00 抱いたのは
もう書く暇が無いと思い完結する前に一度下げた作品ですが、
もう一度書いてみようと思います。
よろしくお願いします。
彼は〝兄〟として、私が幼い頃にやって来た。
兄と言っても、〝親戚のお兄さん〟ということだけれど。
それでも兄弟のいなかった私は、兄が出来たと喜んだ。
いつも遊んでもらって、ずっと彼の側にいた。
彼と初めて会った日、母と親戚のおばさん達が話しているのが聞こえていた。
内容は、彼が人付き合いが上手くない、だとか何だとか。
リハビリも兼ねて、私の相手をすることで少しはマシになるだろう、と考えたとか。
―それだったら男の子相手の方が良いだろうに。その相手が何故私なのだ。
とは考えなかった。
大体5、6歳の時で、その時の私には意味がよく分からなかった。
今思うと、初めて会ったときの彼はとても無愛想で、ちっとも遊んでくれなかった。
一言も声を出さなかったし、私の目を見ようともしなかった。
彼は、人と向き合いたくなかったのだと思う。
そんな彼だったから、私も最初のうちは話しかけなかった。
けれども何がきっかけだったのか、彼が私と言葉を交わすようになった。
本当に些細なことだったのだろう。
うまく思い出せない。
ただ思い出せるのは、彼―兄に抱いた尊敬と…―