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無月島 ~ヒツジとオオカミとオオカミ使いのゲーム~  作者: 天草一樹
第二章:視点はおそらく李千里

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地下迷宮にて

 一体、何が起こったというのだろうか?

 息を乱して地下通路を走っている最中、オオカミは必死に今の状況を分析しようとしていた。

 周りには私同様焦った様子で走るヒツジ達がいる。

 彼らがこの状況を演出できるわけはない。となると、やはりあの人――オオカミ使いの差し金なのだろうか? どちらが裏切り者か分からず、まとめて殺しにかかってきたということか?


 いや、問題はそこじゃない。問題は、爆弾を使ってきたこと。


 オオカミは隣を走っている彼女(・・)に視線を向ける。一瞬だが、お互いの視線が交差した。戸惑った瞳。彼女も今の状況に全く心当たりはないようだ。

 いや、そのことは最初から分かっていた。自分たちが設置した爆弾とは、異なる場所で爆発していたのだから。もしかしたら爆弾の位置を少しずらしていただけかもしれないとも思ったが、その考えは完全に否定された。


 まさか、藤里だろうか? 


 一瞬、藤里の存在が頭をよぎる。だが、それはあり得ないことだとすぐに思い直した。彼女には確かに爆弾のことは伝えておいたが、その設置場所や起爆方法に関しては一切告げていない――いや、正しい情報を与えていないと言うのが適切か。どちらにしろ、彼女が爆弾を利用できるはずがない。万が一彼女(・・)が藤里に伝えていたとしても、このタイミングで爆発を起こした理由が不明だ。いや、理由が不明という意味では、藤里だろうがオオカミ使いだろうが同じことが言える。


 待てよ。音田だったらどうだろうか?


 音田も私同様オオカミ使いを殺そうと企んでいた。そして、私達がやったようにこの館のいたるところに爆弾を設置していたのだとすれば……。ゲームのルールを変えようと言ってきたときは驚いたが、あれは裏切者が私の方であることをアピールしようとしていたのだろう。あわよくば、『追いかけっこ』のどさくさに紛れてオオカミ使いも殺そうと考えていたのかもしれない。だが、話し合いで不利な状況になってきたために、苦肉の策として……? いや、やはりそれはおかしいだろう。大体自爆する必要性がないし、爆発する直前の表情。はっきりと見えたわけではないが、死のうとしている人の顔には見えなかった。

 ふと、別の可能性が思い浮かぶ。

 私はてっきり音田こそがオオカミでもヒツジでもない第三の人物だと思ったが、それは違っていたのかもしれない。いや、違わないにしても、音田が呼び寄せた仲間たち。その中に爆弾を起爆させる手段を持つ人物がいたとしたら。その人物が独断で爆発させたのではないだろうか?


 ……少し落ち着こう。


 私は走りながら胸に手を当てる。

 冷静になって考えてみると、音田一派がやったとは考え難い。今この場で館を爆破させたところで、肝心のオオカミ使いを殺せなければ何も意味がないのだ。もし爆破するなら、本当に言い訳のしようがなく追い詰められた時。もしくはオオカミ使いを確実に殺せるタイミングのみのはず。いくらなんでもオオカミ使いが標的でないということはないだろうし、大量殺人がしたいだけならもっと早くに爆破させればいい。そもそも、私だけでなく音田までオオカミ使いを殺そうとしていたというのが考えづらい。


 なら、やはりオオカミ使いが?


 そう考えれば少し気になることに思い至る。例えば、階段の爆破。なぜ李が二階に行った時点で爆破させたのか。私達を殺すつもりならもっと別のタイミングで爆発させるべきなのに。それから、いつの間にかいなくなった速見と星野。あの二人がどうして勝手に行動し始めたのか。そして、爆弾騒ぎのせいで忘れそうになっていたが、館中の扉が開けられていた理由。そもそもあれをすることができた人物とは?

 疑問を整理していくと、徐々に答えに手が届きそうな気がしてくる。

「一旦休憩しませんか」

 不意に、後ろから声がかけられる。

 その声が聞こえるのと同時に、ドサッという何かが倒れるような音が続く。

 嫌な予感。私はすぐさま後ろを振り返った。

 真っ先に目に入ってきたのは倒れ伏している二人の男女。その上を、にこやかな笑顔を浮かべた橘が飛び越えてくる。

 唖然とする私と彼女(・・)。その首に、無造作に、橘の手が伸びてくる。私は咄嗟に一歩退いてその手から逃れる。だが、彼女(・・)は反応しきれなかったらしく、橘に首をつかまれていた。

「うッ……」

 小さくうめき声をあげて、彼女(・・)がその場に崩れ落ちる。

 私の首をつかみ損ねたのが意外だったのか、橘は驚いた様子で私にもう一度手を伸ばしてきた。彼の手に触れられたらまずい。直観的にそう感じ取り、彼の腹を蹴り上げて距離を取る。

 かなり深く入ったのか、橘は膝をついて痛そうに顔をゆがめた。

 チャンス。

 このまま逃げることも可能だが、どうにも放置するのは危険な気がして、私はもう一度橘を蹴り上げた。特に反撃することもなく、橘は素直に吹っ飛んでいく。

 その様子に拍子抜けして、一瞬気が緩む。その気が緩んだ瞬間を狙っていたように、突如私の背後から人の気配が。急いで振り返ろうとするも、相手の動きが一歩速かった。

 頭に強い衝撃。意識を暗闇へと引きずり込む容赦ない一撃。

 薄れゆく意識の中で、私は何とか襲撃者の方へと顔を向けた。薄暗い地下迷宮の中でも、もっと暗い色をした服。


 なぜ彼女がここに……。


 新たな疑問を抱きながら、オオカミの意識は途切れていった。

これにて第二章終了。次回からは解決編、もとい解説編に入ります。

残念ながらこの話は本格推理ではないため、『読者への挑戦』とかはできませんが、何が行われていたのか? 橘礼人の策とは何だったのか? とか推理してみてください。

暇でしたらその考えを感想やらメッセージやらで送ってくれると嬉しいです。

ではでは、解説編――なんかカッコ悪いな――もできるだけ早く書きますので、最後まで楽しんでいってください。

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