自宅警備員山田さんとストーカーは今すぐ異世界へ飛んで行ってほしい
「ヒナター!置いてくなよー!」
私は早足で悟を置いて行こうと思ったが、悟は追いかけてくる。まあ行き先は同じなんだけどね。私は振り返り
「いい加減つきまとうなバカ悟!そんなんだから誤解されるんだよ!」
「誤解・・・?ああ、付き合ってるって噂か」
悟は歯を見せて笑い
「むしろ結婚の約束をしているといいふらしたいくらいだ」
「それ言ったら絶対一生口きかないことにするよ」
言った途端、悟はしゅんとして言わないよ、と言った。
こいつは変態だけど、見た目はいいし学校では猫かぶってるから女子にかなり人気ある。それがまたむかつく・・・。言っとくけど嫉妬ではない。私好きな人いるし。むかつくのは何故こんな変態が人気で普通の私が人気がないか、その一点だ。・・・マジむかついてきた・・・
「おい、変態、姉ちゃんから離れろ」
ナツがイライラしながら割り込んできた。
「離れない、むしろくっつく」
「それ以上くっついたらお前が姉ちゃんと結婚の約束をしてるっていいふらす」
「それいいじゃん!むしろしてください!」
「あーそうしたら悟と口聞かなくなる約束になるから楽になるわー」
「え、それまだ続いてんの?」
「あ、姉ちゃん言っちゃだめだよそれ。もう少しでひっかかるとこだったのに」
「ナツも確信犯かよ!騙されるとこだった!」
わーわーわめく悟うぜぇ・・・その点コカネちゃんは
「・・・」
黙って歩いている。かわいいなーコカネちゃん。見た目ホント可愛いのに・・・
「コカネ、イヤホンで何か聞いてるけど俺を盗聴している時の音声じゃないよな」
「・・・ナツ君の声、素敵」
「マジでやめてくれ」
・・・ストーカーじゃなかったら、お似合いなのに・・・
コカネちゃんは悟と違ってあまりしゃべらないおとなしい子だ。似ている点と言えば顔とそのストーカー具合だ。つまりこの二人は
「ねえねえ、今日も一緒に帰ろうヒナター」
「お前一緒に帰らなくても尾行してるだろうが」
「ナツ君・・・私、ナツ君の後ろ姿、好き・・・」
「・・・(相手にしたくない)」
私たち兄弟のストーカーというわけだ。
・・・泣きたい。
げんなりしていると、前に人がいることに気付く。マスクをしていて黒いサングラス、手にはカメラ・・・そいつは
「帰ろう、ナツ」
「帰りたい、姉ちゃん」
踵を返そうとするとストーカー兄弟が私たちをがっつり捕まえながら反応する。
「出たな、自宅警備員・・・!」
「おい、離せ悟」
このいかにもやばそうな格好の自宅警備員は山田さんと言うらしい。詳しいことは聞きたくないのでシャットアウトしている。山田さんは頷き
「やあ、ヒナタ君。それとナツ君と変態兄弟まで」
「俺は変態じゃない!この変態!」
「ふむ、変態に変態と言われるとは、心外だ」
この小競り合い、いらねぇ・・・山田さんは顎に手をつけ
「兄弟同士でストーカーで愛し合う・・・ふむ、萌えるな」
何がだよ。意味不明なんだよとりあえず目の前から去って!そう思い睨みつけるとカメラ音がした。山田さんが私を撮ったようだ。
「睨みつけるヒナタ君・・・燃えるな」
「おい!彼女から離れろ!(その写真いくらだ!)」
「悟、あんたと縁切ろうかな」
「何で!?」
こいつ・・・その理由がわからないとは・・・生粋のストーカーだな。
「さあて、ヒナタ君、私とらんらんランデブーへと行かないかい?」
・・・こいつも、何故か私のストーカーだ。と言うか私を怒らせて喜んでいるらしい・・・
「おい、ヒナタとランデブーに行くのは俺だ!」
お前、ややこしいからもうやめて。
「君では子供過ぎてランデブーは早い。ガキはエンゼルパイでも食べてなさい」
「なにぃ!?俺はコーヒーが飲めるぞ!」
「甘いな、私はお酒が飲める」
「くっ・・・やるな!」
「ふふふ。まだまだ子供だな」
・・・さーて、今のうちに学校いこっと。
私とナツとコカネちゃんは早足でこのストーカーどもを置いて去った。
しばらくストーカーどもは言い合っていたらしいが近所の人によると
「あんな熱くてくだらない会話見たことない」
と不思議な感想を言っていたとのこと。