イタリアへ。
トントン拍子に話が進み、結婚。
そして夕馬はイタリアへ……。
急展開の上、ゆっくり二人で過ごせていない。
結婚した実感もない。
パートで復職したが、イタリアが気になる。
ので、医師の許可をもらい私もイタリアへ。
夕馬には内緒。
何かいきなり行くのもどうかと思うけど、予め言ってもし断わられたらって思ったし。
夫に会うのに遠慮するのはなんだけど。
私は空港へ向かうタクシーの中、色々な思いを巡らせた。
空港に付き、カウンターで手続き。
荷物を預け、時間まで待つ。
「お世話になってる方に、 お土産買った方がいいよね……。 相手はイタリアの人。 当たり前だが……」
私はお土産が売ってる店に入った。
外国人うけする土産って何だろ。
店内をうろつき、日本人形を手にした。
雛人形だ。
二人並ぶ人形が、ケースの中に入っている。
お手頃なサイズだし。
私はそれを購入した。
搭乗時間になり、搭乗口へ向った。
手荷物検査など受け、パスポートを見せた。
パスポートを戻され、名前の欄をまじまじと見つめる。
名前変わったんだ。私……。
改めてだが、病院で呼ばれる時も『高野さん』
保険証も変わった。
色々名前変わると面倒だが、嬉しさが込み上げる。
飛行機に乗り、離陸を待った。
久しぶりに夕馬に会える喜びは、私の胸を弾ませた。
長い時間が過ぎ、いよいよイタリアへ到着した。
入国審査や、荷物の受け取りを済ませ空港の外へ。
青い空が澄み渡り、太陽が眩しい。
少し眠いがタクシーで夕馬の住む家まで行く。
教えられた住所を、運転手に伝えた。
もちろん英語。
イタリア圏の言葉は分からないし。
簡単な英語なら仕事がらつかえる。
タクシーの運転手さんは、陽気な人で色々話してくれた。
まさにイタリアだ。
ナポリにある夕馬の家に着いた時、どっと疲れが出た。
しかし、やはり嬉しい。
夕馬は街の外れに一軒家を借りたらしい。
見上げればアンティークな家で、歴史を感じる。
送られた鍵をカバンから出し、ドアを開けた。
木のドアもお洒落だし、鍵も不思議の国さながらの鍵だ。
一軒家と言っても二階建てではない。
平屋と言うべきか。
しかし中は広く、十分過ぎるし勿体ない。
私は荷物を持ち中へ入った。
大体の間取りはパソコンから送られてきてるので分かる。
しかし、実際はやはり違う。
寝室と思われる部屋に荷物を置き、カバンの中を開いた。
夕馬の服を先日買ったのでそれを取り出し、クロゼットの中へしまう。
寝室はベットとクロゼット、小さなタンスがあり、タンスの上には可愛いスタンドが置かれていて、私達の写真もあった。
「ふふ……」
一人嬉しくなり、ベッドに寝転んだ。
夕馬の匂いがする。
早く会いたい……。
壁の時計を見たら、もう夕方近い時間だ。
夕馬はカフェだろう。
いきなり行く?待ってる?
何て思いキッチンへ向った。
キッチンの横には少し大きめのテーブルがあった。
「相変わらずきちんとしてるなぁ」
冷蔵庫を開け、水を取り出す。
外国は水道水はあまり飲まないって聞いたから、水はあるだろうと思ったのだ。
私は処方された薬を飲んだ。
体調は悪くないが、薬は欠かせない。
食前の薬も飲まなければならない。
夕馬の家の部屋を見て回り、キッチンから続くソファへ座った。
ソファもアンティーク調で質が良い。
ソファとセットのテーブルも小さめでお洒落だ。
私はテーブルの横に積まれている本を手に取った。
全てコーヒーの本だ。
パラパラページをめくりながら、夕馬の世界を開幕みる。
「ふーん。 色々あるんだ……」
改めて、コーヒーが好きなんだなと思う内に、眠気に襲われた。
気が付くと、外が暗くなっていた。
窓から月が見える。
私はパッと起き上がった。
「あ、 起きた?」
「夕馬……」
キッチンで何かをしている夕馬が目に映る。
思わず駆け寄り飛びついた。
「連絡くれたら迎えに行ったのに。 急なんだよ。 全く」
「だって。 だって連絡して断わられたらイヤだったし……」
「はあ? 自分の嫁が来るの嫌がる訳ないじゃん。 ったく、 どこまで遠慮する?」
きつく抱き締められた。
やっと感じる夕馬の温もり。
数ヶ月振りなのに、何年も離れていた様に感じる。
「飯食うだろ? 今からじゃ店開いてないし、 オレのお手製パスタとスープを奥様に」
テーブルに料理を運んだ。
手作りペペロンチーノと具沢山の野菜スープ。
「さ、 食べよう」
席に座り食べ始めた。
本当に久しぶりに二人で食事。
泣きそうになる。
「夕馬、 少し太った?」
「やっぱり? こっち来て色々店回ってコーヒーだのスイーツだの研究したからな」
自分の頬を触った。
研究か。
やはりあの子も?
敢えては聞かないけど、気になる。
「風生は痩せた? ちゃんと食べてる? お前はすぐに手を抜くからな。 でも嬉しいよ。 やっと来てくれた。 あ! 病院だけどちゃんと調べるてあるから」
「うん。 日本の病院の先生に紹介状貰ったよ。 何かこっちに日本人の先生いるんだって。 で、紹介状貰ったの」
パスタを口に運びながら話した。
「へー。 なら安心だな。 言ってた病院かも知れないし」
「取り敢えずね。 今回は様子見に来ただけだから早く帰るよ」
「えーっ! 何だよ。 ゆっくりすればいいじゃん」
不貞腐れた?
おかしい。
「だって、 仕事あるし色々片付けしないとだし」
「うーん……。 何とかするよ。 風生の荷物こっちにあるし。 見た?」
「あ……。 見てないや」
さっきクロゼット開けたけど、私の荷物なかった様な……。
「えーっ? 左側だよ?」
「左?」
「うん。 右がオレ。 左が風生。 寝室の荷物しまっといたから」
全く……。人の荷物触るかな?
でも、左か。 さっき見なかったな。
適当に開けただけだから。
「あ! ありがとう。 服。 明日着てく」
ちゃっかりって言うか……。
夕馬らしいや。
食後。久しぶりに二人でソファで寛ぐ。
私は夕馬にもたれて離れない。
夕馬はコーヒーの本を読んでいる。
静かな時間が過ぎていった。
眠る時は夕馬の腕の中。
きつく抱き締めて。寂しかった……。
私の頬に触れる手が温かい。
この温もりがないとダメだ。
背中に手を回し、二人抱き合う。
幸せの時間がゆっくり流れた。




