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左遷艦隊  作者: マーキー
提督の誕生
12/50

参謀

「改めてまして、この度、第12独立艦隊、作戦参謀を拝命いたしました橘エルナ中佐であります。」

「第12独立艦隊の司令を務める多田野幸隆です。よろしく。橘中佐。」

「はっ。先の見事な采配は父から聞いております。御役に立てるかわかりませんが、よろしくお願い致します。」

 父親の影響なのか、緊張しているのか、ハーフの顔に似合わぬ少し古風な口調に多田野は、少し驚いた。

「しかし、なぜここまで急に開戦に踏み切ったのか。国力の差から見ても議会が承認するとは思えない。遠藤司令は君ならわかると言っていたけれど。」

「当初、各艦隊に送られた命令書では、アメリアの宣戦布告を受けて、各軍は自衛の為に出動したことになっております。ご存知の通り、帝国両軍の統帥権は皇帝陛下にあり、軍の行動に議会の承認は必ずしも必要ではありません。自衛の為の出撃なら陛下の御聖断だけで十分です。今回の事態を受けて、陛下は議会及び内閣に開戦に関する御下問をなさったと聞いています。それを受けて、議会と内閣は直ぐ様、開戦を決定、現在のような状況になったと思われます。」

「よく知ってるのね。」

 彰子が感心してそういうとエルナは恐縮ですと敬礼した。

「第7艦隊の参謀付き副官を拝命していましたので。」

 第7艦隊は海軍の全艦隊を取りまとめる第1艦隊の支援艦隊として帝都にいる艦隊であり、小規模の艦隊ではあるが、第1艦隊の通信支援や代行なども行うため、全艦隊の中では最も中央の意向が入りやすい艦隊であった。

 彰子がなにか言いたそうに多田野を見た。多田野の許可を待ってから、椅子に腰掛けるように案内する。

「橘中佐。そう緊張しなくても大丈夫ですよ。」

 なるほどと多田野も続けた。

「ここは軍令部の大人の事情から出来た艦隊で、ここにいる神城中佐も、それから司令を務める私も君と同じ20代と若い。同輩と思って気楽にいこう。」

 エルナはちらっと彰子を見て、多田野の真意を確認したようだった。

 大丈夫と彰子が軽く頷いてみせた。

「橘中佐。改めてまして、ヨーテイの艦長を務める神城彰子です。司令はこんな方だから、気張らずに務めれば、大丈夫よ。」

 多田野は彰子のいう「こんな方」というのはどういう事なのか気になったが、とりあえず、笑顔で頷いてみせる。

 その笑顔を見て、エルナは堪えていた何かを出すように大きく息を吐き出した。

「良かった。これ以上、堅苦しい感じで喋っていたら息が詰まって死んでしまいますね。今までいろいろな艦隊を回ってきたんですが、なかなか合わないというか。父から、『この艦隊なら、お前も大丈夫だ。』って言われてきたんですけど、本当みたい。」

 海外では、上下関係が帝国程厳しくなく、誰とでも親しげに会話をするものだとは聞いていたが、いきなりの口調の変化に戸惑った。

「貴方ね。いくら、司令は規律に厳しくないとはいえ、もう少し…。」

 彰子の言葉は、途中でかき消された。

「あ、エルナって呼んでください。橘参謀とか私らしくないので。」

 多田野は遠藤に問題児を押し付けられた事を悟った。

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