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歴史の影の"FLASH"

 アーサー老人に先導され、アデルたち3人はAB牧場の奥に構えていた屋敷に通された。

「ふむ?」

 アデルから今回の依頼について聞かされたアーサー老人は、首を傾げた。

「そんな用事だったか。『F』のところから来たと聞いたから、もっと大事な話かと思っていたが」

「いや、でも息子さんが大変なんスよ? 『そんなこと』って……」

 そう言ったロバートに、アーサー老人は苦笑を返す。

「今更おしめを変えてやる歳でもあるまい。息子だってもう、40を超えた真っ当な大人だ。自分の尻は自分で拭うさ」

「は、はあ、……そっスか」

 ぴしゃりと言い切られ、ロバートは言葉を失う。

「あの」

 と、アデルが手を挙げる。

「『F』ってなんですか?」

「うん? ……ああ、失敬。あいつがそんな話を、いち部下でしか無い君たちに話すわけが無かったな。

『F』は彼の、戦時中のコードネームだ」

「彼って……、パディントン局長の?」

 そう尋ねたエミルに、アーサー老人は深々とうなずいて返した。

「うむ。J・F・パディントン。ミドルネームから取って、コードネーム『F』と言うわけだ。

 ちなみに私のコードネームは『A』。ま、チーム名の語呂合わせに使われた形だがね」

「チーム名? と言うかあなた、局長と一緒に戦ってたの?」

 エミルの問いに、アーサー老人は得意満面の笑みを浮かべる。

「そうとも。と言っても、前線でドンパチしていたわけじゃない。

 南北戦争時代、南軍の情況をつまびらかにすべく暗躍した極秘の諜報班、それが我ら『FLASH』チームだ」




 時は1862年、東部戦線に異状アリ!

 緒戦より北軍は南軍の進撃を御しきれず、あわや首都ワシントン陥落か、と軍本営が肝を冷やす局面が続いていたッ!

 この情況を重く見たとある将軍は――今なお名前は明かせんが――当時より優秀と評されていた我ら5名を集め、特別諜報チームを編成するよう命じたッ!

 リーダーには我らが俊英、ジェフ・F・パディントン!

 副リーダーは知る人ぞ知る賢将、リロイ・L・グレース!

 さらにこの私、アーサー・ボールドロイド、そしてジョナサン・スペンサーとハワード・ヒューイットの精鋭3名を加え、それぞれの名前や名字、ミドルネームから頭文字を拾い、チーム名は「FLASH(そう、即ち閃光ッ!)」と名付けられたッ!

 結成後すぐ、我ら5人はV州へと密かに渡り――




「あ、あの、ちょっと?」

 自慢話を朗々と聞かせようとしてきたアーサー老人を、アデルが慌てて止める。

「何かね、赤毛君?」

「アデルバート・ネイサンです。その、南北戦争の頃にスパイなんかいたんですか?」

「ネイサン君、君は阿呆か」

 ぴしゃりと言い放ち、アーサー老人は呆れた目を向ける。

「古より戦争の要は兵站と情報だ。弾が無ければ銃は撃てんし、敵の居場所が分からなければ、その弾を何万発撃とうとも意味が無い。

 そもそも諜報活動などと言うものは、紀元前5世紀のチャイナの書物『サン・ヅ』において1チャプター丸ごと使ってとうとうと述べられるほど、古来より発達・洗練されてきたのだ。それ以降も、過去の大きな戦いでは必ずと言っていいほど、スパイ活動は行われている。古今東西を問わずな。

 事実、先の戦争においても、我々がつかんだ情報により戦局が動いた事例は、決して少なくはない。片手では数え切れんくらいにな」

「ねえ、一つ聞いていいかしら?」

 と、今度はエミルが手を挙げた。

「構わんよ」

「確認だけど、あなた昔から、局長と親しかったのね?」

「そうだ」

「じゃあ、今でも連絡を?」

「たまに手紙が来る程度だがね」

「それじゃ探偵局のことも、局長があなたを始めとする失踪した著名人の居所をリストアップしてることも、もしかしてご存知だったのかしら?」

「知っているどころか、後者の件は私もいくらか手を貸している」

「えっ!?」

 思いもよらない話に、エミルを含め、3人が目を丸くした。

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