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アーサー君

 学園初日は何事もなく終わった。高校までと違い自分で好きな講義を選らんで単位を取っていく形式なので少しややこしい。好きな科目だけ取っても駄目で、必須科目って奴も取らなくてはならないからだ。考えると頭が痛くなって来る作業だった。


 だが俺はこういう場合の対処方法を知っていた。真面目な奴の真似をすれば良いのだ、俺は頭は悪いが要領だけは良いのだ。


「アーサー君、僕らは友達だよね」


「勿論だとも、大介君」


「僕は友人である君と同じ講義を履修しようと思うんだ、良いかな?」


「光栄だよ大介君、一緒に学ぼうじゃないか」


 アーサーの選んだ講義を丸写しにした俺は、前期の講義選びに悩む事は無くなった。アーサーは王族だからきっと優秀なブレインが後ろにいて取りやすい講義何かを知ってるに違いない。それに同じ講義なので代返や試験勉強なんかでもとっても便利だと思うのだ。やはり持つべきものは友だよな。


「所で君の使ってる字が書ける棒は何だい?」


「ボールペンがどうかしたのか?」


「インクを付けなくても書けるなんて凄い魔道具だね」


「欲しいのか?」


「嫌々、そんな高価なものは貰えないよ」


「ハハハハ~」


 どうやらアーサーってのは冗談が好きなようだ。俺としてはアーサーが使っている羽ペンの方が遥かに高価だと思うのだ、高貴すぎて安物のボールペンを見たこと無いのだろう。俺は自分が使っていた2色のボールペンをアーサーにあげる事にした。


「うわ~!ナニコレ、赤い文字まで書けるよ!魔法だよね!」


「うむ、喜んでくれて嬉しいぜ。喜び過ぎだとは思うがな」


 イケメンの王子が300円のボールペンを持ってピョンピョン飛び跳ねている光景は中々シュールだとは思うが、この位の方が俺としても気安くて歓迎だ、堅苦しい人間だと肩がこるからな。


「腹へったな」


「僕が奢るよ!好きな物食べてよ」


「マジか!」


 貧乏な俺は、昼飯を我慢しようと思っていたのだが、ボールペンのお返しにアーサーが昼飯を奢ってくれるらしい。此処は遠慮なく頂くとしよう。王子様だから金は沢山持ってるみたいだしな。


 学食は余り広くなかった、100人位で一杯になる程の広さしかない。これで学生達全員が昼飯を食えるとは思えなかったのだが、ここは高級な学食で普通の生徒用の学食は別に有るのだそうだ。流石は王子様、俺みたいな貧乏人とは何もかも違う様だった。

 食堂のメニューを見てみたが、外国語の様で読めなかったのでアーサーと同じ物を頼んでもらった。高級店なのでフランス語か何かなんだろうな、アーサーが話していた言葉も分からなかった。俺は昔から英語とか外国語は苦手なのだ。


「どうだい?大介君」


「うむ、まあまあだな」


 料理は高級そうな銀の皿に盛られて来たのだが、味はイマイチだった。焼肉のタレをぶっかけて食ったら美味そうなのだが、俺には素材の味なんて分からないからな。それに料理は塩味がメインで単調な感じがした、俺は高級品を食いなれていないから分からないのだろうなって思った。アーサーは美味しそうに食べていたので、多分高給品は俺には合わないのだろうな。

 それよりも気になったのは、給仕をしてくれるお姉さまがメイド服を着ているのだ。これがメイド喫茶って奴なのか?俺の地元には無かったからガン見してやった、流石は東京だけの事は有るな感動した。


「大介君、メイドをジロジロ見るのはマナー違反だよ」


「すまん、始めてメイドを見たから珍しかったのだ」


「大介君の故郷にはメイドが居ないのかい?」


「うむ、田舎過ぎて居ないのだ。飲み屋のお姉さんは結構居るのだがな」


「ふ~ん、僕の国とは違うんだね」


 俺の田舎は田舎過ぎてメイド喫茶は無かったのだ、隣の県には有ったんだがな。俺も一度位はメイド喫茶に行ってオムライスを食ってみたかったぜ。メイドさんにオムライスにハートマークを書いてもらいたかったのだ、自分でハートマークを書いて食べるオムライスは虚しかったからな。


 ご飯を食べ終わった後でアーサーが支払いをしている所をさりげなく見ていると銀貨で支払っていた様だ、高級店は日本円が使えないのだろうか?まあ、俺が来ることは無いから構わないけどな。


「アーサー、さっきの金は銀貨なのか?」


「銀貨だよ、銀貨2枚」


「円は使えないのか?」


「円って何?」


 俺は少しだけ持っていた金を見せてやった。アーサーは日本円を始めて見たらしい、まあ外国人だから当然と言えば当然だが、俺としては凄く困るのだ。俺が持っている乏しい日本円が使えないと学食が使えなくなってしまうのだ、まあ少ししか持ってないから大したダメージでは無いが。


 俺は早急に金を稼がなくてはならない様だ。朝飯と晩飯は寮で食えるとして、寮費を稼がなくては領を追い出されてしまうのだ。


「なあ、アーサー。金を稼ぎたいんだが?何か良いバイトは無いかな」


「バイトが何かは知らないけど、お金を稼ぐなら冒険者でしょ」


「冒険者?」


「そう、冒険者ギルドでクエストを達成してお金を稼ぐらしいよ」


 どうやら東京ではハロワの事を冒険者ギルドって言うらしい、そこで日雇いの仕事を探して金を稼ぐようだ。早速明日行ってみよう、講義はアーサーに代返をしてもらえば良いだろう。


「アーサー、明日は代返頼む。俺は冒険者ギルドに行ってくる」


「明日は休みだよ大介君、僕も一緒に行くよ。冒険者に成ってみたかったんだ!」


 王子って変わってるな、バイトに憧れるとは。高貴な人間って何処かずれてる様な気がする。しかし俺は生活が掛かっているのだ、全力で稼がなくてはな。








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