表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

猫の目と三角形(Yeux de chat et un triangle)

「ミヌー君」

 アーサー老人はデズを囲むアデルたちをチラ、と確認し、エミルに耳打ちした。

「君は何か知っているのかね、このシンボルについて?」

「し、……知らないわ」

 そう答えたエミルに、アーサー老人は首を横に振って返す。

「私の得意分野は人間観察だと言っただろう? 君が嘘をついているのは明白だ。

 隠したいと言うのであれば、今ならあの二人はデズを構うのに夢中だ。私もそう簡単に、秘密を漏らす男ではない。教会の懺悔室より、情報の防衛力は堅固であるつもりだ。

 話したまえ、ミヌー君」

「……その、マークは」

 エミルは震える声で、話し始めた。

「その組織の創始者、シャタリーヌ(Chatalaine)の名前が猫(chat)に通じることと、そしてあなたが推察していたように、世界的な秘密結社の多くが『三角形』をシンボルとして登用していることから、そう言う風にかたどられたの」

「ふむ」

「でも、……その組織は、10年以上前に、潰れたはず。今更こんなものを、持ってるヤツなんて、いるはずが」

「見たところ、ネックレスは比較的新しい。10年ものだとは、到底見えん。せいぜい1年か、2年と言ったところだろう。

 そして『潰れた』ではなかろう。君が『潰した』のだ。違うかね?」

「……ええ、そうよ」

「だが、その組織に詳しい君が見たことのない男たちが、揃ってネックレスを懐に入れている。ネックレスの具合から見ても、組織への加入は、少なくとも2年前だろう。

 この事実だけでも、君が潰したはずのその組織が、2年前には復活していたことは明白だ」

「……っ」

 ネックレスを握りしめ、エミルは黙り込む。

「ともかく、これでつながったよ」

 アーサー老人はもう一つのネックレスを指にかけて軽く振り回しつつ、考察を続ける。

「なるほど。私が予想していた事態が現実になろうとしている、……と言うことだろう」

「……どう言うこと?」

 尋ねたエミルに、アーサー老人は肩をすくめて返す。

「私の情報防衛力は堅固だと言っただろう? 今は明かせん。

 君がもう少し、込み入った事情を教えてくれるなら別だがね」

 そう返され、エミルもアデルたちをチラ、と見る。

「……じゃあ、……1つ、だけ。

 あたしの、昔の名前。エミル・トリーシャ・シャタリーヌよ」

「察するに、その組織の創始者の血縁者と言うところか。恐らくは、……いや、こんな要点のぼやけた掛け合いをしていても、埒が明かんな。約束したことであるし、私ももう少し、秘密の話を明かすとしよう。

 その創始者の名前を、私は知っている。ジャン=ジャック・ノワール・シャタリーヌだろう?」

「……!」

 無言で目を剥いたエミルに、アーサー老人は小さくうなずいて見せる。

「だが彼の死亡は、我々も確認している。確かに11年前だ。その息子も翌年、C州で死体が発見されている。

 察するにどちらも君が殺したのではないかと、私は考えている。どうかね?」

「……そうよ」

 答えたエミルに、アーサー老人は笑いかける。

「打ち明けた秘密が2つになったな。ではもう少し、詳しく話そう。

 彼が組織なんぞを持っていたと言うことは、実は彼の死後に分かったことだ。だから組織について、詳しいことはまるで知らん。恐らくFたちも知るまい。

 だがシャタリーヌ親子が故郷でやっていた悪行も、この国で企てていたことも、ある程度は把握している。恐らく君が彼らを殺害しなければ、合衆国は先の戦争以上の混乱にあえぎ、崩壊の危機を迎えていただろう。

 ともかく昨日、君が私に依頼した件については、調べ次第すぐに伝えよう。もし本当に組織が復活していたと言うのならば、可及的速やかに、再度壊滅させねばならんだろうからな」

「ええ。……お願いね、ボールドロイドさん」

 エミルは深々と、アーサー老人に頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ