ごめんねギルマス
身長2m、子供が見たら泣き出す様な凶相、手に持った武器は大型の斧。何処からどう見ても悪役にしか見えないがギルマスらしい。この冒険者ギルドの一番偉い人なのだ、俺は何故かこのオッサンと戦わなくてはいけないらしい。立会い人の王子様が余計な事をするからだ、親友だと思っていたら地雷かも知れないな。
そして俺達を囲んでいる暇人の冒険者達、ちゃんとクエストをしてれば良いのにわざわざ俺とギルマスの練習試合を見に来ていた、そして当然の様に始める賭け。冒険者だけあって皆賭け事は大好きな様だ。
「大介に賭ける奴はイネ~のか!賭けにならね~ぞ!」
「薬草クエスト10回連続失敗の奴に賭ける奴なんてイネ~ヨ!」
「「「「違いねえ!ウエ~ハッハッハ!!!!」」」」
「待ちたまへ!僕が賭けようじゃないか。大介君の親友であるこの僕が!」
親友アピールをしながらアーサー君が無駄に大きな声で賭けにのっていた。アーサー君は目立つのが大好きなのだ、そして王子だけあって金を持っているのだ。彼は金貨1枚を賭けて冒険者達に大受していた。
「さあ両者とも心置きなく戦い給え!私がアバロン王国の名誉に掛けて見届けよう!」
何だかギルマスと俺の影が薄かった、場は完全にアーサー君に持って行かれた感じだった、これが王族のカリスマって奴なのかも知れないな。イケメン王子の才能を見たような気がする。
「サッサと掛かって来い!ルーキー!」
一方、主役の座を奪われたギルマスは不機嫌だった、だが相手が悪い。一国の王子を相手では高々地方ギルドのギルマス程度では荷が重かった。もしかしたら、自分は関わってはいけない人物に係わってしまったのだろうか?と言う疑問が少しだけ心の中に浮かんだ。
「そんじゃ、行くぜ~!」
大介は冷静な時は非常に堅実な攻撃をする。リスクを徹底的に排した戦い方だ、つまり相手の死角から攻撃して相手が反撃する前に離脱するのだ。
「ワハハハ~!!!死ね死ね!」
ボコ!ボコ!
「痛て!痛て!ちきしょう~!何て素早いんだ」
大介はギルマスの後ろに回り込み後頭部を木刀で乱打して、ギルマスが振り返る前に又背中に回り込むのだ。動きの遅いギルマスは大介の姿を捉える事さえ出来なかった。
「何だあの動き、身体強化の魔法か!いや!空間移動か」
「ギルマスが一方的に殴られてるぞ、信じられん。いや、そもそも大介の動きが見えん」
「クソ!ちょこまか動きやがって、卑怯だぞ!」
「クククク、自分より強かったら卑怯なのか?フフフ、弱者の悲鳴は心地よいの~」
何と言われようとも平気な大介にギルマスは焦っていた。昨日今日冒険者になった小僧に負けるとギルマスとしての面子が丸つぶれなのだ。
「ワハハハ~!何も出来ずに沈むが良い!」
バシ!バシ!バシ!バシ!
大介の背中からの攻撃が激しくなる、後頭部を殴るのに飽きたのか、今度は尻を木刀でメッタ打ちにしだした。
「イテ!イテ!イテ!ちきしょう~情けね~」
「うん?」
突然大介がギルマスから距離をとる。何やらギルマスの雰囲気が変わった様だ。ギルマスの体が一回り大きくなり筋肉に血管が浮いてくる、武器の木製の斧にも何やらうっすらと赤いオーラが付いていた。
「済まんなルーキー、こっからは本気で行かせてもらう。負けるわけには行かないんでな」
「大人気ね~な、身体強化に武器に魔法付与だぜ。ルーキー相手に何する気だ?」
「ルーキー相手に身体強化だと、ギルマスは新人を殺す気か」
「逃げろルーキー!殺されるぞ!」
周りの観客が騒ぎ出した、ギルマスが身体強化の魔法と武器に魔法をかけたようだ。なんかヤバイっぽい感じがした、手抜きをしたのが不味かったか?一撃で沈めた方が良かったのかな?
「済まんなルーキー!」
ギルマスが轟音と共に斧を振ってくる、当たるとヤバそうな音がする。あれに当たればオークなら即死だろう、オーガなら骨が折れる位かな。
「へ!・・・・・・・何で当たらね~んだ」
「遅いからだ!それじゃ行くぜ!」
ギルマスが狂ったように斧を振り回すが俺には当たらない、身体強化しても俺はヒラヒラ斧を躱し背中の死角に入り込む。
バシバシバシ!ビシ!
「ギャ!ギャ!イテ~!」
1秒間に10発木剣で殴り、最後の1発は耳を殴る。ギルマスは律儀に悲鳴を上げ続けている、何だか少し涙目になっている様な気がする。だが気にしない此れは男同士の戦いなのだ、手加減は良くないのだ。
「大介君、可哀想だからそろそろ止めを刺したまへ」
「よっしゃ~!行くぜ~!」
木剣を捨ててギルマスの正面に仁王立ちをする。正面から敵を粉砕するのだ、チビチビ相手を痛めつけてダメージを蓄積させて、心をへし折り最後は格好良く必殺技で相手を倒す、これこそが歴代ヒーローが編み出した敵の倒し方なのだ。
涙目のギルマスの目に光が蘇った、始めて俺と打ち合えると知って心が蘇った様だ。だがそれを正面から打ち破り勝利するのが鈴木大介と言う漢なのだ。
「死ね~!小僧!」
「お前が死ね!」
身体強化し武器に炎を付与した斧を大介は正面から迎え撃った、1秒間に150発のパンチを打ち込む大介、10発目に斧は砕け散り、ギルマスの体は大介のパンチでボロボロにされてゆく。
1秒後、大介の足元にはボロくずの様になったギルマスが倒れていた。大介は一仕事終えた感じでドヤ顔をしていた。
「勝者、大介!」
「「「「・・・・・・・」」」」
アーサー君の勝利の宣言が上げられたが、周囲はお通夜の様に静かだった。俺はこの雰囲気に詳しいのだ、俺がやり過ぎた時に良くこの雰囲気になるのだ。
「ギルマス~!しっかりして下さい!」
受付のお姉さんが泣きながらギルマスにしがみついていた。何だか俺が悪い事をしたみたいだった、何だか周りの目が痛い様な気がする。泣いてるお姉さんの傍に違う人がやって来て回復魔法を必死にかけていた、益々俺が悪いような感じになって来ていたので帰れなかった。俺は腹が減ったから帰りたいのだ。
「あ!気がつきましたか、ギルマス」
「・・・・・・」
ギルマスは生き返った様だ、受付のお姉さんが喜んでいた。でもギルマスはまだ意識が朦朧としている様だ、何故か俺も誰だか分からない様な顔をしていた。俺は場の雰囲気が非常に悪いので場を和ませる為に謝罪する事にした。
「あ~、ギルマス」
「うん?」
「強すぎて御免ね!」
「・・・・・・クソ~!!!!!!!」
ギルマスが泣き出したので俺はアーサー君と帰ることにした。これで彼も上には上がいる事に気がついただろう、彼が成長する為には必要な事だったのだ。俺は少しだけ良い事をしたので気分が良かった。アーサー君は金貨1枚が金貨3枚と銀貨50枚に増えたので喜んでいた。
「ふっ、敗北が知りたいぜ」
冒険者ギルドのギルドマスターをボコボコにした大介は冒険者ギルドに行きづらく成ってしまった、だがそんな事を気にする大介では無かった、彼は都合の悪いことは直ぐに忘れちゃうのだ。
過去の作品を読んで下さる方が居て嬉しいです。全然進歩していないので申し訳無いのですが。