクリスマス、バレンタインなどのイベントにはプレゼントを贈りあったり、お返しをしたり。恋人らしい事を一通りしてきた。
ペアアクセサリーや、マフラー。手作りチョコなど、安価なものだったけどそれでも僕達は、僕は幸せだった。
そしてその変化は悪いものでもあった。
いつだったろう。
それが当たり前でなくなったのは。
いつだったろう。
彼女の手が怖くなったのは。
いつだったろう。
彼女に話しかけられる度、上手く言葉に出来なくなったのは。
いつだったろう。
僕が僕でなくなるような気がしたのは。
嫉妬。
独占欲。
そんな醜い感情がだんだんと僕の心を塗りつぶしていった。
芽愛は元から男女構わず人気がある、いや誰とでも仲良くなれる器量がある。
だから女子に囲まれるだけでなく、男子と話すこともままあった。
本当にいつからだったのだろうか。
芽愛と会話をする男子に嫉妬し始めたのは。
本当にいつからだったのだろうか。
「痛いっ、時雨」
彼女の手を強く強く握りしめてしまうほどに強くなった独占欲が現れたのは。
その時やっと僕は我に返った。そして思い知った。僕の自分勝手な感情で知らぬ間に芽愛を傷付けていた事を。そんな自分がとても許せなかった。
彼女が好きという感情が彼女を傷付けた。それだけが僕の事実。
そこからは急速に浮かれていた熱が冷めていった、いや違う、無理やり冷ました。
だんだんと交わす言葉も減り、触れ合うことも減っていき。
卒業と同時に僕達の関係は自然消滅した。
卒業最後の日に、僕達は最後の邂逅を果たした。僕は申し訳なさでいっぱいいっぱいだった。
「ごめん」
「...」
芽愛は何も言わなかった。きっと愛想をつかしたんだ。その時の表情は分からなかった、見えなかった、いや、うん、見なかった。僕に彼女を真正面から見る勇気はなかった。
僕は僕から君を守るために....
いや、きっと僕の為だけに彼女から離れた。
そうして僕達の約2年の淡い恋は終わった。
ご一読ありがとうございました。