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幾つもの夜を超えて  作者: 七草せり
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嬉しさと戸惑いと

夕馬は会社で残業。遅くなるだろう。


いつもの帰り道、私は一人で歩いた。


でも、今日は駅には行かない。




定時に上がった私は、オフィス街を少し抜けた所にある、デパートへ。


明日着る服など選んだ。


……泊まりになるんだ。今日。


私はお泊まりセットも購入し、地下にある食品売り場へ向かった。



残業の夕馬は、きっとお腹空かせて帰って来るだろう。


夕馬の好きな物……。


聞いてない。



私は無難な物を作ろうと、野菜コーナーや、

お肉、お魚のコーナーをうろついた。



心が弾む自分に、浮かれている。



取り敢えず、野菜とお肉を買い、デパートを

後にした。



夕暮れ時の道を、夕馬のマンションまで歩く……。


それだけで、こんなにも嬉しいと思うのか。



正直、色々不安はある。でも……。今はこの

嬉しい気持ちのままでいたい。




マンションに着き、渡された鍵でオートロックのドアを開け、エレベーターに乗った。


「買いすぎたかな。 荷物重たい……」


独り言を言い、夕馬の部屋へ。


部屋の鍵を開け、中へ入った。



もちろん一人で入るのは初めて。


夕馬の部屋を訪れる事も余りない。



玄関に荷物を置き、靴を脱いだ。



夕馬の匂いのする部屋……。


喜びと、やはり戸惑いとが交差する。





食材を冷蔵庫へ入れ、私は先ほど買ったお泊まりセットの袋から、普段着を取り出した。



だって、仕事用の服じゃ……。


心の中で自分へ言い訳する。



キッチンに立ち、夕飯の下ごしらえをした。


「何時くらいに帰るのかな?」



夕馬から、特に連絡はない。


こちらから電話するのも、何か悪いかな。


夕馬が帰宅したら、直ぐに夕飯にできる様、

準備する。



重たいとか、思われないかな。


外で食事するかな……。



少し、不安になる。


時計はもうすぐ、二十一時になるところ。



する事も特になく、ソファに座った。


勝手に色々触ったらいけない様な気がする。



ぼんやりと、夕馬の帰りを待った。



「お腹すいた……」


さっき買ったペットボトルの水を、冷蔵庫から出した時。



"ピンポーン''


チャイムが鳴った。



夕馬?


私はモニターを見た。


夕馬だ。


私は鍵を開けようとして、手を止めた。



「鍵、 持ってる……」


夕馬はもう一つ、鍵を持っていた。



何だかまた、嬉しくなり、玄関まで出迎えに行った。



「あーっ。 疲れた! 残業多すぎだよ」


スーツを脱ぎながらブツブツ言っている。



「うち、 忙しいもんね。 お疲れ様。 ご飯、用意するよ?」



スーツをハンガーに掛けようとした私に向かい、夕馬が抱きついた。



「……やっぱり、 いいよね。 こーゆうの」


「ふふ。 何言ってるの。 ほら、 ご飯支度するから」



恥ずかしい気持ちを抑え、キッチンで夕飯の

支度をした。



私の幸せは、ここにあるのかな。



始まった二人の関係。


まだまだこれから……。



先にお風呂へ入った夕馬。


私は夕飯をテーブルに並べた。



「さっぱりした。 で、 腹減ったぁ」



お風呂上がりの夕馬……。


慣れないから、やめて。



私達は、遅い夕飯を囲んだ。



「食後のコーヒーは、 欠かせない」


本格的な夕馬のコーヒーを、二人で飲んだ。



やっぱり美味しいコーヒー。



それが、私を不安にさせる。


夕馬の夢を考えてしまう……。



今の私達の関係が、壊れてしまったら。


どうしようもない、不安が襲う。



「風生? 疲れた?」


ソファに座り、コーヒーを飲む私を気にし

た。



「何で? 何でもないよ」


テーブルにカップを置く。



「なら、いいけど。 何かコーヒー出ると、

不安そうになるから……」


「やだな。 何でよ」


「いや、 何と無くだけどさ」


「考えすぎ!」



ウソ。 不安になる。でも、言えない……。



私は夕馬に寄り添った。



失いたくない人だから。色々考えてしまう。


夕馬の人生に、私はちゃんといるのかな?


貴方の夢に、私はいますか?



そっと抱き寄せられる。


夕馬の腕の中は、心地いい……。



私の胸の中にある、交差する思い。


拭って欲しい……。



ソファから窓に目を移す。 空が少し見え

た。


星が弱々しく、光ってる。



「明日あるし、 寝ようか」


「明日も忙しいしね……」



夕馬の腕の中、眠りについた。


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