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G級冒険者 大介

 魔法学園の授業には真面目に通っている、同じ部屋のアーサー君と同じ講義を受けているので朝から晩まで一緒に行動しているのだ。流石に毎日顔を見るのも飽きてきた、そこで俺は毎週土日は学園が休みなので冒険者ギルドに行ってクエストを受注して金を稼いでいた。アーサー君の顔を見なくて済む事と寮費を稼げて一石二鳥なのだ。


「ねーちゃん、これお願い」


「大介君、又薬草採取ですか。そして必ず失敗ですよね!いい加減成功させて下さい」


「大丈夫!今日は自信が有るんだ、薬草の画像を撮影して来たんだぜ」


 ギルドの受付のお姉さまは怒っていた、俺が薬草採取クエストを9回連続失敗しているせいだ。俺だって好きで失敗している訳では無いのだ、どれが薬草か分からないから採取出来ないだけなんだ。そこの所を分かってほしいもんだな。それに流石に俺だって10回目のクエストは成功させようと思って学園の図書館から薬草の書かれれてる絵を写して来たのだ、俺のガラケーには薬草の写真がバッチリ写っているのだよ、但し画面が小さくて良く分からないのが問題なのだが。


「それって絶対嘘ですよね!何時も薬草は全然無いくせに、オークやオーガの魔石はドッサリ持って帰っていますよね」


「俺が薬草を探していたらアイツ等が襲ってくるんだ、仕方なく倒してるだけだ。俺は本当に森で薬草を探しているんだ」


 受付のお姉さまは俺を疑っていた、勿論俺は嘘を言っている。薬草を集めても金に成らないから、森の奥深くでオークやオーガを探して討伐しているのだ。だって俺はF級冒険者なのでオークやオーガの討伐クエストを受けられないから仕方無いのだ。


 だって考えてみてくれ、薬草採取って草を10本集めてひと束にしたのが1000ゴールドなんだ、頑張って集めても金に成らないのだよ。それに引き換えオークを倒すと魔石に変わって1個3000ゴールドになる、オーガなんて1個10000ゴールドになるんだ、俺が血眼になってオークやオーガを探すのは当然なのだ、俺は貧乏な苦学生だからな。


「それじゃあお姉さん、行ってきます」


 俺とお姉さんのやり取りを聞いていた冒険者が陰で笑っていた。俺の大介イヤーは陰口を絶対に聞き逃さないのだ、俺の悪口を言った冒険者の顔を睨みつけ記憶に刻みつけておく、何時か思い知らせてやるのだ。


「おお~怖え~、F級の奴に睨まれたぜ!ウエ~ハッハッハ」

「やめろよ!お前。殺されるぞ」

「何でだよ、薬草採取に失敗する雑魚だぞ」

「馬鹿!アイツはやばいって、オーガやオークの魔石をたんまり持って帰る奴だぞ!」

「そんな奴いね~よ!オーガを一人で狩れるのはB級だぞ!薬草採取なんてする訳ね~だろ」


 俺だって好きでオーガを狩ってる訳じゃない、金の為に仕方なくやっているのだ。これは仕事なのだ、嫌なことをするから金に成る、好きな事や気持ち良い事にはお金を払わなくてはいけないのだ。とか言ってみたが、ぶっちゃけオークやオーガを狩るのは簡単だった、薬草と違ってアイツ等は俺を襲って来るので探さなくても良かったのだ、襲ってくる相手を虐殺するだけの簡単な仕事だった。


「今日は真面目に薬草を探すか」


 何時もの癖で森の奥までやって来たが、今日こそは薬草を探そうと思っている。さっきから地面を探しているのだが全然それらしい草が生えていなかった。

 薬草採取は簡単だと思われているが、そう簡単では無いのだ。薬草は何処にでも生えている訳では無い様だ、多分特定の場所にだけに群生しているのだろう、森の中をむやみに探し回るのは素人には無理っぽかった。しかし、大介の頑張りはやっと報われる。


「おおお~!薬草みっけ!」


 クエスト10回目にしてやっと見つけた薬草らしき草を見つめて、大介は地面に手を付いて眺めていた。薬草探しに集中しすぎて周りを警戒して居なかったのは大介の油断であったが、大介の集中力の高さでも有った。


「ガアアア~!!!!」


「うお!」


 突然の咆哮と共に大介の頭に棍棒が振り下ろされる。目の隅に棍棒を認め、必死に横に転がるが少し棍棒が頭を掠めてしまった。

 オーガの力は普通の人間の男の3倍位ある、その棍棒が頭を直撃すれば人間の頭は粉砕されるのだ、例えかすっただけでも結構な衝撃が有り、簡単に大介の頭から出血した。


「ゴアアアア~!」


「!!!」


 オーガは棍棒を振り上げて威嚇して来る。大介は素早く起き上がってオーガを睨みつけた、そしてオーガの足元に薬草が有るのを見つけて激怒する。東京に来てから初めての激怒だった、大介の周囲の温度が急激に下がり、大介の瞳が爛々と輝き出す。オーガは恐怖から咆哮を止めて後ずさりを始めた。


「許さんぞオーガ!俺様の薬草を踏む潰すとは、いい度胸だ!」


 背中を向けて逃げ出したオーガに一瞬で追いつき正面に立つ。今回は正面から力で倒すつもりのようだ、普通なら背中から平気で攻撃するのだが怒りで冷静な判断力は無くなっていた。


「来いよ!もしかしたら、俺様に勝てるかもしれないぞ」


 オーガより遥かに小柄だが10倍凶暴な戦闘民族キュウシュウジンがにやりと笑った。頭からの出血は既に止まっており、傷口は早くも治り始めていた。

 激怒した大介は強かった、殴るたびにオーガの巨体が浮き上がり骨が折れる。蹴ればオーガの巨体が吹き飛び地面を転げ回るのだ、オーガは悲鳴を上げる事しか出来なかった。その悲鳴も僅かな時間で聞こえなくなってしまった。


「折角の俺様が見つけた薬草ちゃんが・・・・・・、オーガ許すまじ!」


 薬草を踏みにじったオーガを倒したが大介の怒りは収まらなかった。それからは虐殺の時間だ、全力でオーガを探し回った大介はその日の午後15匹のオーガを倒した。2度とオーガに薬草採取を邪魔されたくなかったからだ。大介が正気に帰ったのは腹が減った夕方だった。


「お姉さん御免、薬草採取失敗した」


「何ですかこれは!オーガの魔石が15個とか訳分からないです!!オマケに中にハイオーガの魔石も1個混じってましたよ!ハイオーガってB級の魔獣ですよ、B級の冒険者チームで討伐する化物なんですよ!」


 俺は薬草採取に失敗した。これで10回連続薬草採取失敗だ、ギルドの新記録だそうだ。そして受付のお姉さんに怒られている。失敗するだけならお姉さんは慰めてくれたかも知れないが、オーガの魔石を持って帰ったのが不味かったらしい、お姉さんは激怒していた。


「すいません、反省してます」


「10回連続失敗ですからペナルティです!降格です!」


「申し訳ない」


 俺は素直に謝った、俺は自分のミスは甘んじて受け入れるのだ。これぞ九州男児なのだ、言い訳はしないのだ、でもオーガが悪いって心の中では思っていた。オーガさえ出てこなければ俺は薬草を少しは見つけられたと思うのだ。


「今日から大介君はG級冒険者です!FからGに降格です!」


「G級!・・・・・・なんか格好良いな!気に入ったぜ」


 こうして俺は冒険者ギルド初のG級冒険者に成った。A級やS級は何人も居るが世界広しと言えどもG級は俺だけだ、つまり世界一って事だ。俺にふさわしい名称だと思った、それに俺はモンハ○の2Gを2千時間ほどやったハンターなのだ、俺にとってGとは良い印象しかなかった。


 オーガの魔石は大金になった、薬草採取は10回連続失敗したが10回のクエストで稼いだ金は100万ゴールド程になったので当分バイトはしなくて良い様だ、最悪学園をクビになっても俺は冒険者でも生きて行けそうだった。帰ったら寮費を1年分払込もう、持っていると無駄遣いして無くなるからな、あくまで堅実がモットーな大介だった。


 一方冒険者ギルド3階、ギルマスの部屋で受付嬢は大介について報告をしていた。目立つ冒険者や危険な冒険者をギルマスに報告するのは受付嬢の仕事なのだ。


「ワハハハハ~、薬草採取10回連続失敗ってスゲ~な!そいつは馬鹿なのか」


「馬鹿じゃ有りません、薬草採取の振りをしてオーガを狩りまくってます、むしろ悪知恵が働く様です」


「オーガを狩る?何か魔道具でも使ってるのか、それとも魔法使いか?」


「どうやら素手で狩ってる様です、見た目は普通なんですが異常です」


「ふ~ん、見てみたいな。もしかしたら俺並みに強いかもな」


「ギルマスでも舐めていたら痛い目に合いますよ、大介君は変わってますからね」


「元A級の俺が負けるわけね~だろ、今でもB級上位の力は有るはずだ」


 こうして大介は冒険者ギルドのギルマス、元A級冒険者に目を付けられるのであった。

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