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冒険者

 次の日、アーサーと一緒に冒険者ギルドに行くことになった。しかし、東京って思っていたのと違って田舎だった。高層ビルがまるで無いのだ、俺の田舎より田舎な感じだった。多分此処は東京でも郊外の方になるのだろう、県庁から離れると直ぐに田舎に成るのは日本なら何処でもそうだからな。それとも可能性としては此処は映画村みたいに中世の世界を造って観光や映画の撮影何かに使ってるのかもしれないしな。


 どっちにしろ俺は方向音痴だからアーサーに付いて行くのが一番だ、一人で何処かに行くと必ず知らない変な場所に着くのだ。俺はこれを自分に掛けられた呪いか何かだと思っている、知らない場所では100%迷う事は異常だからだ。


「見えたよ大介君、あれが冒険者ギルド東京支店だよ」


「ふ~む、何か変だな。俺の知ってるハロワじゃない」


 俺の田舎のハロワって自動ドアなのだ、それに何処にでもある無個性な建物が多いのが特徴なのだが、目の前に有る冒険者ギルドの建物は木造3階建ての目立つ建物だった。そして一番の特徴は入口のドアが西部劇の酒場に出てくる様な押すと開く両開きのドアだった。

 そして中に入ってビックリ、若い人間ばかりが屯していた。田舎のハロワは老人しか居なかったのだがな、まあ東京だから俺の田舎とは違うのだろう。


「さあ大介君!僕らの冒険が今始まるのだ、覚悟は良いかね?」


 何だかアーサー君が興奮している、豪華なマントをバサっと広げて無駄に格好を付けて俺を見ていた。


「ああ、良いぜ。登録するんだろ」


「うむ、いざ行かん。冒険の旅路に!」


 アーサー君が芝居がかった態度で、大声を出すのでギルドに居た連中は露骨に嫌そうな顔をしていた。しかしアーサー君は王族だ、目立つことに慣れているのか平気な顔をしていた。俺は平民なので迷惑を掛けた周りにペコペコして謝っていた。


 そしてアーサー君は迷わず一番巨乳の受付嬢が居る窓口にスタスタ歩いていった。ここら辺は流石に王子だな、堂々とした態度で進むので周りが道を譲るのだ。まあ一見して上流階級に見えるし、関わると凄く厄介な事に成りそうな感じなので周りが遠慮するのだ。


「冒険者登録をお願いする」


「はい、承りました。ではこちらに名前を書いて下さい」


 俺はアーサーの後ろから受付での作業を見ていた、名前を書いてカードの様な薄い金属に血を垂らしたら終わりだった。多分血液からDNA情報でも読み込んでいるのだろうかなりのハイテクの様だった。俺の番が来た時もアーサーの真似をして直ぐに終わった。


「おめでとうございます、これであなたはF級冒険者ですよ」


 その後冒険者の注意点何かを簡単に説明を受けて終了、簡単なものだった。さて登録が済んだので金を稼がなくては成らない。壁に貼って有る仕事を自分で選んで受付に出せば良いらしい。


「え~と、コンビニのバイトが無いのだが・・・・・・」


「コンビニとは何かな?聞いた事がないね」


 掲示板には俺の知っている様なバイトが無かった、薬草採取とか飛び兎を5匹治めるとか田舎じゃ聞いた事が無いようなものばかりだった。


「・・・・・・なんだこれ」


「大介君、初めてのクエストは決まっているのだ。薬草採取!これしかない」


 アーサーは自信満々で掲示板に貼られてあった紙を受付に持っていき、俺に向かって親指を立てた。何でも薬草を集めてカウンターに持って来るだけの簡単な依頼らしい。初心者は先ずこれからするのだそうだ。


 そしてアーサーに連れられて草原に・・・・・・草原なんて東京に有るのか?何やら向こうには森が見えている様な気が・・・・・・。まあ、あれだ、東京と言えども都心から離れれば俺の田舎と変わらないって事だな。


「さあ大介君、探したまへ!」


「何を探すんだ?」


「薬草?」


「俺は薬草とか分からないぞ、アーサーは知ってるのか」


「見たことが無いな、薬草から造るポーションなら見た事が有るのだが・・・・・・」


 俺達の冒険は僅か10分で終わった様だ、まあ人生なんてこんなものだな。俺は諦めて帰ろうとしたのだが、アーサー君は嫌がっていた。格好良くギルドを出てきた手前直ぐに帰るわけにはいかないのだそうだ、王族の面子って奴なのだろう。俺はそんな事は気にしない、薬草を知らないのに薬草採取は無理なので違うクエストを貰おうと思ったのだ。受付のお姉さんに「出来ませんでした、(๑≧౪≦)てへぺろ」って言えば良いだけだと思うんだ。


「大介君、森に行こうじゃないか。そこで適当な草を引き抜いて持って帰ろう。それで一応面子は立つはずだ」


「適当に草を持って帰っても駄目じゃね?」


「ならば森で冒険者を探して薬草について聞くのはどうだろう?冒険者ならば薬草位は知っているのではなかろうか」


「おう!それだ、他人を当てにするのは大好きだぜ。聞くは一時の恥って言うからな」


 面子の為に直ぐに帰りたくないアーサーと、金が欲しい俺の利害が一致したので森に取り敢えず行ってみる事になった。まあ何か有ってもアーサーは立派な剣を持っているから大丈夫だろうと思っていた、俺はジャージの上下に手ぶらだから当てにされても困るのだが。


 2人で森の小道をブラブラ歩いて行くが、誰も居ないのでドンドン奥の方へ歩いて行く。森林浴って奴だな、隣が綺麗なネーチャンだったら嬉しいのだが、アーサーは残念ながら男だった。男2人で歩いても疲れるだけなのだな。


「うん?悲鳴かな・・・・・・」


「悲鳴?」


 大介イヤーは森の奥から10代の女の子の悲鳴を聞きつけた。大介は田舎育ちなので非常に耳が良いのだ、条件が良ければ1キロ先の針が落ちる音を聞くことが出来たり出来なかったりするのだ。森の奥600メートルから15歳位の女の子の悲鳴が聞こえた事をアーサー君に教えてあげた。


「助けなければ!王は民を守らねば成らない」


 アーサー君は大声を上げると森の中に走り込んでいった。全然違う方向だったので俺はアーサー君を捕まえて正しい方向へ向けてあげた。

 大介の言うとおり600メートル程の森の奥で女の子が豚みたいな男達に襲われていた。地面には仲間の男なのだろうか2人が頭から血を流して倒れていた。そして女の子は豚の顔をした男に地面に押さえつけられていた。


「助けに来た!豚共、その子から手を放すのだ!」


 森の中から飛び出したアーサー君は腰の剣を抜いて豚男達に大声で言い放った。豚男達は身長は俺と同じぐらいで肥って居たので体重は100キロ位有りそうだ、女の子に覆いかぶさっている豚男の他に後2匹居て2匹とも棍棒を持っていた。


「なあアーサー、殺っちまって良いのか?それとも殺したら不味いのか」


「こいつらはオークだ、人を襲う悪い魔獣なのだ。見かけたら成敗せねばならん!」


 アーサーはオークと睨み合っていたので俺がやる事にする。3匹の驚異度の高い順に片付けるのがセオリーって奴だ。来る途中で拾っていた拳大の石を棍棒を持っているオークの顔面に投げつけ更に追撃する。


「ブギャ!」


 顔面に石が当たってのけぞった所に大介の右のラリアットが炸裂する、100キロの巨体が宙を2回転して地面に激突する。ラリアットで折れた首に更に衝撃が加わり今にもちぎれそうに成っていた、隣のオークは驚いた顔をしていたが大介の回し蹴りが首に当たった衝撃で顔自体が有らぬ方向へ向いていた。


「アーサー!さっさと殺れ!」


「あ、ああ」


 アーサーが俺の方を見ていたので、注意してやる。戦いの最中に敵から目を離すのは危険なのだ、戦いとは攻撃有るのみなのである。アーサーは驚いた顔をしているオークの胸に剣を突き刺してちゃんと成敗した。腰の入った良い形だった。胸に刺した剣を引き抜くのに苦労していたので、こういう場合は足で蹴って剣を外すやり方を教えてやった、キュウシュウジンなら皆知っているのだが、育ちの良いアーサー君は体に刺さった剣や槍の抜き方を知らなかった様だ。


 助けた女の子の世話はアーサー君に任せる事にした、アーサー君はイケ面なので女の子に受けるはずだ。俺は目つきが悪いから初対面の人間からは怖がられるのだ。


「大丈夫かなお嬢さん、我々が街まで送っていこう」


「・・・・・・有難うございます、仲間は?」


「一応生きてるみたいだぞ、息は有る。頭を殴られて気絶してるみたいだな」


 地面に転がっていた男2人は派手に血を流していたが生きていた。頭の怪我から派手に出血したらしい、意識が戻ったら一緒に街に送って行く事にした。


 意識を取り戻した男2人とオークに襲われていた女の子は冒険者だった。3人でチームを組んで森の中に薬草を探しに来ていてオークに襲われたのだそうだ、命の恩人の俺達に凄く感謝していた。


「初クエストは失敗だったなアーサー」


「構わないよ、3人助けられたから僕は満足さ」


 アーサーはクエスト失敗を全然気にしていなかった、いい笑顔で笑っていた。やっぱり此奴はイケ面だなって思った。薬草採取のクエストは失敗したが、オークを倒した後にビー玉が3個出てきたので冒険者ギルドで買い取って貰った、ビー玉ではなく魔石と言うのだそうだ1個3000ゴールドだったのでアーサーと2人で半分こした。まあ初クエストは4500ゴールド、銅貨45枚になったから成功かも知れないな。


 しかし東京ってのは俺の田舎と違ってオークが出てくるんだな、田舎では猪や鹿が出てきたから似たようなものかも知れないな。







 


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