砂漠のオアシスちゃん
昨日冒険者達から金を巻き上げたアーサー君は俺に昼飯を奢ってくれるのだそうだ。考えてみれば働いたのは俺で、アーサー君は立って居ただけで金を設けたので少し納得いかない気がする。でもまあ、金が金を呼ぶって言うからアーサー君の所には金が寄ってくるのだろう、生まれた時に銀のスプーンを持って生まれて来たタイプの人間なんだろうな。イケ面だし高身長だし、金髪だし王子だしな。考えてみたら凄い勝ち組だなアーサー君って。
「大介君、ここで良いのかね?金は有るからもっと高級な所で良いのだよ」
「ここがいい、普通の学食って来たこと無いからな」
先週アーサー君に奢って貰った高給学食は口に合わなかったので、今日は普通の学食にやって来た。昼休みなので大勢の学生が利用している、普段の俺は昼飯は抜きなので今日が学食デビューだった。
此処は普通の学生用なので、高級食堂と比べて広かった。4~6人掛けのテーブルが沢山並べてあって300人以上が一度に食事を出来る様になっていた。但しテーブルや椅子は安物だった、庶民用って感じだな。
「へ~安いんだ、定食が300ゴールドか、これなら俺でも食えるな」
「珍しい物が沢山有るな、どれも始めて見るものばかりだよ」
俺が値段を気にして、アーサーはメニュウを気にしていた。これぞ役割分担、俺達は良いコンビだった。2人で定食を頼んでテーブルを探している所に俺の大介イヤーがトラブルらしきものを聞き付けてしまった。
「左前方32メートルにトラブル発見」
「どうしたんだい?大介君、また厄介事かな」
「どうやら女の子が絡まれている様だ」
「それは一大事!助けよう、紳士の嗜みだよ」
正義感の強いアーサー君に連れられて女の子を助けに行くことになった、スタスタと歩いて行くアーサー君、だが何時もの様に違う方向へドンドン進んでいく。俺は定食のお盆を持っているので早く歩けないのだ、何故アーサーはあんなに早く歩けるのだろう?止める間もなく明後日の方に行ってしまった。
「乙女よ待っていたまえ!このアーサーが必ずや・・・・・・」
「チョッ、アーサー! チョッと待てって」
アーサー君は耳が少々遠い感じなのだ、仕方ない俺ひとりで行くことにする。まあトラブルを解決するのは得意だからな、俺が行けば必ず解決するのだ。
トラブルの方は分かり易い状況だった、一人の女の子に3人の不細工な男が声を掛けているのだ。女の子に声を掛けるのは構わないが、断られたらあっさり引くのが男の決まり事ってヤツだ。脅かして言う事を聞かせようとするのは脅迫ってヤツだ、つまりは犯罪だ、俺は犯罪者は嫌いなのだ、見つけ次第ボコる事にしているのだ。
「なあなあ、イイジャン、一緒に飯食おうぜ!」
「飯食った後は、一緒に良い事しよ~ぜ」
「・・・・・・」
女の子は男3人に囲まれて下を向いていた、怖くて震えている様だ。周りは見てみないふりをしているようだ。馬鹿っぽい男に関わり合いたくないのだろう、気持ちは良く分かる、馬鹿が移りそうだから俺も近づきたく無いのだ。
「はいはい、チョットごめんよ」
女の子と男の間に割り込んで、女の子の隣に座る。俺が一緒にご飯を食べて女の子を守ってあげるのだ。ついでに若いお姉さんとお話をしたりすると楽しいのだ。
「やあ、俺は大介。一緒に昼飯食べようぜ!」
うつむいていた子にニッコリ笑って話しかける。ナンパ野郎の100倍の押しの強さに女の子はうなずいた。押しは強いが邪念が無いので、大介は極一部の女の子に結構好かれるのだ。
「てめ~、何してくれるんだ!」
「見て分からんのか?巨乳のお姉さんと昼飯を食べておるのだ」
「てめ~!」
大介の胸ぐらを掴もうとした瞬間、相手の体が宙を舞った。床に叩きつけられてピクピク動いているが意識は無い様だ。大介は男に触られると無意識に殴ってしまうのだ、彼は男に触られるのが嫌いなのだ。
突然の容赦の無い暴力に男達は呆然としていた、警告も威嚇も全く無い突然の暴力なのだ。目の前にいる男が自分達とは全く違うタイプの人間だと分かった様だった。
「目障りだ、消えろ」
横に立って床で痙攣している仲間を見ていた男に大介は小さな声で言った。小汚い顔を見ていると飯が不味くなるので大介は不機嫌だった。大介の警告に仲間の2人は即座に反応して逃げ出そうとしたが、大介が一人の腕を掴んで引き止めた。
「なな、何ですか! 直ぐに行きますから。二度と近づきませんから!」
「床のゴミを拾っていけ、お前の仲間だろうが」
痙攣している仲間を抱えた男は凄い勢いで食堂から逃げ出した。
「何だ大介君、ここに居たのか。暴漢はどこだい?」
「アイツ等なら何処かに行っちまったぜ、アーサーが怖かったんだろうな」
「ハハハハ、それは残念だ。僕も良いカッコがしたかった」
アーサー君は大声で残念そうな感じを出して、俺の向かいの席に座った。
「やあ、お嬢さん。ご一緒させてもらうよ、僕は彼の親友のアーサーだ」
イケ面のアーサー君が座った事で女の子は少し落ち着いた様だ、俺だけだと怖いだろうからな。
「有難うございました、あの人達しつこくて困ってたんです」
「イイって事よ、お陰で綺麗なネーチャンと飯食えるしな!」
「ふむ、成程お美しい、お名前は?」
「攻撃魔法学科2年のアリシアと申します、王子様」
「・・・・・・僕の事を知っているのかい?」
「アーサー様は学園では有名ですよ、王族の方は珍しいですから」
アーサー君とアリシア先輩が和気あいあいと話をしているので、俺は先輩の巨乳をチラ見しながら昼飯を食った。やはり綺麗なお姉さんは良いもんだな、男ばかりだと殺伐としてしまうからな。砂漠のオアシス美人ちゃんって感じだな。
「魔法学科って何だ? 先輩」
「魔法学科は魔法を学ぶ所よ」
「アリシアさんも魔法が使えるのですか?」
「使えるわよ、ほら」
アリシア先輩は指先に小さな炎を灯した、それは俺が始めて見る魔法だった。でも昼間だからショボかったのは内緒だ。
「それが魔法か~、良いな~、俺も魔法が使いて~な」
「うむ、私も使いたい」
「使えると良いわね」
魔法は魔力が無いと使えないのだそうだ、それに魔力だけあっても適正ってものが有って何でも使える訳じゃ無いのだそうだ。そこら辺を1年生で習って、2年生から本格的に各人に合った魔法を覚えていくのだそうだ。1年時は一般教養、2年から色んな学科に分かれるのだそうだ。魔法学科にも攻撃魔法学科、回復魔法学科、支援魔法学科、魔法戦士学科と言うものが有るらしい。因みにこの学園の2割位の学生が魔法を使える様になるって話だった、残りの8割は魔法が使えずに卒業する事になるそうだ。つまり魔法使いはエリートって事だな。
でも何で俺は特待生で入れたんだ? 俺は魔法が使えないんだがな。