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「空回り」

 エミルたちの筆談に、ロバートもたどたどしく続く。

《おれがさぐり入れて気ましょうか》

《『気』じゃなくて『来』だアホ

 チラチラ見てきてる以上 俺たちは少なからずマークされてるはずだ そんなとこにノコノコ忍び寄ったら 即ボコられるぞ》

《じゃあ 池になんかいい方方が?》

《『池』じゃなくて『他』、『方方』じゃなくて『方法』

 いい考えがあるわ》

 そう返し、エミルは何かを書き綴った。


 1時間後、列車はとある駅に停車した。

 それと同時に、エミルたちは席を立つ。

「……!」

 それを見て、二組の男たちはガタガタと立ち上がり、それぞれ窓の外に目をやる。

「……いや、違う」

 と、エミルにデズと呼ばれていた銀髪の男が、エミルたちのいた席を見て、首を横に振る。

「茶髪の若僧が残ってる。かばんもだ。用足しにでも行ったんだろう」

「そ、そうですか」

 デズの言葉に、彼に同行していた男たちは座り直す。それを見て、捜査局員と思しき者たちも腰を下ろした。

 が――出発の時間になっても、エミルたちは席に戻って来ない。

「……チッ、まさか!」

 デズは勢い良く立ち上がり、席に一人残っていたロバートのすぐ横まで迫り、彼の胸ぐらをぐいっとつかんで立ち上がらせる。

「うげっ、なっ、なんスか!?」

 苦しそうな表情を浮かべ、顔を真っ赤にするロバートに、デズが怒鳴りつける。

「てめえ、囮になったな!? ミヌーはどこだッ!」

「みっ、見りゃ、分かるっしょ? ここにゃ、いないっス、って」

「……クソがッ!」

 デズはロバートを突き飛ばし、同行していた男たちに怒鳴る。

「おい、出るぞ! だまされた! ミヌーたちはここで降りてやがる!」

「え、ちょっ」

「も、もう動き始めて……」「うるせえ!」

 うろたえる男たちに、デズは怒鳴り返す。

「てめえら、ボールドロイドの手がかり見失ってもいいってのか!? どうなんだ、ああ!?」

「い、いや、そりゃ」

「それは、その」

「いいから出るぞ!」

 男たちがまごついている間にデズは窓を開け、外へと飛び出す。

 残された男たちも、奥にいた捜査局員たちも、慌ててそれに付いて行った。


 デズたちが下車して、3分ほど後――。

「どうだった?」

 客車の扉を開け、エミルたちがロバートのいる席へと戻ってきた。

「どうもこうも。首絞められてぎゃーぎゃー怒鳴られたっスよ」

「ま、そーゆーヤツなのよ。だから手を切ったんだけどね」

「ちなみに、今までどこにいたんスか? あいつら、完璧に列車降りたと思ってたみたいっスけど」

「貨物車に隠れてたのよ。で、動き出してから屋根伝いに、ね。

 それでロバート、あいつら今回の件に関係しそうなこと、何か言ってなかった?」

 エミルに問われ、ロバートはこくりとうなずく。

「言ってましたっス。デズってヤツが、『ボールドロイドの手がかり見失ってもいいのか』っつって」

「なるほどな」

 それを聞いて、アデルもうなずき返す。

「捜査局のヤツらもいないってことは、目的は同じってことだろうな。

 だが妙なのは、何故捜査局もデズたちも、ボールドロイド氏を探してるのか、だ」

「どこかの駅で電話借りて、サムのヤツに聞いてみたらどうっスか?」

 ロバートがそう提案するが、エミルは肩をすくめる。

「捜査局がサムじゃなく、あんなのを寄越して尾行させるってことは、捜査局はあたしたちに、自分たちがボールドロイド氏を探してることを知らせたくないのよ。もしその辺の話をオープンにしてたら、最初からサムを寄越すでしょうし。

 となれば、サムが何か知らされてるって可能性は、まず無いわ。聞いても電話代の無駄でしょうね」

「うーん……、そうっスよねぇ」

「とりあえずあいつらのことは、今は放っておきましょ。判断材料が無いのに判断したって、ろくなことにならないし」

 そう返したエミルに、アデルも賛成する。

「だな。

 ま、目障りなのがいなくなったんだ。後は目的地まで、のんびりしてりゃいいさ」

 アデルは駅で買ってきたらしい新聞を広げ、読み始めた。

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